FRIENDS

緒方宗谷

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三年生の一学期

🐙

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 奈緒が隣に座ると、隣で両肘を膝の上に置いて手のひらを合わせて握り、神妙な面持ちで道の反対側に伸びる白線を見やる。
((覚せい剤の話、本当だったんだね))
 短くそう言って、彼女は押し黙った。返答を待っているようだったが、奈緒は一向に言葉を返さずにいる。それもそのはずで、この子は瞳に星影を瞬かせながら、厨房で最後の仕上げを行うおばあちゃんの姿を見ていた。
 それに気がついた南が、あっけにとられた様子で傍観していると、カウンターの奥から声がする。
「なにつけます? マヨネーズとソース」
「両方お願いします」
 奈緒がそういうと、おばあちゃんは後ろの小さな冷蔵庫からマヨネーズとソースを取り出して、八個のたこ焼きにかけた。「ちょっと待ってて」と言うと、それを電子レンジで温めてから輪ゴムでとめて、長めの串二本を挟んで差し出す。
「はい、たこ焼きできました」とおばあちゃんの声に反応して、「はい、ありがとう」と立ち上がって歩み寄る。
 たこ焼きを受け取ったこの子は喜びに胸を弾ませながら、「南ちゃん、さっそく食べよう」とのんきに微笑みかけた。
「……」
 南の纏っていた重々しい空気が、ガラガラと音を立てて崩れる。だが、信じられない、といった様子を相貌に浮かべる彼女に、奈緒が言った。
「ブチャは許せない。わたしは人生であんなにひどい目にあったのは初めて。ざまあ見ろ。南ちゃんにもひどいことしたし、理沙ちゃんや萌音ちゃんにもひどいことしたんでしょう? もう 一人の 誰かにも」
「真理ね……」
「うん、まりね」
「真理、ね」
「うん、ま り ね」
「まりね、じゃなくて、真理、ね」
「まりね。うん? まりね?」
 奈緒が首を傾げたが、南は「まあ、いいや」と放擲した。
「なんだっけ、忘れた」
「ブチャのこと」
「そうだ、ブチャ。ほかにもひどいことされ てた後輩もたくさんなんだから…」そこで言いとどまって南に顔を寄せ、((たいほされてやったぁだわよ))と続けて、にかっと笑う。そこには、とてもひどい暴行を受けた少女とは思えない、軽快な雰囲気の相貌があった。




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