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第二十六話 パンツという名のポケット 若しくは異次元ぱんつの謎
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しばらくの間、二人は通商手形を探したが、見つからない。ここもハズレだったようだ。退治したわけじゃないから、商業ギルドから報酬をもらえるわけでもないし、通商手形もないんじゃ戦い損だ。血を吸われた女性も今頃家でのんびり寝ていることだろう。ローゼはガッカリして椅子にへたり込んだ。
「そいつは残念だったな」と言って、ホロヴィッツがおもしろい提案をしてくれた。
「まあ、俺を倒したんだから、俺から褒美をやろう。しかもあのエルザさえ倒したんだろう? 金貨五枚じゃ割に合わんぞ。あいつの実力なら千枚は貰っても良いくらいだからな」
それを聞いて、ローゼ思わず椅子から腰を浮かすほど驚いた。
「マジっすか? あの変態ドS女が千枚?」
ローゼには全く信じられない話だ。聞いてびっくり、あの女、亀甲の殺し屋、と恐れられるアサシンだったのだ。
二人ともそのあだ名は聞いたことがある。ミッドエル王国でも何人かの伯爵と侯爵が殺された事件があった。亀甲縛りのエルザ……ん? 縛られて拷問されて殺されていたって聞いていたけれどまさか……。
そのまさかだ。殺され方の細かい方法は表ざたになっていなかったが、相当濃厚なSMプレイが一晩続いて、日の出直前に昇天させられたらしい、とのこと。もちろん二つの意味(性と死)の昇天だ。発見者や調べた王室の人たちは、さぞつらい思いをしただろう。見たくもない変態の後始末をさせられて。
「そこですか?」とエミリアがつっこむ。「殺された人なんて、もっと悲惨ですよ、散々苦しめられて――」
「そうでもないぞ」とホロヴィッツが言った。「エルザはドMしか標的にしないからな。前もって、連日散々プレイを楽しんでから、トドメに完徹プレイに及ぶんだ」
ゲロゲロ。軍の上層部にド変態が居座っていたとは。殺されて良かった、と思うローゼであった。
「それより、ご褒美は何なの?」
気を取り直したローゼがそう訊くと、ホロヴィッツは徐にTバックに手を突っ込んで股間をまさぐる。
「おおおおおっ! おい! またやる気かこのド変態!」
ゲシッと馬場キックをかましたローゼは、ドアまで後退りしながらレイピアを抜く。
ホロヴィッツが、落ち着くように促して言った。
「おいおい勘違いするなよ、これをやろーと思ったんだ」
ローゼが見ると、金貨三枚だ。
「なんかちぢれ毛がついているんですけど……」
「気にするな、ちぢれ毛は食べると良いお守りになるんだぞ」
「わぁ、ローゼさん良い旅のお供ができましたね」エミリアが、ローゼにお似合い、とはしゃぐ。
「ふ、エミリアに譲るわ」
「喉を通りにくそうなので、わたしはご遠慮です」
「大丈夫よ、お腹に穴開けて入れてあげるから」
ローゼは、笑顔でエミリアのお腹をレイピアの先で突く。
エミリア頬に汗たらり。
「あはは、冗談ですよね。さっきわたしが血を飲ませようとしたのだって冗談だったじゃないですか」
正拳突きの威力に正直ローゼはビビッていたが、エミリアはエミリアでローゼの実力にビビっている様子だ。
ローゼが迫る。
「まあ、とりあえず金貨はエミリアにあげるわ。受け取りなさいよ。わたしはクレナの方をもらうから」
二人とも金貨が欲しいには欲しい。だが、生股間で温められていたちぢれ毛付きの金貨だ。どんな呪いがかけられているか分かったもんじゃない。二人で押し付け合った挙句、結局受け取らずにホロヴィッツのねぐらを後にした。
しばらくして、池のほとりで洗えばよかったかな、と思いついて、受け取らなかったのをローゼがちょっと後悔し出した頃、二人は、闇夜のけもの道に立ちはだかる一人の男に出くわした。
暗がりではっきりと顔が見えるわけではないが、眉が隠れるほどのブロンドの髪を風に揺らして、馬上のローゼを睨み上げている。結構ハンサム、とローゼはちょっと思ったが、人里離れた森の中、怪しいってもんじゃない。
