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モモタとママと虹の架け橋
第五十九話 なくしてはいけないもの
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お正月が開けてだいぶ経ちました。モモタたちはどこにいるのでしょうか。
実はまだ、最初にお世話になったおじいちゃんのお家にご厄介になっていました。モモタは、キキの生存を信じていたのです。
すぐにでも山の中を探しにいきたかったのですが、雪深い山の中に入れば、たちまちの内に死んでしまうでしょう。ですからそれは出来ませんでした。
蝶々もアゲハちゃんしかいませんから、伝言ゲームが出来ません。冬の間は山鳩たちも出てこないので、山鳩に訊くことも出来ませんでした。
ある日、クジラの伝言を持って、スズメがやってきました。スズメは、クジラが「そろそろ、南に向けて旅立とう」と誘っている、とモモタに言いました。
チュウ太がみんなに訊きます。
「どうする? キキ置いて行くか? あいつ飛べるから一羽でも家に帰れると思うから心配しなくていいと思うけど」
アゲハちゃんが「そうね。今クジラに行かれてしまっては、次の虹の雫を見つけに行くのが大変ね」と言います。
モモタは悩みました。
実は、クジラのシトを助けてしばらくした後、今伝言を持ってきたスズメを通して、仲間を助けたお礼に何かしたい、という申し出があったのです。群れに戻ったシトが、助けてもらった経緯をみんなに話したからです。
何をしてほしいか問われたモモタでしたが、特別してほしことはありません。見返りを求めて助けたわけではなかったからです。しいて言えば、欲しいのは虹の雫ですが、既に手に入っていました。ですから、「お礼を言ってくれるだけでいいよ」と返事をしたのです。
ですが、それでは気がおさまらない、と言うクジラたち。そこでアゲハちゃんが、「それなら、虹の雫の情報を探してきてもらいましょうよ」と提案しました。
クジラたちは快く承諾して、みんなして方々に散っていきます。漁師のおじいちゃんもこれで漁ができる、と大喜び。港に集まっていたホエールウォッチングをしていた人間のみんなも今はいません。
そして、しばらくして戻ってきたクジラは、南の海に浮かぶ島で輝く温泉が出ている、という話を持ってきました。もしかしたら、虹の雫かもしれません。
モモタたちはお礼を言いましたが、クジラたちは、「こんなんじゃお礼にならない」と言って、みんなを南の海まで連れていく、と言い張って聞きません。
そんなクジラたちにモモタは言いました。
「でも、僕たちを守ってオオワシと闘ってくれたオオタカのキキが行方不明なんだ。キキを見つけるまでは、ここを離れられないよ」
一頭のクジラが言いました
「オオワシに狙われて生きているはずないだろう? オオタカじゃ力が違い過ぎて太刀打ちできないらね」
モモタは首を横に振ります。
「キキは空の王者だもん。絶対に帰ってくるよ」
チュウ太もアゲハちゃんも、モモタが信じて待つなら、と一緒に待つことにしました。虹の雫を集めているのはモモタですから、二匹ともモモタの好きにさせたやりたい、と思ってのことです。
ただそれ以外にも、二匹にはここに留まっていていたい理由がありました。この家は、チュウ太が住んでいた人間のお家よりもとてもオンボロだったので、いたるところに隙間がありました。ですから、人間からごはんを失敬するのはたやすいことだったのです。しかも、住んでいたネズミは、猫のモモタと仲が良いチュウ太に一目を置いていましたから、ケンカも吹っかけてきません。
アゲハちゃんのお目当ては、段ボール箱で置いてある大量のみかんです。いつも甘くておいしいミカンのジュースをちゅうちゅう飲んでいました。外はとても寒いのですが、このお家はだるまストーブがあってとてもあったかかったので、外の寒さはそれほど気になりません。
二匹にとって、とってもとーても居心地の良いお家だったのです。
モモタは言いました。
「僕の願い事はとっても大事だけど、キキの方が大事だよ。だって、願い事が叶わなくても今までと一緒だけれど、キキがいなくなったら世界が変わってしまうもの。もし僕がいなくなっていたら、戻ってきたキキが悲しむと思うし―――」
そう言って俯いて、少し間を溜めました。
「―――それに・・・それに――」そう言ってモモタは顔をあげます。「あのお家のこたつはとってもあったかいし、おっきな鮭もおいしいんだもの」
