FRIENDS

緒方宗谷

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三年生の一学期

第二百六十八話 パピオンが残した鱗粉

 当たり障りのない会話が一段落した時、奈緒が姿勢を正して改まって、ぱっちりとしたふたえの瞳を見つめる。
「この間は、かばってくれて、ありがとう ござい ました」続けて赤ちゃん言葉で「わたしは身体障がい者で ごめんな さいっ。とてもことばが うまく でないです。けれどもわたしは おれいがし た い で す。これは、お礼の お手紙です」
 言い終わって可愛い封筒を差し出して一度頷き、また続ける。
「わたしの名前は、何度も に なるかも しれませんが、成瀬奈緒 です。じゅうきゅうさいです。なぜ? なぜならば、わたしは病気をしました。くも膜下出血と脳梗塞でした。それで、一年間病院に入院して、一年間リハビリ しました。ですから一年半ほど、遅れ“も”した」
 聖也は鷹揚に笑ってから、ゆっくりと話し始めた。
「俺は、松岡聖也って言います。南先輩の元カレの弟です。趣味はサッカーとバスケで、漫画とゲームも好きかな」
「サッカー部」
「うん、よく知ってるね、もうやめたけど」
「どうして?」
「ちょっと勉強しないといけなくて」
「なんか、不良ぽくないね」奈緒が意外そうに訊く。
「はは、南先輩から聞いていると思うけれど、確かに俺、不良だった。でもしたくてしてたんじゃないよ、そういうのすごく嫌だった。けど、兄貴がひどくてやらされていたんだ。普通の友達なんかできないよね。みんなビビっちゃってさ。目すら合わせてくんないの。だから不良でいるしかなかったんだ。つらかった」
「ブチャみたいな?」
「ブチャ知ってるの?」
 聖也は、小声ながら大いに驚いた。少し逡巡するそぶりを見せて続ける。
「兄貴やその周りは、最低レベルであれからだよ。鑑別や年少入ったやつもいるし」
「((逮捕された))」
「ブチャでしょ。知ってる。ある界隈じゃ有名だし…((覚せい剤で))。南先輩とそういう話するの?」
「ううん、警察で。わたし監禁されて殴られた」
 聖也が驚いて、声がひっくり返った。
「それで? 去年ボコボコだったのって……」
「うん。理沙ちゃんと萌音ちゃんには悪いことしちゃった」
「あいつらだって似たようなもんだよ。見た目可愛いけど、鬼だぜ、二人とも」
「でも優しかったから。それでもブチャは許せなかったから、警察に全部話した」

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