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第十五話 あ、まだ続くのね。ここからが本番か? でもこんな下ネタまだ続ける気ですかね?
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一応、牙を構成する幹部たちの名簿は持ってきたけど――
ヴァルゴルディアの町に戻ってきたローゼたちは、宿屋に一泊した後、同じ宿に泊まって待っていた依頼者のヨーゼフじいさんの部屋に行った。ヨーゼフっていうんだ? あの長老。
名簿を受け取ったヨーゼフが驚いて言った。
「どれもここらじゃ有名な悪党ばかりじゃ」
一緒に見ていた中年男が、ローゼに懇願する。
「頼みます。どうか通商手形を取り戻してください。私たちは大公様の品を売りに来ているのです。手形がないと各国で売れませんし、もしこのまま帰れば絞首刑なんて目にも……」
「え~? やだぁ~めんどくさい」
ローゼはこめかみにシワを寄せて、あからさまに嫌そうな顔をしながら続けて言う。
「みんな夏休みだって。今どこにいるか分からないわよ」
それを見て「可哀想ですよ」とエミリア。
うーん、でもなんか乗り気がしない。変態のソナタが聞こえる予感。
「変態のソナタですか?」とエミリアきょとん。
ヨーゼフが腕を組んで思い悩んだ。
「確かにそうじゃな、そーゆーソナタ方式で攻めてくるかもじゃな」
緒方の野郎こんな小説のヒロインにしやがって。ローゼが嘆息を吐く。
「金貨五十枚じゃ足りないわよ」
「二十枚だろ?」と中年男。ていうか、この期に及んでまだ名無しかよ?
「じゃーやんない」ローゼが拒否る。
「分った! 分かりましたよ! 二十五枚!」
せこすぎだろ。
「じゃあ、三十枚」
ローゼ、ぷいっとそっぽを向いて、「ダメ! 五十枚!」
「三十五枚!」
「五十枚!」
「三十六枚」
「五十枚」
散々繰り返して、ようやく中年男は観念した。
「分かったよ、五十枚」
「イヤ、百枚」
ローゼが更に吊り上げる。
「そんなに払えるか」と中年男は頑として突っぱねた。
そこでちょいと引いてみるローゼ。「分かったわ」言って続けた。
「まずは五十枚。成功報酬としてもう五十枚。その代り、半分は前金ね」
それでもダダをこねる中年男に、ローゼは最後通牒を突き付ける。
「前金三十枚の成功報酬五十枚! これ以上ビタ一文もまけれないわ」と言い放つ。
中年男は渋々承諾。一筆書かせて前金を受け取ったローゼは旅の準備を整えて一泊した後、エミリアを連れて早朝さっそく旅立った。ヴァルゴルディアから東へ二百キロくらい。悪魔牙団があった岩山のずっと向こうに最初の目的地があった。
自治都市エルラダ。噂には聞いていたが、とんでもなく栄えた都市だ。西からのルートから行くと普通の城壁都市に見えるが、反対側の海に面した斜面にも町があって、白い家並みが途切れることなく港まで続いている。
遠い昔、ロッツォレーチェ王国が周辺の都市国家を併合してこの地域に迫った時、同じく領土を拡張していた帝国(当時)ペトラキオアスとこの地域を争って戦争を行っていた。その際、自治都市として自主独立を認めてもらうのと引き換えに、エルラダ、カルデ、トラント、サイボンの四つの都市国家はロッツォレーチェに組した。
四侯国(当時)とも海に面しており、盛んに交易をおこなっていたため豊富な財力あり、集まってきた傭兵も余すことなく抱えることが出来たから、圧倒的な戦力を帝国化したロッツォレーチェ(当時)にもたらし、勝利へ導いた。温暖な気候なので、今は観光地として人気がある。
「ローゼさーん、もう疲れましたよ」エミリアがぼやいた。
悪魔牙団の“牙”を構成する幹部の一人エルザ・ブラウン。名簿によると、彼女の生まれはこのエルラダの中央市街らしい。ローゼたちが散々探した挙句にようやく見つけた生家の館は売却済み。エミリアのみならず、ローゼもくたくた。
