猫のモモタ

緒方宗谷

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田舎で出会ったお友達

全てだと思い込まされていた小さな世界

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 カモの一家とお友達になったのと同じころ、モモタは、自分と同じくらいの大きさのコイと知り合いました。
 毎日水田の中でタニシを食べて過ごしているようです。
 「コイさん、こんにちは。
  コイさんは泥の中にいて、苦しくないの?
  僕のお家の近くにある公園にある池のコイさんたちは、深い水の中で生活していたよ。
  ここは浅すぎるでしょう?」
 「そんなことないよ、僕たちはもともと泥っぽい池や川に住んでいるから、多分、君の家の近くの公園のコイよりも、快適なんじゃないかな?」
 「そっかー、公園のコイさんたちは、人に飼われていたのかな?
  お家にいた時は気が付かなかったけど、公園は人間が作ったお庭だもの」
 「きっとそうだよ。
  それに比べて、僕はちゃんと自然の中に生まれて育った、自由なコイなのさ」
 「コイさんは、どうやってこんなに良いお家を見つけたの?
  この田んぼは隣の川と繋がっていないのに、どうやって入ったの?」
 「知らない。
  気が付いたらここにいたんだ。
  多分、ここで生まれたんだよ」
 モモタは、羨ましがって言いました。
 「生まれた時から、こんな良いお家があって家族いっぱいで良かったね。
  僕、日本橋で生まれた時、狭い壁の間に住んでて、とても幸せだったけど、なぜか1匹ぽっちになっちゃったんだ。
  もし、祐ちゃんに拾ってもらってなかったら、今も寂しくしてたかもしれないもん」
 「そうだね、弟たちもいるから幸せだな、面倒見るのが大変なときもあるけどね」
 こぼすグチも、とても幸せそう。
 でも秋が深まったある日、田んぼの水が抜かれてしまいました。泳げなくなったコイたちは、水たまりに集まって悩んでいます。どうしたら良いか分かりません。
 「僕たち、水の外では息ができないのに、どうしたら良いんだろう?」
 「そうだ!龍になるんだよ!龍になってお空を飛べば、もう心配いらないよ」
 モモタの話を聞いたコイは、怒って言いました。
 「コイ事だからって、いい加減なこと言うなよ。
  そりゃ、猫は高い塀にも飛べるからいかもしれないけど、僕たちはコイなんだから、飛ぶことなんて無理だよ」
 「でも、公園のお友達は龍になれるって言ってたよ。
  滝を登ると龍になって、お空を飛べるんだって」
 「滝なんてどこにあるのさ」
 「ないけど、飛ぶ練習をするんだよ、今からでも遅くないよ」
 コイたちは無理だ、と言い張って、残った水たまりから動こうとしません。
 そうこうするうちにカモの飼い主がやって来て、コイを捕まえて行きました。
 「ああ、良かった、綺麗な水のあるバケツに入れてもらえて。
  でも、みんなで住むには狭すぎるなー」
 「大丈夫よ、あなた。
  きっと、別の水田に放してもらえるから」
 人間が持ち帰ってきたバケツを覗いたカモが言いました。
 「やや、今日のご主人様はご馳走だね」
 それを聞いたコイたちは言いました。
 「それじゃ-、僕たちもご相伴にあずかりましょうか」



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