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二年生の一学期
第百三十八話 過去と未来を繋ぐ今
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ゲテモノ料理を食べるもの好きを見やる――そんな視線を浴びる中で、春樹が思い出を語り出した。
「前に俺、お父さんについてボランティアしに行ったって話しただろ。そん時、被災して閉店していたファミリーストップの横の駐車場で、炊き出しの手伝いもしたんだよね。俺は、子供だったから、寸胴に入ったミートソースをでっかいへらでかき回してただけだったんだけど、大人たちはそれとは別に料理作って、近くの避難所なんかに温かいまま提供しに運んで行ったりしててさ。次の日にその余ったカレーを温め直して、卵かけカレーにして食べたの。そん時は、俺も今のみんなみたいな反応示したんだけど、騙されたと思って食ってみたら、これがうめーのなんのって、すげー楽しくなったんだ。前日は虹が縦に走るし、ボラ拠点も波にのまれたところだったから、そん時おっきな余震が来たらどうしようってちょっとビビッてたんだけど、全部忘れちゃったよ」
務が卵に手を伸ばした。
「食べるって大事だよね。ボランティアとは関係ないけど、勉強ずくめで簡単に食事を済ませていると、やっぱり気がめいってくるもん。お母さんやお父さんが気をきかせてくれて、おにぎりやなんかを作って部屋に届けてくれると、その温かみだけで心が癒させる気がするよね」
杏奈が、カレーに落ちゆく大きな黄身を目で追ってから、無くなりつつある春樹のカレーに視線を移す。
「でも、これ思いついた人すごいけど、どうしてこんなことしてみようと思ったんだろうね、なんかもう、その発想が信じられない」
「ああ、なんかの料理人だったはずだぜ。ボラ拠点も店の社員で運営していて、俺が行った時の構成員も半分は社員だった気がする。俺とお父さんみたいなアポ参加の他に、飛び入り参加が一人いた気がする。なんてーか、風来の寅さんみたいな感じの若い人」
「じゃあ、やってみよう」
そう言った杏奈が卵に手を伸ばすと、南と奈緒も渋々卵を手に取った。
「おいしい!」
「でしょ」南が奈緒に答える。
春樹が笑って、腰を抜かしたかのように背もたれに沈む奈緒を見やる。
「意外にも奈緒は、最後まで躊躇していたな」
「うん。だって、春樹君のオリジナルだと思ったから。でもふしぎ。プロの料理人が考案したって知ったら、なんかちゃんとした料理に思えてきた」
「失礼なやつだな。おおざっぱでジャンキーな感じだけど、賄いで出してる人気メニューらしいぞ、記憶では確か。そういえば、すりおろしたにんにくかしょうがを入れていた気がする」
「前に俺、お父さんについてボランティアしに行ったって話しただろ。そん時、被災して閉店していたファミリーストップの横の駐車場で、炊き出しの手伝いもしたんだよね。俺は、子供だったから、寸胴に入ったミートソースをでっかいへらでかき回してただけだったんだけど、大人たちはそれとは別に料理作って、近くの避難所なんかに温かいまま提供しに運んで行ったりしててさ。次の日にその余ったカレーを温め直して、卵かけカレーにして食べたの。そん時は、俺も今のみんなみたいな反応示したんだけど、騙されたと思って食ってみたら、これがうめーのなんのって、すげー楽しくなったんだ。前日は虹が縦に走るし、ボラ拠点も波にのまれたところだったから、そん時おっきな余震が来たらどうしようってちょっとビビッてたんだけど、全部忘れちゃったよ」
務が卵に手を伸ばした。
「食べるって大事だよね。ボランティアとは関係ないけど、勉強ずくめで簡単に食事を済ませていると、やっぱり気がめいってくるもん。お母さんやお父さんが気をきかせてくれて、おにぎりやなんかを作って部屋に届けてくれると、その温かみだけで心が癒させる気がするよね」
杏奈が、カレーに落ちゆく大きな黄身を目で追ってから、無くなりつつある春樹のカレーに視線を移す。
「でも、これ思いついた人すごいけど、どうしてこんなことしてみようと思ったんだろうね、なんかもう、その発想が信じられない」
「ああ、なんかの料理人だったはずだぜ。ボラ拠点も店の社員で運営していて、俺が行った時の構成員も半分は社員だった気がする。俺とお父さんみたいなアポ参加の他に、飛び入り参加が一人いた気がする。なんてーか、風来の寅さんみたいな感じの若い人」
「じゃあ、やってみよう」
そう言った杏奈が卵に手を伸ばすと、南と奈緒も渋々卵を手に取った。
「おいしい!」
「でしょ」南が奈緒に答える。
春樹が笑って、腰を抜かしたかのように背もたれに沈む奈緒を見やる。
「意外にも奈緒は、最後まで躊躇していたな」
「うん。だって、春樹君のオリジナルだと思ったから。でもふしぎ。プロの料理人が考案したって知ったら、なんかちゃんとした料理に思えてきた」
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