高い鉄柵に囲まれた敷地の入り口は、木板で止められている。今は無人の様子だ。結構お嬢様だったようだが、なぜ落ちぶれてしまったのだろう。近所の人の話によると、最近ひょいと帰って来て、お屋敷を売っぱらってしまったらしい。どんな顔立ちか訊いたが、今の顔は見ていない、とのこと。でも少女の頃はとても可憐で可愛らしい大人しい子だった、と言う。その後の足取りがつかめない。
「あの――」とか細い女の声。
宿屋の一階にある料理屋でローゼたちがお昼ごはんを食べていると、悄然とした様子の一人の女性が話しかけてきた。セミロングで、素朴ながら可愛らしい顔立ち。
「旅のお方ですか?……見たところ剣士の方と武道家の方のようですが……」
何かと思って話を聞いてみると、仕事の依頼だった。クレナと名乗った女性は、行方不明になった恋人アンドリューを探している、と言う。
「わたしを捨ててどこかに行ってしまうなんてありえません。きっとどこかにさらわれてしまったんです」
「うーん、でも大の大人でしょ?」とローゼ。「申し訳ないけど、誰か別の――」
と言いかけた時、クレナがチーズを切るのに付いてきたナイフをテーブルに突き立てる。
ドスッ、ドスッ、ドスッ
「そんなことありません! もしそうなら、八つ裂きにしてやる。このナイフと――このフォークで……」左手にもフォークを持って、ドスッ、ドスッ、ドスッ、と繰り返し繰り返しテーブルを突きながら、ぶつぶつ呟く。なんか怒りに没頭している様子。
「――わたしが注いだ愛情以上に愛を注げる人なんていないわよ」
だんだんとクレナの表情が憎たらしさに満ちていく。
「もし本当にそうなのでしたら、ああやってこうやってそうやってもって、それで、それで……もう一度わたしにこう言わせてやるの。――」
ローゼは、(こんなの見てみぬ振りするに限る)と思ったところに、別の席にいた関係ない男が話しかけてきた。
「あの教団じゃないのか? つい最近、城壁の外にある湖の畔に、新興宗教の本部が出来たんだよ。エルラダと周辺の町や村でも男達が忽然と消えているって噂さ」
方々から人が集められてきているなら、エルザの行方を知っている人がいるかもしれない。
「良いわ、報酬次第でやったげるっ」とローゼがクレナに言った。
「わたし、あまり裕福ではないので、金貨五枚くらいしか……」
「良いわよ、その代り、成功しなくてもいただくわ。もちろん前金で」
クレナは、渋々おサイフから有り金全部を出して、金貨五枚を数えてローゼに渡す。
「契約ていけーつ! じゃあ、ここのお勘定よろしくね」
と言って、ローゼはすぐに席を立った。
「ええっ? お二人が食べたんですよね?」
「気にしない、気にしない」
シーフードマリネ、魚とイカと貝のトマト煮込み、海鮮グリルに、芋虫型した無発酵の腹持ちよさげなちぎりパン。あと、ビール、ビール、ビール。
「これもあの子につけといて」
ローゼは、他の席に向かう店の女性からビールジョッキをひょいっと取って一気飲み。クレナは持ち合わせが足りなくて、皿洗いをさせられました。
ヴァルゴルディアの町に戻ってきたローゼたちは、宿屋に一泊した後、同じ宿に泊まって待っていた依頼者のヨーゼフじいさんの部屋に行った。ヨーゼフっていうんだ? あの長老。
名簿を受け取ったヨーゼフが驚いて言った。
「どれもここらじゃ有名な悪党ばかりじゃ」
一緒に見ていた中年男が、ローゼに懇願する。
「頼みます。どうか通商手形を取り戻してください。私たちは大公様の品を売りに来ているのです。手形がないと各国で売れませんし、もしこのまま帰れば絞首刑なんて目にも……」
「え~? やだぁ~めんどくさい」
ローゼはこめかみにシワを寄せて、あからさまに嫌そうな顔をしながら続けて言う。
「みんな夏休みだって。今どこにいるか分からないわよ」
それを見て「可哀想ですよ」とエミリア。
うーん、でもなんか乗り気がしない。変態のソナタが聞こえる予感。
「変態のソナタですか?」とエミリアきょとん。
ヨーゼフが腕を組んで思い悩んだ。
「確かにそうじゃな、そーゆーソナタ方式で攻めてくるかもじゃな」
緒方の野郎こんな小説のヒロインにしやがって。ローゼが嘆息を吐く。
「金貨五十枚じゃ足りないわよ」
「二十枚だろ?」と中年男。ていうか、この期に及んでまだ名無しかよ?