道のわきに背負い袋が置いてある。旅人だろうか。釦衣(ワイシャツ)に薄い絹スウェードの下体衣(ズボン)姿の男は、ブロードソードを抜いて言った。
「悪魔牙団の者だな」
「違うわよ」とローゼは否定するが、男は信じない。こんな夜更けに若い娘が森にいること自体が怪しい、と言う。確かに男の言う通りだ。この道をまっすぐ戻れば、悪魔牙団の幹部のところまで行けるのだから、疑われても無理がない。
ローゼは言い訳しない。見るからに男のその構え、激弱以外の何者でもない。そう察して馬を下り、つかつか歩み寄る。レイピアの切先で数回ブロードソードを弾くと、そのままからめ取って道のわきに投げてやった。
「くぞぉ」
存外男は案外あきらめが悪い。エミリアほどではないが少しは接近戦もできなくはないローゼは、バカスカドスッ、と殴るわ蹴るわ。一方的な大立ち回り。一瞬なので常人には見えなかっただろうが、エミリアの目にはよく見えていた。「悲惨……」と言わしめるほどの所業。
「くそっ……、殺せ、もう殺せ」
男が泣き出す。少し可哀想になったローゼが訳を訊くと、なんと姉が悪魔牙団にさらわれた、と言うのだ。ホロヴィッツがこの奥にいると知って、退治にやって来た、とのこと。
呆れたローゼが言った。
「あんたバカねぇ、吸血鬼を相手にするのに、満月の夜に襲ってどうするのよ、返り討ちに会うのが関の山よ」
するとエミリア、
「ローゼさんだって同じことして危うく負けるところだったんですからねぇ」
「うるさいわね、勝ったんだから問題ないでしょ」
しかし、あのねぐらの小屋に若い女はいなかった。
エミリアが言った。
「ローゼさん、わたしたち騙されているかもしれませんよ。だって、わたしたち勝ったんですから、ホロヴィッツさんのこと煮るなり焼くなり出来たじゃないですか。それなのに、わたしたちホロヴィッツさんが良い人(?)だと思って助けてあげたでしょう?
もしかしたら、別の場所に監禁しているとか……」
確かにありうる。巨大ヒルになった時に、本気モードのエミリアに正拳突きをさせれば、大ダメージは与えられたし、魔力を弱めてから町まで連れて行って純銀の杭を打ち込めば、十分倒せた。それをさせないために良いやつを装ったのかもしれない。
ローゼは確認のために、アリアス・サノスと名乗るこの男と共に、もう一度ホロヴィッツのもとに戻ることにした。
「そいつは残念だったな」と言って、ホロヴィッツがおもしろい提案をしてくれた。
「まあ、俺を倒したんだから、俺から褒美をやろう。しかもあのエルザさえ倒したんだろう? 金貨五枚じゃ割に合わんぞ。あいつの実力なら千枚は貰っても良いくらいだからな」
それを聞いて、ローゼ思わず椅子から腰を浮かすほど驚いた。
「マジっすか? あの変態ドS女が千枚?」
ローゼには全く信じられない話だ。聞いてびっくり、あの女、亀甲の殺し屋、と恐れられるアサシンだったのだ。
二人ともそのあだ名は聞いたことがある。ミッドエル王国でも何人かの伯爵と侯爵が殺された事件があった。亀甲縛りのエルザ……ん? 縛られて拷問されて殺されていたって聞いていたけれどまさか……。
そのまさかだ。殺され方の細かい方法は表ざたになっていなかったが、相当濃厚なSMプレイが一晩続いて、日の出直前に昇天させられたらしい、とのこと。もちろん二つの意味(性と死)の昇天だ。発見者や調べた王室の人たちは、さぞつらい思いをしただろう。見たくもない変態の後始末をさせられて。
「そこですか?」とエミリアがつっこむ。「殺された人なんて、もっと悲惨ですよ、散々苦しめられて――」
「そうでもないぞ」とホロヴィッツが言った。「エルザはドMしか標的にしないからな。前もって、連日散々プレイを楽しんでから、トドメに完徹プレイに及ぶんだ」
ゲロゲロ。軍の上層部にド変態が居座っていたとは。殺されて良かった、と思うローゼであった。
「それより、ご褒美は何なの?」
気を取り直したローゼがそう訊くと、ホロヴィッツは徐にTバックに手を突っ込んで股間をまさぐる。
「おおおおおっ! おい! またやる気かこのド変態!」
