猫のモモタ

緒方宗谷

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牧場で出会ったお友達

幸せは不幸の中でやってくる

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 とても暖かい昼下がり。
 朝のお散歩を終えたモモタは、お昼ごはんのおねだりをしに、牧場のお家に向かっていました。
 その途中にある小豚のお家の前を通った時、モモタは、大豚のおしりに気がつきました。
 見慣れない大豚です。
 初めて出会うお友達だと思ったモモタは、ご挨拶に行くことにしました。
 そばに行くと、小豚と大豚、凄い体格差です。ちょっと面白い光景でした。
 モモタと変わらない大きさの小豚に対して、大豚は四つん這いになった人間よりも大きそうです。
 大豚は、ブヒブヒ鼻を鳴らしながら、柵の間に顔を突っ込んで、小豚のピーちゃんに言いました。
 「よう、ピー介。ピー介は災難だな。酒かすやぬかばかり食わせられて。
  おいらはいつも、美味しいパレット食ってるっていうのにさ」
 「ふーん、そうなの? それがどうしたの?」
 「お前可愛がられてないんじゃないの? 
  ちょっと人間様に言ってやろうか、おいらのように可愛がってやってくださいって。
  さすがにそんな小っちゃい姿じゃ可愛がってもらえないか。
  ブヒヒヒヒヒヒ」
 意地悪な感じで笑う大豚は、自分のお家へと戻っていきます。
 モモタは、一言二言小豚を慰めてから、ごはんを食べに行きました。
 それから数日して、モモタがピーちゃんのお家の前を通ると、別の大豚がピーちゃんのお家に遊びにきていました。
 また新しいお友達だな、と思ったモモタが近づいていくと、大豚の声が耳に届いてきます。
 「――それで僕は、いつも美味しい発酵粥を食べてんやで。
  もう食い倒れそうでほんま敵わんわ、だってめっちゃうまいねんもん」
 前の大豚同様、自分のグルメっぷりを自慢しているようです。
 大豚は続けて言いました。
 「お前はなに食うてんの? ありゃ、酒かす食うとるん? 
  酒かすって酒のかすやでほんまに。
  ウソやあらへんよ。あ、これ内緒やろか?すまん傷つけてしもたかな? 
  まあええわ。そんなチビやったら豚としての価値あらへんもな。
  自分でも気づいておるやろ?
  ブヒヒヒヒヒヒ」
 モモタは、お家に向かう大豚の背中を見やりながら、小豚の災難をねぎらいました。
 それからしばらくしたある日、モモタがピーちゃんと遊んでいると、知らない大豚がやってきて、ピーちゃんを笑います。
 「なんだよ、猫と大きさ同じってか? 
  本当全然大きくなれないでやんのな。
  初めて見てからだいぶ経つけど、オラが赤ちゃんだった頃と大きさ同じじゃん」
 ブヒブヒと物言うお友達です。更に続けて言いました。
 「そんな小さくて色つやないんじゃ、お嫁さん来ないんじゃね?
  オラの大きさ見てみろって。人間よりでかいんじゃないの?
  そんなオラは実はモテモテ。ブヒヒヒヒ。
  ほらその証拠に、オラの家から女の子の楽しそうな声が聞こえんじゃん。
  逆にここにはなんで猫?
  豚ですらないでやんの。
  ブヒヒヒヒヒヒイーブヒイー」
 それからも、モモタが遊びに来ると、いつもいろんな豚が代わる代わるピーちゃんのお家に遊びにきて、嫌味なことを言ってきます。
 モモタはふと気がついて言いました。
 「なんで代わる代わるなんだろう?」
 すると、ピーちゃんはすんなり一言言いました。
 「もう来れないんだよ」
 「どうして?」
 「さあね。でも2度と来ないよ。来たやついないもん」

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