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第四十六話 最強のこもりびと
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自治都市カルデ。この地域に四つある自治都市の中で随一の美食都市だ。もともと四つとも裕福な商人が多い都市であるが、この都市には王侯貴族の別荘が多く建てられていて、高級レストランと宝飾品のお店が乱立していた。
町並みも壮健な総石造り建物しかない。見上げるばかりの大建築群。本格的な装飾は無かったが、重厚なデザインの新古典様式。東の亜大陸東部沿岸に受け継がれてきた独立円柱が独特の雰囲気を醸し出している。
ほとんどは大富豪目当ての高級ブティックばかり。物価も尋常じゃない高さだ。見る店見る店些細な物ですら豪奢品しかない。クラゲ野郎退治で得た賞金が残っていなかったら、今頃無一文で借金まみれな二人は惨めなホームレス状態だっただろう。
「何言ってんですか」とエミリア。「借金まみれはローゼさんだけですよ」
「あんた、わたしを見捨てて逃げたのよね?」
「わはははは」と笑うエミリア。
「あーあ、古代の宮廷料理美味しかっただろうなぁ」
「本当、美味しかったですよ」とエミリアが味を解説。聞けば聞くほど惨めになるローゼ。手に持っていた一塊のパンを見やってため息をつく。
「庶民の味方、無発酵のちぎりパン(パニス・クアドラートゥスみたいなの)一むしり(それを更に二人で半分こ)が金貨一枚って、どんだけ高いのよ」
フィリッツォのホテルの修繕費が払いきれなくてスッカラカン。ローゼが支配人に泣いて頼んで、ようやく見逃してもらった小銭だけで、幾つかの村々を渡り歩いてバイト三昧。そうして貯めたお金も、パン一むしりでほぼほぼ消滅。
げんなり気味のローゼは、無発酵パンをエミリアと分け合いながら、安い宿屋を探していた。でも住人の殆どは富豪だし、旅行にやってくる人々も貴族ばかりの都市に、場末の宿屋みたいなのは一軒もない。
諦めかけたちょうどその時、一人の老紳士が声を駆けてきた。貴族のご当主ではない。執事のセバスチャンといった感じの風貌だ。
「わたくしは、マーキン家のご長男カトワーズ様の執事をしております“正に”セバスチャンと申します」
“正に”だって。自分で言うか普通。たぶん方々で言われているんだろうな。「そのまんまだな」って。
「我が主のカトワーズ様がお昼をご一緒にどうですか? と申しております」とのこと。
「さすがわたしの美貌」と満足気のローゼに対して、エミリアは怪しい、と言って聞かない。
「大丈夫なんですか? お金持ちは、可愛い女の子や男の子をお金で買って、姉弟にして楽しむそうですよ。 もしわたしが被害にあったら、身を挺して守ってくれるんですか?」
「わたしも可愛い女の子なんだけどー」と遠くに呼びかけるように言うローゼ。
エミリアそれをガン無視で続ける。
「まあ、ローゼさんが身代わりになってくれるんならついて行きますよ。それで、お風呂で見捨てたことチャラですね」
おかしくね? ねえそれおかしくね? お前が決めることじゃなくなくなくね? とローゼ。「わたしが決めることだと思うんだけど……」
セバスチャンについて行くと、豪華な金細工が施されている白い馬車。車輪や車軸にまで金細工。東の亜大陸の文化圏のデザインではない。とても優雅な装飾でふんだんに飾られている。ミッドエルのお隣フィーリアンも金銀細工が多用される文化であるが、フィーリアン発祥のゴシック文化のそれとは違う。豪華な灰色の石造建築の町の中でもひときわ輝く白と金の馬車は、おとぎの国から迷い出てきたようであった。
馬車に揺られて案内されたのは、郊外にある薄いオレンジ色の大きなお屋敷。宮殿さながら見事に彫刻が施された総石作り。ローゼたちは、初めて見る意匠の豪華なつくりの大建築に感嘆以外することが出来ない。ファサードにはふんだんに大理石が使われている。灰色の石造建築中心の中央市街と違って、この辺りはみんな色鮮やかな豪邸ばかり。どれも宮殿の様に大きくてバロックかビサンチン建築のように見える。
