猫のモモタ

世界の中心、揚羽蝶の話

自分が高く飛ぶよりも、相手を低く飛ばせたい

　ポカポカ陽気が続いていたので、ハイキングに来る人が多くなってきました。山歩きに来た人達にアゲハちゃんは大人気。人気者になった彼女を紋黄蝶たちが妬んでいます。
　「あの子ばっかり、ズルいわね」
　「私たちも可愛いのに、とても悔しいわ 」
　ちょっと言ってあげないと、と言い出した紋黄蝶たちは、アゲハちゃんに詰め寄ります。
　「あなたばかりチヤホヤされて、ずるいわ」
　「えぇ？私何もしてないわ」
　「何もしてなくなんてないでしょう？現に人間の前でヒラヒラ舞い踊って、楽しそうにしてるじゃない！」
　確かにそういう時もありますが、普通、蝶々は飛び回って花から花に移動するので、人がいるいないは関係ありません。
　他の蝶々だって同じなのに、紋黄蝶たちは、揚羽蝶だけを責め立てます。
　たくさんの紋黄蝶に囲まれて、アゲハちゃんは困り果ててしまいました。
　「羽を小さくすればいいのよ」
　１匹の紋黄蝶が言いました。
　「そうね、そうすればズルくないわ」
　「え～！？」
　アゲハちゃんはびっくりして、どうしてか分からず逃げ出そうとしますが、取り囲まれているので、飛びたてません。モモタが急いで駆け寄ります。
　「ちょっと、いくらなんでも羽を切ったら、飛べなくなっちゃうよ」
　かばったモモタのお腹に、アゲハちゃんは隠れて出てこなくなってしまいました。
　「もう大丈夫だよ、黄色い蝶々たちは行っちゃったよ」
　ちらっと顔を出したアゲハちゃんは言いました。
　「美しいって罪なのネ」
　意外に元気です。