ゲシッと馬場キックをかましたローゼは、ドアまで後退りしながらレイピアを抜く。
ホロヴィッツが、落ち着くように促して言った。
「おいおい勘違いするなよ、これをやろーと思ったんだ」
ローゼが見ると、金貨三枚だ。
「なんかちぢれ毛がついているんですけど……」
「気にするな、ちぢれ毛は食べると良いお守りになるんだぞ」
「わぁ、ローゼさん良い旅のお供ができましたね」エミリアが、ローゼにお似合い、とはしゃぐ。
「ふ、エミリアに譲るわ」
「喉を通りにくそうなので、わたしはご遠慮です」
「大丈夫よ、お腹に穴開けて入れてあげるから」
ローゼは、笑顔でエミリアのお腹をレイピアの先で突く。
エミリア頬に汗たらり。
「あはは、冗談ですよね。さっきわたしが血を飲ませようとしたのだって冗談だったじゃないですか」
正拳突きの威力に正直ローゼはビビッていたが、エミリアはエミリアでローゼの実力にビビっている様子だ。
ローゼが迫る。
「まあ、とりあえず金貨はエミリアにあげるわ。受け取りなさいよ。わたしはクレナの方をもらうから」
二人とも金貨が欲しいには欲しい。だが、生股間で温められていたちぢれ毛付きの金貨だ。どんな呪いがかけられているか分かったもんじゃない。二人で押し付け合った挙句、結局受け取らずにホロヴィッツのねぐらを後にした。
しばらくして、池のほとりで洗えばよかったかな、と思いついて、受け取らなかったのをローゼがちょっと後悔し出した頃、二人は、闇夜のけもの道に立ちはだかる一人の男に出くわした。
暗がりではっきりと顔が見えるわけではないが、眉が隠れるほどのブロンドの髪を風に揺らして、馬上のローゼを睨み上げている。結構ハンサム、とローゼはちょっと思ったが、人里離れた森の中、怪しいってもんじゃない。
道のわきに背負い袋が置いてある。旅人だろうか。釦衣(ワイシャツ)に薄い絹スウェードの下体衣(ズボン)姿の男は、ブロードソードを抜いて言った。
「悪魔牙団の者だな」
「違うわよ」とローゼは否定するが、男は信じない。こんな夜更けに若い娘が森にいること自体が怪しい、と言う。確かに男の言う通りだ。この道をまっすぐ戻れば、悪魔牙団の幹部のところまで行けるのだから、疑われても無理がない。
ローゼは言い訳しない。見るからに男のその構え、激弱以外の何者でもない。そう察して馬を下り、つかつか歩み寄る。レイピアの切先で数回ブロードソードを弾くと、そのままからめ取って道のわきに投げてやった。
「くぞぉ」
存外男は案外あきらめが悪い。エミリアほどではないが少しは接近戦もできなくはないローゼは、バカスカドスッ、と殴るわ蹴るわ。一方的な大立ち回り。一瞬なので常人には見えなかっただろうが、エミリアの目にはよく見えていた。「悲惨……」と言わしめるほどの所業。
「くそっ……、殺せ、もう殺せ」
男が泣き出す。少し可哀想になったローゼが訳を訊くと、なんと姉が悪魔牙団にさらわれた、と言うのだ。ホロヴィッツがこの奥にいると知って、退治にやって来た、とのこと。
呆れたローゼが言った。
「あんたバカねぇ、吸血鬼を相手にするのに、満月の夜に襲ってどうするのよ、返り討ちに会うのが関の山よ」
するとエミリア、
「ローゼさんだって同じことして危うく負けるところだったんですからねぇ」
「うるさいわね、勝ったんだから問題ないでしょ」
しかし、あのねぐらの小屋に若い女はいなかった。
エミリアが言った。
「ローゼさん、わたしたち騙されているかもしれませんよ。だって、わたしたち勝ったんですから、ホロヴィッツさんのこと煮るなり焼くなり出来たじゃないですか。それなのに、わたしたちホロヴィッツさんが良い人(?)だと思って助けてあげたでしょう?
もしかしたら、別の場所に監禁しているとか……」
確かにありうる。巨大ヒルになった時に、本気モードのエミリアに正拳突きをさせれば、大ダメージは与えられたし、魔力を弱めてから町まで連れて行って純銀の杭を打ち込めば、十分倒せた。それをさせないために良いやつを装ったのかもしれない。
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