ローゼたちを招待した主が住む屋敷は、その中で唯一のロココ建築。上から見ると“コ”の字型で五階建て。一階当たりの高さが三階分はある。来るまでに見たお屋敷の中でも目を奪われずにはいられないほど、豪華絢爛で規模が大きい。富豪ばかりの邸宅が立ち並ぶ中にあっても圧倒的な優雅さを誇っている。
「どこかの王族ですかね?」とエミリアが呟いた。
三メートルを超える塀に囲まれた敷地に入ると、庭の中央にとても大きくて壮麗な彫刻が施された噴水が見える。その手前、道を中央に据えて左右に見えるバラ園には大輪のバラが咲き乱れていて、遠くからでも高貴な香りが漂ってきて、その優美さが見て取れた。
大国ミッドエルの首都出身とはいえローゼは平民の出なので、こんな豪邸の敷地に入ったことは一度もない。学校は小砦風であったが、あくまで砦であるので美しい装飾は皆無。それにミッドエルはゴシック建築圏でロマネスクが混在する地域。地方都市はミッドエル独自文化のメルヘンな街並みだけれど、大都市はおもに茶色か灰色の建物が多い。
エミリアにしても、出身のウェールネス公国はロッツォレーチェ王国に隣接する小国だから、この国の文化圏の一国。貴族の屋敷はルネサンス風レンガ建築だし、地方都市は木造が多い。だから、口をあんぐり開けてずっと見入っている。
車寄せに馬車が停まって、二人が四輪車から降りる。三メートル以上はあろうかという重厚なつくりの扉が開くと、中に幅の広いの廊下(ほぼ部屋)があって、咲き乱れた赤バラ柄で煌めく乳白色のじゅうたんが敷いてある。左右が衛兵の詰所になっていた。壁も扉も彫刻が施されていて、楽園かと見まがうほど。
廊下の奥にあったドアをくぐった瞬間、二人は度肝を抜かれた。中はダンスパーティーをするような大広間になっていて、大きなシャンデリアが吊り下がっている。ローゼの身の丈より高い暖炉もある。外観以上に色鮮やかな内壁は左右対称で、壁にはたくさんの絵が飾られていた。壁は見渡す限りロカイユといわれる浮彫の装飾、要所要所に豪快な筋肉美を見せる彫像をいだく大きな壁龕が設けられている。設えられた煌びやかな調度品は、どれも超一流の最極品。
ローゼが今入って来た扉を振り返ると、左右に青やオレンジなどの極彩色に塗られたサイキックナイトの石造が二つあった。意匠のテーマは、神魔と闘うエスプス(超能力兵士)たち。独立柱すら円柱か角柱か分からないほどのロカイユで覆われている。普通のお屋敷なら漆喰を使って装飾する部分も全て大理石だ。石像もロカイユも全て金細工が施されている。
「お連れしてまいりました、カトワーズ様」とセバスチャンが四十五度で頭を下げた。
半円を描くように伸びる階段の上から「うむ」と男の子の声がして、大勢のメイドが下りてくる。
「なんじゃあれ?」とローゼが叫ぶ。エミリアもびっくり顔だ。
なんと、丸々太ったお坊ちゃんを乗せた升型の輿を担いだ四人のメイドが中央にいる。
輿が一階まで下りてきてローゼの前に停まると、少しの間無音な時間が場を支配した。それを打破するかのように、セバスチャンが言う。
「こちらは、我らが主カトワーズ・マーキン様でございます」
坊ちゃん刈り? よく言えばマッシュルームカット。前髪から耳横、後ろ髪まで一直線。なぜか後頭部の下の方は髪がない。刈り上げているわけではなく、生えてすらいない。ぱつんぱつんの子供スーツを着ていて、大きな赤い蝶ネクタイをしている。升を覗くとあぐらをかく足は短パンだ。
セバスチャンに紹介をされたカトワーズが無言で頷く。手を合わせて親指同士でもじもじしている。挨拶するローゼたちにも目を合わせず、恥ずかしそうに斜め下を俯いていた。
カトワーズがメイドの一人を見やると、やや間があって、そのメイドがローゼに話しかけてきた。
「――あ、こちらにランチをご用意しておりますので、一緒に食べましょう、とお坊ちゃまは申しております」
「早く言えよバカ! これだから下級貴族は嫌なんだよ」
カトワーズ饒舌に激怒り。
「申し訳ございません、お坊ちゃま」とメイドは平謝る。
なんつー内弁慶。
「あの……もうそのくらいで――」とエミリアが言うと、「う? ああ、ぅん」呟いて恥ずかしそうに斜め後ろを向く。すると輿を担いだメイドたちはくるりと回って、カトワーズをローゼの正面に向ける。
