DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第二十三話 ローゼVSエミリア 可愛いのはどっちだ⁉ 

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 大量に連射されるヒルの前に、ローゼたちは攻めあぐねていた。情けない方法でヴァンパイア化したわりに結構強い。ローゼはレイピアさばきでヒルを斬り落とし、エミリアは、左右の正拳突きの連打でヒルを殴り返す。
 それを見たローゼが、思わず言った。
 「エミリア……、よく素手でヒル触れるわね」
 「触っていませんよ、霊気を乗せて殴っていますから、ぎり触っていません」
 ローゼにエンガチョされて、「ほらよく見て」とエミリアが寄ってくる。
 「こっち来ないでよ、飛んでくるヒルがの数が増えるでしょ!」
 そう怒鳴られて蹴飛ばされたエミリアは、ローゼにイー! として歯を見せた。間隙をついたホロヴィッツがエミリアに突っ込んでくる。
 「え! なんかわたしばかり攻撃されていません? ヒルの量もこっちの方が多かったのに、あなたまでこっちに来なくても――」
 「ブロンドを綺麗にお手入れしているお前の方が、若くて綺麗だからな。向こうもそうだが、あからさまに生娘の匂いをプンプンさせている」
 「?」とエミリア何かに気がついた。「生娘? ローゼさん、はたちのくせにまさか彼氏いない歴実年齢じゃ……」
 「うるさいわね、彼氏くらいいたわよ、掃いて捨てるほど」
 実際は2人だけだった。兵士を教育する高校に通っていた時に二人ほど。でも剣の訓練に明け暮れていたので、キスすらしたことがない。ローゼは、あることないことシドロモドロ的に言うが、エミリアとホロヴィッツは、ローゼに彼氏がいたことを信じていない様子だ。
 エミリアがしつこくした。
 「ほら、ローゼさんだって絶対彼氏いたことないですよ、向こう! 向こう襲ってくださいよ」
 だが、「きゃっきゃっ」と逃げまどうエミリアをホロヴィッツは襲い続ける。
 「向こうは向こうで美人だし、胸もあってくびれていて良い体してそうだが、いかせん顔に華がない」
 ローゼはカチンときた。自覚がある。顔のパーツの組み合わせが良くそこそこ美人に見えるのだが、パーツ一つ一つは平凡で魅力を感じさせない。
 エミリアが嘆く。
 「え~! 何でですか? 確かに、こう……色気に欠けるっていうか、エッチそうな体をしているのにそれを台無しにする平凡な顔立ちですけれど、それでもあの体なら血の吸いがいがあるってものでしょう⁉」
 助けてやろう、と走ったローゼであったが、その言葉を聞いてエミリアに背を向けた。
 「もー帰ろっと」
 その後ろ姿にホロヴィッツが追い打ちをかます。
 「うーん、だけどあの顔立に男は魅力を感じないんだよな。体は良さそうなのに、もったいないよな」
 ホロヴィッツの言葉がローゼの背中に突き刺さる。もうやめだ。こんな変態を相手にしなければならない依頼なんて放棄してやる。
 なんかエミリアが助けを求めているが、むかっ腹が収まらないローゼは無視をした。
 エミリアが叫ぶ。
 「ひどいですよぅ、ローゼさん。こんな森の中にわたし一人を残して帰る気ですかぁ‼」
 露出した木の根に足を引っ掛けたエミリアは転げた。
 「うえ~ん! こんな儚い人生いやぁ! 十四歳でヒルパイヤだなんて、わたし生きていけなーい」
 すると、ホロヴィッツが間の抜けた声で訊く。
 「え? 何? 十四歳なの? 子供じゃん、確かによく見ると子供だけど、ヒルパイア退治に来る年齢じゃねーだろう」
 そう言ったホロヴィッツは、エミリアに覆い被さろうした身を起こして、両手につまんでいたヒルを自らの乳首にくっつけて戻す。そしておもむろにローゼの方へと向き直る。
 「て、ちょっとなんでわたしを襲ってくるのよ!」今度はローゼが逃げまどう。「可愛い金髪はどうしたのよ‼」
