猫のモモタ

緒方宗谷

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神社のそばのお友達

想像に境目ないよ

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 千切れ雲が一口ささみに見える、ある晴れた日。モモタは、マンションの一階のベランダの手すりの上を、お散歩していました。
 すると、真中のお部屋の窓際にあるタンスの上に、金魚鉢が一つ置いてあるのを見つけました。
 中にはまんまる赤金魚の男の子が泳いでいます。
 モモタはご挨拶をしよう、と思って、室外機に飛び乗りました。
 ですが、赤金魚は気付いてくれません。
 モモタが金魚鉢を覗き込むと、赤金魚は楽しそうに泳いでいます。
 ときどき逆さ泳ぎをするほど、ご機嫌でした。
 「こんにちは」モモタは、小さな声で、優しく声をかけました。
 「やあ、こんにちは」赤金魚は、ニコニコしながら答えます。そして、言いました。
 「世界ってどうしてこんなに楽しいんだろうね。
  空はどこまでも続いていて、限りなく僕に新しい世界を見せてくれるよ」
 モモタは、振り返って青い空を見上げます。
 赤金魚が続けて言いました。
 「僕さ、大きくなったら鳥になるんだ。
  今は小さいから、卵の中から出られないけれど、一生懸命ひれを動かして、羽ばたけるようになるんだ。
  いつか海っていうところに行って、いっぱい泳いでみたいな。
  海って見たことある?
  僕見たことないけど、たぶん沢山の卵が並んでいるんだよ」
 モモタは、笑って答えました。
 「その一つ一つに金魚が住んでるんだよ。
  お目目がぱっちりしたのや、黒いのや、ブチ色のもいるよ」
 赤金魚は、目をキラキラさせながら、モモタに訊いてきました。
 「ねえ、大人になった金魚見たことある?」
 モモタは、首を傾げて、少し考えました。
 「あるよ。とっても胸びれと尾ひれが長くて、ふわふわしてるの」
 「お兄ちゃんだね。まだ大人になっていないもん」
 赤金魚が続けます。
 「僕も、大人の金魚にはまだ会ったことないんだ。
  お外に鳥がとまることはあるけど、まだ金魚はとまったことないの。
  たぶん赤い鳥だよ。スズメじゃないの。
  だってスズメは、『金魚はスズメになれない』って言っていたもん」
 「カラスやハトも違うよ」モモタが言いました。
 「うん、知ってる。カラスは金魚っぽくないもんね。
  ハトの色はきれいだけど、ハトたちも金魚っぽく飛ばないし」
 赤金魚は、とてもウキウキした様子です。
 金魚鉢は小さくて、一本の水草があるだけです。小石も敷かれていません。
 それなのに赤金魚は、とても楽しそうに過ごしていました。

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