猫のモモタ

自分のことしか考えないノラ猫たちの話

もらうの大好き、あげるの嫌い

　ここしばらく、お魚屋さんはお魚をくれないので、猫たちは、自分たちを可愛がってくれる人を探して回っていました。
　見つけた猫ちゃん大好きっこの１人に、とってもかわいい女の子がいます。いつも猫ちゃんごはんと一緒に猫ちゃんミルクを出してくれるので、猫たちに大人気。
　この日、女の子のくれた猫ちゃんごはんにありつけたぶち猫が言いました。
　「ごはんのお供は、やっぱり猫ちゃんミルク。これがないとごはんにならないよ」
　すると、隣で食べていた猫も、「そうだ、そうだ」と答えます。
　ぶち猫は、
　「この猫ちゃんミルクがなければ、僕はご飯を食べないね。
　　だって、飲み物がなければ、喉の通りが悪いもの」と言いました。
　一緒に食べていた猫たちは、「そうだ、そうだ」と答えます。たまたま、一緒にごはんを食べていたモモタもそう思いました。
　ですが、ある時のおやつ時に用意されたごはんに、猫ちゃんミルクはついていませんでした。たまたまミルクを切らしていたので、女の子はあげれなかったのです。
　それを知らない猫たちは、不満たらたら。低い声で鳴きました。
　「よこせやい。俺たち可愛らしい猫なんだぞ」
　「ごめんね、今日はミルクは無いの」
　赤いランドセルを背負った女の子は、申し訳なさそうに謝ります。
　理由を知ってもわがままをやめない猫たちは、ごはんを食べずにウニャー、と鳴き続けました。
　そこで、女の子はキッチンに行って戻ってくると、言いました。
　「猫ちゃんミルクは無いけれど、牛乳だったらあるよ。これ飲む？」
　猫たちは怒りました。
　「こんなの飲めないやい！こんなの飲んだら、お腹こわしちゃうよ」
　お皿に牛乳を注ぐ女の子の手を、ぶち猫が猫パンチしました。
　肉球がぷにょっ、と当ってくすぐったかった女の子は、クスクス笑いながら言います。
　「お手したらいいよ」
　猫たちは考えました。誰も答えを出せそうにありませんが、すぐにぶち猫が言いました。
　「お手かー、お手してまでいらないな」
　芸をしないといけない、と分かってから、猫たちは猫ちゃんミルクをねだらなくなりました。いままで、猫ちゃんミルクがないとごはんを食べなかったのが嘘の様です。
　（タダって怖い）と、塀の上で見ていたモモタは思いました。
　女の子を引っ掻かなかったのは偉かったけれど、お魚屋さんを引っ掻いた時を小さくしたような出来事でした。
　しばらくすると、またもとの猫たちに戻るんだろうなぁ、と思うモモタでした。