猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
322 / 514
目には目を歯には歯を! ロシアンブルーの話

態度は反応

しおりを挟む
 モモタは目を疑いました。信じられない光景です。何度も目をギュッ、と閉じてよく見返しました。
 ですが、何度見ても目の前では、弱気猫のジャックが超弱気猫のテーベをイジメています。
 「やめなよ、ジャック君、何してるの!?」
 イジメをも目撃したモモタは、すかさず止めに入ります。
 すると、驚いた弱気猫は目を泳がせながらシドロモドロ何かを言いました。そして、オドオドしながら行ってしまいます。
 一緒にいたマイちゃんが、超弱気猫にわけを訊きました。
 「ジャック君がとてもお腹が空いているから、ごはん分けてって言うんだ。
  だから僕、やだって言ったら、僕のこと踏んづけて、無理やりとっちゃうんだ」
 どっしり猫もしないようなことでしたから、見ても聞いてもモモタは信じられません。
 ですがマイちゃんは、別に驚きもせずに言いました。
 「弱気に見えるからって弱気なわけではないのね、いつもの弱気猫の態度は、相手が強気だから弱気なのよ。
  もし、相手が自分より弱気だと気が付いたら、強気猫になるのね」
 それを聞いてもモモタは納得がいきません。
 「あんなに変わるなんて信じられない」
 「豹変したんじゃないわよ、もともとああいう猫だったのよ。
  いい勉強だわ、モモタも長く旅行をしてきてお友達になった子たちに、知らず知らずのうちに良いお友だちだって思わされているのかも。
  そういうわるい子たちがいたと思うわよ」 
 マイちゃんがいくら説明しても、モモタは信じられません。だって、ひどいと思っていたどっしり猫よりも、気弱猫はひどいんですから当然です。
 もやもやを隠しきれないモモタに、マイちゃんが続けます。
 「どっしり猫だってそうでしょう? モモタからごはんを奪ったり、無理やり日向を奪ったり、道を譲らせたりしないじゃない? モモタが強気だから、むこうが負けているだけ。
  モモタから見たら、どっしり猫はとても強気に見えるんでしょうけれど、私から見たら、モモタに対してはとても弱気よ。
  モモタは、どっしり猫とすれ違う時、最近彼もどいて譲り合ってくれるようになったって喜んでいるけれど、他の猫に対しては相変わらず、そこのけそこのけロシブル通るの態度のままだもの」
 モモタは、久しぶりに祐ちゃんちの近くに住んでいるコウモリのことを思い出しました。でも嫌な意味で思い出しました。
 モモタは思いました。
 お友だちはたくさんいるけれど、本当に親友と呼べるお友達はどのくらいいるのかな?――と。
 とても心配になったモモタでしたが、でも大丈夫。だって目の前にはマイちゃんがいるんですもの。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...