猫のモモタ

緒方宗谷

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夢で頭が膨らんだオタマジャクシの話

みんなにとって普通でも、自分にとっては特別なこと

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 モモタは、だいぶ遠くにやって来ました。青々とした稲がサラサラとそよぐ田園風景です。
 「君達が、雨蛙のオタマちゃんなの?」
 「そうだよ。
  でも、ただのオタマジャクシじゃないんだよ」
 「僕は、とても大きな声で歌えるオペラ蛙になるんだ」
 「私は、ダンス蛙よ」
 「カエルンピックを目指すんだ」
 みんな口々に夢を語ります。
 「猫ちゃんは、何になるの?」
 モモタは、困りました。猫は大人になっても猫でしたから。
 「僕は普通の猫さ」
 「普通って何?どんな猫が普通なの?」
 モモタは答えられません。
 「トラトラが普通なの?じゃあ、黒ブチは普通じゃないの?」
 モモタは、何とか答えます。
 「普通の家猫で、特別な何かじゃないよ」
 オタマジャクシの質問は続きます。
 「じゃあ、野良猫は普通じゃないの?」
 「そうじゃないよ。
  僕は、佑ちゃんに飼ってもらってるだけの・・・」
 1匹のオタマジャクシが、ハッとすることを言いました。
 「佑ちゃんは普通なの?」
 モモタにとって、佑ちゃんは普通ではありません。特別な存在でした。
 「佑ちゃんは、優しくて、いつも遊んでかれるんだ。
  ママもいつもご飯をくれるし、パパは僕達を守ってくれてる」
 みんなが言いました。
 「佑ちゃんが君を見るときの目と、他の猫を見るときの目は違う?」
 「猫ちゃんか見る目は、佑ちゃんと他の子と違う?」
 モモタははっきりと答えます。
 「違うよ、佑ちゃん達は、僕にとって特別なんだ。
  だって、小さいときから一緒だし、同じ思い出を持ってるもの。
  他の誰かと交換なんてできないもん」
 オタマジャクシは、羨ましがって飛び跳ねます。
 「じやあ、君だって特別な存在だよ。
  猫ちゃんは、どこにでもいる猫なんかじゃないよ」
 モモタは、お家のある方の空を見上げました。
 「こんなに離れているのに、とても近くに感じるなんて、思い出ってすごいなぁ」
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