猫のモモタ

緒方宗谷

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欲のためならなんでも言えちゃう白猫の話

弱さは美味しいダシになる

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 モモタが空き地の草むらで、ごろりんこしていると、誰かの声が聞こえてきます。
 見ると、道路の方を、メインクーンのアルフについて回る、野良白猫の女の子がいました。
 だんだんと距離が縮まってきたので、話の内容がモモタにも伝わります。
 女の子は言いました。
 「わたしの赤ちゃんが、お乳を飲んでくれなくて大変なの」
 アルフが答えます。
 「もう、乳離れの時期じゃないの?
  あげるのやめてみたらどう」
 「だめ。ミューミュー鳴いて、せがんで転げまわるの。
  『お乳くれなきゃ、遊ばないぞ』って言うのよ。
  それにこないだも、おしりにうんちがついていて、『きれいにしてくれなきゃ、ずっと転げちゃうもん』って転げてたのよ」
 「それいちいち聞いていたら、ずっと乳離れしないんじゃないかな」
 「もう大変で、ごはんを捕りに行けないの。
  だから、あなたがネズミを捕ったら、わたしにちょうだい。
  あなたは、ご主人様からごはん貰ってるし、いいでしょう?」
 メインクーンは悩んでいる様子でしたが、それ以降、たまにお外に遊びに出る度に、捕まえたネズミを女の子にあげるようになりました。
 それから度々、女の子に、
 「あのカラスが食べている鳥のお肉美味しそうね、盗ってちょうだい」とか、
 「あのダックスフンドが食べてるごはんが欲しい」とおねだりしては、盗ってもらっていました。
 さすがのメインクーンも疲れた様子で、言いました。
 「そんなに僕に頼っていたら、君自身1匹じゃ暮らしていけなくなっちゃうよ。
  いい加減、自分の力でごはん取ったら?
  君自身が捕ってるネズミの数だって、他の猫と変わらないんだから、カラスや犬のごはん盗らなくても、楽しくやっていけるだろう?」
 すると、しょんぼりした女の子は、「うん・・・」と頷いて、「考えてみる」と一言言いました。
 そしてどこかへ去っていきます。
 モモタは、以前メインクーンから聞いた話を思い出しまして、考えました。
 (望みが叶わないから、もう来なくなるのかなぁ?)と。
 実際の理由は分かりませんが、次にメインクーンと見た時に、女の子はいませんでした。



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