三匹は「ねー」としました。
クジラももう少し待ってくれる、と言ってくれていたのです。
二回目のスズメの伝語を受け取ってからしばらくしたある日、軒下にある自分のお家から、お外を眺めながらみかんジュースを飲んでいたアゲハちゃんが叫びました。
「キキッ! キキだわ! モモちゃん、モモちゃーん」
そう叫びながら、アゲハちゃんがキキに向かって飛んでいきます。チュウ太も屋根裏から下りてきて、お外に出ました。モモタも「にゃあにゃあ」鳴いて窓を開けてもらって、外に走り出ます。
モモタが泣きながら、キキにじゃれつきました。それを見ていたお家の家族の誰かが、「モモがタカ食ってるー」と叫びました。
家族全員が集まってきましたが、モモタとキキはお構いなしにじゃれつきあっています。
キキから経緯を聞いて、モモタたちはそれぞれのお父さんとお母さんに思いをはせました。
アゲハちゃんが「よくこの雪の中で生きていたわね」と言うと、キキが理由を説明し照れました。
朝目覚めたら、雪の穴ぐらの中にいた、と言うのです。キキは、どういう理由で穴ぐらの中で一晩過ごしたかは分からない、と言いますが、だた、眠りについた場所と穴ぐらは同じだった、と言います。
チュウ太が、「話をしたイメルってオオワシじゃないのか?」と言うと、「それなら、鷲掴みにして巣に連れて帰った方が早いわよ」とアゲハちゃんが言いました。
キキが言います。
「とても暖かかったよ。みんなでこの家のおこたに入っている夢まで見たくらいだからね」
「そうか」とモモタ「その夢を見て、自分で掘ったんじゃないの? こたつ布団に潜るようにしてさ。
こたつの存在を知っていたから、生きようとする意志が無意識気に働いて、温まる方法を編み出したのかも」
「なるほどー」とみんな納得です。
モモタたちは、明日クジラと南に旅立つことにしました。今日一日、泊めてくれたお礼に、みんなはそれぞれお返しを考えることにしました。
モモタはお魚屋さんでお魚をもらってきて、アゲハちゃんは蜜を包んでいたために蜜漬けになった花びらを一枚神棚に置きました。チュウ太は、秋に集めたヒマワリの種をお庭に撒きました。
キキは、何をしようか迷っていましたが、雄々しい自らの羽を抜いておじいちゃんのハゲ頭に刺してあげました。もちろん地肌に――ではありません。横に残った白髪にです。
実はまだ、最初にお世話になったおじいちゃんのお家にご厄介になっていました。モモタは、キキの生存を信じていたのです。
すぐにでも山の中を探しにいきたかったのですが、雪深い山の中に入れば、たちまちの内に死んでしまうでしょう。ですからそれは出来ませんでした。
蝶々もアゲハちゃんしかいませんから、伝言ゲームが出来ません。冬の間は山鳩たちも出てこないので、山鳩に訊くことも出来ませんでした。
ある日、クジラの伝言を持って、スズメがやってきました。スズメは、クジラが「そろそろ、南に向けて旅立とう」と誘っている、とモモタに言いました。
チュウ太がみんなに訊きます。
「どうする? キキ置いて行くか? あいつ飛べるから一羽でも家に帰れると思うから心配しなくていいと思うけど」
アゲハちゃんが「そうね。今クジラに行かれてしまっては、次の虹の雫を見つけに行くのが大変ね」と言います。
モモタは悩みました。
実は、クジラのシトを助けてしばらくした後、今伝言を持ってきたスズメを通して、仲間を助けたお礼に何かしたい、という申し出があったのです。群れに戻ったシトが、助けてもらった経緯をみんなに話したからです。
何をしてほしいか問われたモモタでしたが、特別してほしことはありません。見返りを求めて助けたわけではなかったからです。しいて言えば、欲しいのは虹の雫ですが、既に手に入っていました。ですから、「お礼を言ってくれるだけでいいよ」と返事をしたのです。
ですが、それでは気がおさまらない、と言うクジラたち。そこでアゲハちゃんが、「それなら、虹の雫の情報を探してきてもらいましょうよ」と提案しました。
クジラたちは快く承諾して、みんなして方々に散っていきます。漁師のおじいちゃんもこれで漁ができる、と大喜び。港に集まっていたホエールウォッチングをしていた人間のみんなも今はいません。
そして、しばらくして戻ってきたクジラは、南の海に浮かぶ島で輝く温泉が出ている、という話を持ってきました。もしかしたら、虹の雫かもしれません。
