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三年生の一学期
第二百五十五話 事情聴取
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五月のとある日曜日の出来事だった。奈緒は、一人で背もたれのない丸椅子に座って、ぼんやりと天を眺めていた。雲一つない蒼穹は、長い一本道のサンモールえばらの街並みに切り取られて、真っ青な川のようだ。この子のいる青い庇の下は心地のよい日陰になっていて、車一台が通れる程度の道を挟んだ向かい側の植え込みは、明るい日差しに照らされている。
遠くに行くほど薄水色へと変化していく空の下は、右を見ても左を見てもあまり人通りは無い。サンモールえばらと書かれた看板が道の上に掲げられているので商店街なのかもしれないが、店自体はほとんどなく、端から端まで閑静な住宅街だ。今ここで過ごすこの子の姿は、最近周りで起こった激動の月日がうそのよう思えるほど、静かでのんびりとしている。
奈緒が、ぴくりと眉を上げて、左に黒星を泳がせた。
「南ちゃん、お疲れ様」
「うん」
「すごいやつれてる。大丈夫?」奈緒が心配そうに顔をのぞき込むと、
「大丈夫じゃないよ~。わたしさんざん疑われた」げんなりとこうべを垂れて、そう答えた。
今日は、二人して別々に警察署に呼ばれて、浜田美麗、伊奈波理沙、柏木萌音のことについて聴取されていたのだった。
「大変だったね。たこ焼き食べよう」
奈緒に招かれた南は、この子の後ろを見やる。
そこにはカウンターがあって、ガラスのショーケースと、手をかざすと自動で噴射されるアルコールスプレーが設置された大きな窓があった。その上には、赤い三つの提灯がぶら下がっていて、『た』、『こ』、『焼』、と書いてある。灰色のファザードにサインは出ていないシンプルな建物で、一階の全面はシャッターのみしかなく壁がない。自動販売機と共に置かれたガラスのショーケースには、お煎餅やクッキー類が並んでいて、その隣の台にパックに包まれた串だんごが置いてある。
遠くに行くほど薄水色へと変化していく空の下は、右を見ても左を見てもあまり人通りは無い。サンモールえばらと書かれた看板が道の上に掲げられているので商店街なのかもしれないが、店自体はほとんどなく、端から端まで閑静な住宅街だ。今ここで過ごすこの子の姿は、最近周りで起こった激動の月日がうそのよう思えるほど、静かでのんびりとしている。
奈緒が、ぴくりと眉を上げて、左に黒星を泳がせた。
「南ちゃん、お疲れ様」
「うん」
「すごいやつれてる。大丈夫?」奈緒が心配そうに顔をのぞき込むと、
「大丈夫じゃないよ~。わたしさんざん疑われた」げんなりとこうべを垂れて、そう答えた。
今日は、二人して別々に警察署に呼ばれて、浜田美麗、伊奈波理沙、柏木萌音のことについて聴取されていたのだった。
「大変だったね。たこ焼き食べよう」
奈緒に招かれた南は、この子の後ろを見やる。
そこにはカウンターがあって、ガラスのショーケースと、手をかざすと自動で噴射されるアルコールスプレーが設置された大きな窓があった。その上には、赤い三つの提灯がぶら下がっていて、『た』、『こ』、『焼』、と書いてある。灰色のファザードにサインは出ていないシンプルな建物で、一階の全面はシャッターのみしかなく壁がない。自動販売機と共に置かれたガラスのショーケースには、お煎餅やクッキー類が並んでいて、その隣の台にパックに包まれた串だんごが置いてある。
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