「じゃーやんない」ローゼが拒否る。
「分った! 分かりましたよ! 二十五枚!」
せこすぎだろ。
「じゃあ、三十枚」
ローゼ、ぷいっとそっぽを向いて、「ダメ! 五十枚!」
「三十五枚!」
「五十枚!」
「三十六枚」
「五十枚」
散々繰り返して、ようやく中年男は観念した。
「分かったよ、五十枚」
「イヤ、百枚」
ローゼが更に吊り上げる。
「そんなに払えるか」と中年男は頑として突っぱねた。
そこでちょいと引いてみるローゼ。「分かったわ」言って続けた。
「まずは五十枚。成功報酬としてもう五十枚。その代り、半分は前金ね」
それでもダダをこねる中年男に、ローゼは最後通牒を突き付ける。
「前金三十枚の成功報酬五十枚! これ以上ビタ一文もまけれないわ」と言い放つ。
中年男は渋々承諾。一筆書かせて前金を受け取ったローゼは旅の準備を整えて一泊した後、エミリアを連れて早朝さっそく旅立った。ヴァルゴルディアから東へ二百キロくらい。悪魔牙団があった岩山のずっと向こうに最初の目的地があった。
自治都市エルラダ。噂には聞いていたが、とんでもなく栄えた都市だ。西からのルートから行くと普通の城壁都市に見えるが、反対側の海に面した斜面にも町があって、白い家並みが途切れることなく港まで続いている。
遠い昔、ロッツォレーチェ王国が周辺の都市国家を併合してこの地域に迫った時、同じく領土を拡張していた帝国(当時)ペトラキオアスとこの地域を争って戦争を行っていた。その際、自治都市として自主独立を認めてもらうのと引き換えに、エルラダ、カルデ、トラント、サイボンの四つの都市国家はロッツォレーチェに組した。
四侯国(当時)とも海に面しており、盛んに交易をおこなっていたため豊富な財力あり、集まってきた傭兵も余すことなく抱えることが出来たから、圧倒的な戦力を帝国化したロッツォレーチェ(当時)にもたらし、勝利へ導いた。温暖な気候なので、今は観光地として人気がある。
「ローゼさーん、もう疲れましたよ」エミリアがぼやいた。
悪魔牙団の“牙”を構成する幹部の一人エルザ・ブラウン。名簿によると、彼女の生まれはこのエルラダの中央市街らしい。ローゼたちが散々探した挙句にようやく見つけた生家の館は売却済み。エミリアのみならず、ローゼもくたくた。
高い鉄柵に囲まれた敷地の入り口は、木板で止められている。今は無人の様子だ。結構お嬢様だったようだが、なぜ落ちぶれてしまったのだろう。近所の人の話によると、最近ひょいと帰って来て、お屋敷を売っぱらってしまったらしい。どんな顔立ちか訊いたが、今の顔は見ていない、とのこと。でも少女の頃はとても可憐で可愛らしい大人しい子だった、と言う。その後の足取りがつかめない。
「あの――」とか細い女の声。
宿屋の一階にある料理屋でローゼたちがお昼ごはんを食べていると、悄然とした様子の一人の女性が話しかけてきた。セミロングで、素朴ながら可愛らしい顔立ち。
「旅のお方ですか?……見たところ剣士の方と武道家の方のようですが……」
何かと思って話を聞いてみると、仕事の依頼だった。クレナと名乗った女性は、行方不明になった恋人アンドリューを探している、と言う。
「わたしを捨ててどこかに行ってしまうなんてありえません。きっとどこかにさらわれてしまったんです」
「うーん、でも大の大人でしょ?」とローゼ。「申し訳ないけど、誰か別の――」
と言いかけた時、クレナがチーズを切るのに付いてきたナイフをテーブルに突き立てる。
ドスッ、ドスッ、ドスッ
「そんなことありません! もしそうなら、八つ裂きにしてやる。このナイフと――このフォークで……」左手にもフォークを持って、ドスッ、ドスッ、ドスッ、と繰り返し繰り返しテーブルを突きながら、ぶつぶつ呟く。なんか怒りに没頭している様子。
「――わたしが注いだ愛情以上に愛を注げる人なんていないわよ」
だんだんとクレナの表情が憎たらしさに満ちていく。
「もし本当にそうなのでしたら、ああやってこうやってそうやってもって、それで、それで……もう一度わたしにこう言わせてやるの。――」
ローゼは、(こんなの見てみぬ振りするに限る)と思ったところに、別の席にいた関係ない男が話しかけてきた。
「あの教団じゃないのか? つい最近、城壁の外にある湖の畔に、新興宗教の本部が出来たんだよ。エルラダと周辺の町や村でも男達が忽然と消えているって噂さ」
方々から人が集められてきているなら、エルザの行方を知っている人がいるかもしれない。
「良いわ、報酬次第でやったげるっ」とローゼがクレナに言った。
「わたし、あまり裕福ではないので、金貨五枚くらいしか……」
「良いわよ、その代り、成功しなくてもいただくわ。もちろん前金で」
クレナは、渋々おサイフから有り金全部を出して、金貨五枚を数えてローゼに渡す。
「契約ていけーつ! じゃあ、ここのお勘定よろしくね」
と言って、ローゼはすぐに席を立った。
「ええっ? お二人が食べたんですよね?」
「気にしない、気にしない」
シーフードマリネ、魚とイカと貝のトマト煮込み、海鮮グリルに、芋虫型した無発酵の腹持ちよさげなちぎりパン。あと、ビール、ビール、ビール。
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