モモタたちはお礼を言いましたが、クジラたちは、「こんなんじゃお礼にならない」と言って、みんなを南の海まで連れていく、と言い張って聞きません。
そんなクジラたちにモモタは言いました。
「でも、僕たちを守ってオオワシと闘ってくれたオオタカのキキが行方不明なんだ。キキを見つけるまでは、ここを離れられないよ」
一頭のクジラが言いました
「オオワシに狙われて生きているはずないだろう? オオタカじゃ力が違い過ぎて太刀打ちできないらね」
モモタは首を横に振ります。
「キキは空の王者だもん。絶対に帰ってくるよ」
チュウ太もアゲハちゃんも、モモタが信じて待つなら、と一緒に待つことにしました。虹の雫を集めているのはモモタですから、二匹ともモモタの好きにさせたやりたい、と思ってのことです。
ただそれ以外にも、二匹にはここに留まっていていたい理由がありました。この家は、チュウ太が住んでいた人間のお家よりもとてもオンボロだったので、いたるところに隙間がありました。ですから、人間からごはんを失敬するのはたやすいことだったのです。しかも、住んでいたネズミは、猫のモモタと仲が良いチュウ太に一目を置いていましたから、ケンカも吹っかけてきません。
アゲハちゃんのお目当ては、段ボール箱で置いてある大量のみかんです。いつも甘くておいしいミカンのジュースをちゅうちゅう飲んでいました。外はとても寒いのですが、このお家はだるまストーブがあってとてもあったかかったので、外の寒さはそれほど気になりません。
二匹にとって、とってもとーても居心地の良いお家だったのです。
モモタは言いました。
「僕の願い事はとっても大事だけど、キキの方が大事だよ。だって、願い事が叶わなくても今までと一緒だけれど、キキがいなくなったら世界が変わってしまうもの。もし僕がいなくなっていたら、戻ってきたキキが悲しむと思うし―――」
そう言って俯いて、少し間を溜めました。
「―――それに・・・それに――」そう言ってモモタは顔をあげます。「あのお家のこたつはとってもあったかいし、おっきな鮭もおいしいんだもの」
三匹は「ねー」としました。
クジラももう少し待ってくれる、と言ってくれていたのです。
二回目のスズメの伝語を受け取ってからしばらくしたある日、軒下にある自分のお家から、お外を眺めながらみかんジュースを飲んでいたアゲハちゃんが叫びました。
「キキッ! キキだわ! モモちゃん、モモちゃーん」
そう叫びながら、アゲハちゃんがキキに向かって飛んでいきます。チュウ太も屋根裏から下りてきて、お外に出ました。モモタも「にゃあにゃあ」鳴いて窓を開けてもらって、外に走り出ます。
モモタが泣きながら、キキにじゃれつきました。それを見ていたお家の家族の誰かが、「モモがタカ食ってるー」と叫びました。
家族全員が集まってきましたが、モモタとキキはお構いなしにじゃれつきあっています。
キキから経緯を聞いて、モモタたちはそれぞれのお父さんとお母さんに思いをはせました。
アゲハちゃんが「よくこの雪の中で生きていたわね」と言うと、キキが理由を説明し照れました。
朝目覚めたら、雪の穴ぐらの中にいた、と言うのです。キキは、どういう理由で穴ぐらの中で一晩過ごしたかは分からない、と言いますが、だた、眠りについた場所と穴ぐらは同じだった、と言います。
チュウ太が、「話をしたイメルってオオワシじゃないのか?」と言うと、「それなら、鷲掴みにして巣に連れて帰った方が早いわよ」とアゲハちゃんが言いました。
キキが言います。
「とても暖かかったよ。みんなでこの家のおこたに入っている夢まで見たくらいだからね」
「そうか」とモモタ「その夢を見て、自分で掘ったんじゃないの? こたつ布団に潜るようにしてさ。
こたつの存在を知っていたから、生きようとする意志が無意識気に働いて、温まる方法を編み出したのかも」
「なるほどー」とみんな納得です。
モモタたちは、明日クジラと南に旅立つことにしました。今日一日、泊めてくれたお礼に、みんなはそれぞれお返しを考えることにしました。
モモタはお魚屋さんでお魚をもらってきて、アゲハちゃんは蜜を包んでいたために蜜漬けになった花びらを一枚神棚に置きました。チュウ太は、秋に集めたヒマワリの種をお庭に撒きました。
キキは、何をしようか迷っていましたが、雄々しい自らの羽を抜いておじいちゃんのハゲ頭に刺してあげました。もちろん地肌に――ではありません。横に残った白髪にです。
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