 「子供の血を吸うなんて、大の大人がすることじゃないだろ!」
 「大人の血を吸うのだって、大の大人がすることじゃないでしょ⁉ そもそも、あんたクラスメイトの血吸っていたじゃない!」
 「あれは俺も大人じゃなかったから良いんだ」
 「変なところまじめ過ぎ~‼」
 抑えきれない紫色の魔力を放出するホロヴィッツが、ローゼめがけて襲いくる。ガタイが大きい割にスピードが速いが、どれもこれも大振りだ。骨ごと寸断してしまいそうな鋭い爪先は刃のように長く変化していたが、ローゼほどの実力があれば何とか避けられる。
 ホロヴィッツの爪をうまくさばきながら、筋肉を突いて切り裂く。銀でコーティングされていないただの鉄のレイピアではそれほどダメージを与えられないはずなのに、それでもホロヴィッツはローゼの攻撃を嫌がり距離をとる。
 ヒルを投げつけてくる技に、ローゼは手も足も出ない。霊力を乗せて戦う霊剣であるレイピアを持っているとはいえ、魔法剣士なわけではない。法術剣の類いでも持っていれば別だが、そういう武器も持ち合わせがない。鉄のレイピア一本きり。そもそも、そういう剣を探しに刀剣市を見にやって来たのだ。
 ローゼが泣き叫びながら言った。
 「いつまで経ってもきりがない! 一体なん匹飼っているのよ」
 「もしかして、ヒル切れするの待っているのか? よせよそんなの、なんせ俺のしもべはこの森中にいるヒル全てだからな。朝までかかっても全部倒せないぞ」
 「マジっすか⁉」
 ローゼは瞬時に諦めた。
 「すいません、もう帰りますから……。そうだ、明日! 明日また来ますから」
 来る気のないローゼの嘘を見破ったのか分からないが、馬へと向かうローゼの前に立ちはだかったホロヴィッツは、おもむろに黒いTバックに右手を突っ込んで、股間をまさぐり出した。
 びっくりしたローゼは、「そう来るか! やっぱりあんたそっちの犯罪者か‼」と叫ぶ。ホロヴィッツは、またぐらから×××を覗かせたかと思った瞬間、怯んだローゼにそれを投げつけてきた。
 ローゼに激震が走る。
 「ええ? 男の人のって外せるものなの⁉」
 「ぎゃ~!」と逃げ出したローゼは、叫びながら後ろ手でレイピアを振るう。生柔らかい感触が刃を伝ってくる。振り返ると、太く長い物がバッサリと真っ二つに斬れて、落ちる瞬間だった。 
 「うぎゃっ! 変なもの斬っちゃった!」
 駆け寄ってきたエミリアが非難する。
 「ローゼンさんひどい! そんな大切なもの斬っちゃうなんて!」
 「ご……ごめん、でもホロヴィッツが悪いのよ、あなたが変なもの投げてくるから」
 「??? 変なものってなんだ?」
 ホロヴィッツは、分からない様子で訊く。
 「そんなの、レディのわたしに言わせないでよ」と言いながら、ローゼは落ちてのたうつちょめちょめちょめから顔を背けて、ばれないようにちら見していた。ん? 何か様子がおかしい。真っ二つに千切れたそれらは、別々に再生して元の形に戻った。
 「そうか、しまった、不死身の超回復を忘れてた」
 「あれ? でもこれアレじゃありませんよ」
 エミリアにそう言われてよく見ると、三十センチはあろうかという大きなヒルだ。ホッと胸をなでおろすローゼに、ホロヴィッツがポツリ。
 「何だと思ったんだ? このスケベ野郎」
 「スケベじゃないし、野郎じゃないわよ(汗)」
 あたふたとするローゼに、エミリアが、「男の人のはとれませんよ」とつっこむ。
 「分かっているわよ、そんなの!」
 そう言ったローゼは、間髪入れずにホロヴィッツを怒鳴った。
 「あんたもあんたで、何パンツ脱いでいるのよ」
 「ああ、ちょっと待て」
 そう言ってうんこ座りをしたホロヴィッツは、股から入れた手で肛門を覆って気張り出す。
 「ちょっと、今度は何投げる気?」ローゼがたじろいだ。
 多分投げるのは間違いないだろう。





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