猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

時と場合によるみたい

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 暫く平和が続いていたのですが、向こうの林に事件が起こりました。
 怖い大スズメバチがやってきて、虫たちをご飯にしようと探し回っています。林に住む虫たちは怖くて隠れていましたから、大スズメバチは。ご飯にありつけずにイライラしています。
 「なんだ、誰もいないじゃないか」
 「いや、待てよ。
  ほらあそこ、よく見ると蜜蜂の巣があるぞ」
 「ようし、あの蜜蜂の赤ちゃんをご飯にしよう」
 大スズメバチたちは、目立つ巣に住んでいた蜜蜂に狙いを定めて、襲い掛かりました。
 ブーン!ブンブンブン!
 緊急事態を知らせる蜜蜂の羽音が鳴り響きます。
 巣から出てきた蜜蜂と羽音を聞いて戻ってきた働き蜂たちは、自分の何倍もある大スズメバチを取り囲んで、巣を守るため戦いました。
 ですが、大スズメバチは頑丈なので、何度刺しても逃げてくれません。1刺しするたびに、蜜蜂は落ちていきます。
 近所の虫たちは、息を潜めます。
 「ママ―怖いよー」
 「大丈夫よ、もうすぐ怖いのは行ってしまいますからね」
 草花の下に隠れていた虫たちは、大きな羽音にビクビクしています。
 「わっ!どうしたの?」
 蜜蜂の巣を見に来たモモタは、巣に群がる金と黒の塊を見て言いました。
 「しっ!猫ちゃん、今は静かにしていたほうが良いよ。
  巻き込まれて刺されて死んだら、大変だ」
 モモタはびっくりして、逃げました。
 蜜蜂たちは、みんなでスズメバチを囲んで、羽を震わせます。蜂サウナに耐えられなくなった大スズメバチは、何匹か落ちて動きません。生き残った大スズメバチたちも退散しました。
 アゲハちゃんのお家まで逃げてきたモモタから、事件を聞いた紋黄蝶が震えます。
 「怖いわ、もし大スズメバチがこっちに来たらどうしよう」
 紋黄蝶たちは、怖くて堪りません。
 「蜜蜂さんがいてくれたら、守ってくれるのに」
 「本当ね、大スズメバチと戦える虫なんて、蜜蜂くらいだもの」
 モモタは、クモの巣もあるよ、と教えてあげました。
 「クモさんもいるけれど、あの子たち、“お礼に食べさせて”が口癖だもの」
 心配した紋黄蝶たちが、アゲハちゃんに文句を言い始めました。
 「そんなー、みんなだって、蜜蜂がいなくて良かったって言ってくれたじゃない」
 アゲハちゃんは、オロオロしながら言いました。
 「目立つお家に住んでいないから大丈夫だよ」とみんなをなだめながらモモタは思いました。
 「みんなけっこうげんきんだなー」

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