猫のモモタ

我慢できない牛の話

なし崩し、崩れたものは戻らない

　初めは隣の牧場に行かなかった残りのガリガリ牛達も、みんなが贅沢な草を食べているのを見て、自分達も贅沢しよう、と大挙して押し寄せてきました。
　小さな牧場の牛達でしたが、去年たくさん生んだので、いつもより増えてしまっていた牛達です。隣の牧場にいる牛達の１/４は、ガリガリ牛になってしまいました。
　するとどうでしょう。たちまちの内に、分けてくれた牧草は無くなってしまいました。
　１頭の赤べこが言いました。
　「あやー、ご飯が無くなっちゃったよ」
　「向こうに行きましょうよ」
　１頭の乳牛が言って草のある方にスキップしていくと、みんなもスキップしながら草のある方へランラランラン♪
　一か所にたくさんのガリガリ牛が来たので、もともといた牛達は追いのけられてしまいました。
　「こんなに美味しそそうに育ったごはんを隠してるなんて、ひどい牛達ね」
　ガリガリたちは口々に文句を言いながら食べていきます。　
　もといた牛達は言いました。
　「それは、君たちが無節操に食べちゃうからじゃないか」
　すると、乳牛が言い返してきました。
　「そんなことないよ、あんなところの草しかくれないからいけないのよ。
　　この牧場に迎え入れてくれたんだから、私たちにとってもここの牧草はごはんだわ」
　もといた牛達は集まって壁を作りますが、手薄なところができてしまいます。
　そのそばにいたガリガリ牛が牧草をムシャムシャしていきます。
　それを見てもといた牛達がやって来ると、また別のところが手薄になります。牛達はいったりきたり行ったり来たり大混乱。
　たちまちの内に牧草は食い散らかっていきます。
　土も踏み荒らされてデコボコデコボコデッコボコ。結局、隣同士の牧場は１つになってしまいました。
　ガリガリたちの牧場主がやって来て、牛達を呼び戻します。そして柵を治し始めます。それを見た隣の牛達はホッとしました。
　「これで元通りだね」
　でもモモタは気が付きました。
　「あれあれ？柵の位置、少しこっちよりになっていない？」
　ガリガリ牛の牧場が少し広くなっていました。