「あれ? この顔――」ローゼははたと気がついた。「ぽっちゃり王子?」パークの念写紙の隅に頭四分の一くらい映っていた男の子だ。
「まさかね」と笑うローゼに、虚を突かれた様子のカトワーズ。
「僕を知っているのか?」
急に心の距離が縮まって、カトワーズ心を開いた。貴族風の高いイントネーションで言う。ローゼが悪魔牙団のことを話すと、カトワーズが笑って「ぽっちゃり王子時代の僕を知っているとはな。足跡は全て消したつもだったけれど、パークから足がつくとは、やっぱり下民は存在する価値すらないんだな」
すごいことサラッと言ったよ。どんだけ差別発言だよ。でも名簿にあった“ぽっちゃり王子”。見た目から当てずっぽだったけれど、ドンピシャ当っちゃたよ。
「まさか、カトワーズ・マーキンと言うあだ名がついた、ぽっちゃり王子さんじゃないですよね?」と、ローゼが訊いた。
「まさか。極東の島サルじゃあるまいし、そんなわけないじゃん。そんなのは最下等民族だけさ。あんなのはこの地上から駆逐されれば良いのに。ゴキブリのように」
いや、ゴキブリ駆逐されていないかんね。おむつジジイのことだろうけど、ひどすぎる。ひどすぎると思いきれないけれどひどすぎる。
偶然牙の一人に出会えたのは運良かったけれど、と自分に言い聞かせるローゼだった。
町並みも壮健な総石造り建物しかない。見上げるばかりの大建築群。本格的な装飾は無かったが、重厚なデザインの新古典様式。東の亜大陸東部沿岸に受け継がれてきた独立円柱が独特の雰囲気を醸し出している。
ほとんどは大富豪目当ての高級ブティックばかり。物価も尋常じゃない高さだ。見る店見る店些細な物ですら豪奢品しかない。クラゲ野郎退治で得た賞金が残っていなかったら、今頃無一文で借金まみれな二人は惨めなホームレス状態だっただろう。
「何言ってんですか」とエミリア。「借金まみれはローゼさんだけですよ」
「あんた、わたしを見捨てて逃げたのよね?」
「わはははは」と笑うエミリア。
「あーあ、古代の宮廷料理美味しかっただろうなぁ」
「本当、美味しかったですよ」とエミリアが味を解説。聞けば聞くほど惨めになるローゼ。手に持っていた一塊のパンを見やってため息をつく。
「庶民の味方、無発酵のちぎりパン(パニス・クアドラートゥスみたいなの)一むしり(それを更に二人で半分こ)が金貨一枚って、どんだけ高いのよ」
フィリッツォのホテルの修繕費が払いきれなくてスッカラカン。ローゼが支配人に泣いて頼んで、ようやく見逃してもらった小銭だけで、幾つかの村々を渡り歩いてバイト三昧。そうして貯めたお金も、パン一むしりでほぼほぼ消滅。
げんなり気味のローゼは、無発酵パンをエミリアと分け合いながら、安い宿屋を探していた。でも住人の殆どは富豪だし、旅行にやってくる人々も貴族ばかりの都市に、場末の宿屋みたいなのは一軒もない。
諦めかけたちょうどその時、一人の老紳士が声を駆けてきた。貴族のご当主ではない。執事のセバスチャンといった感じの風貌だ。
「わたくしは、マーキン家のご長男カトワーズ様の執事をしております“正に”セバスチャンと申します」
“正に”だって。自分で言うか普通。たぶん方々で言われているんだろうな。「そのまんまだな」って。
「我が主のカトワーズ様がお昼をご一緒にどうですか? と申しております」とのこと。
「さすがわたしの美貌」と満足気のローゼに対して、エミリアは怪しい、と言って聞かない。
「大丈夫なんですか? お金持ちは、可愛い女の子や男の子をお金で買って、姉弟にして楽しむそうですよ。 もしわたしが被害にあったら、身を挺して守ってくれるんですか?」
「わたしも可愛い女の子なんだけどー」と遠くに呼びかけるように言うローゼ。
エミリアそれをガン無視で続ける。
「まあ、ローゼさんが身代わりになってくれるんならついて行きますよ。それで、お風呂で見捨てたことチャラですね」
おかしくね? ねえそれおかしくね? お前が決めることじゃなくなくなくね? とローゼ。「わたしが決めることだと思うんだけど……」
セバスチャンについて行くと、豪華な金細工が施されている白い馬車。車輪や車軸にまで金細工。東の亜大陸の文化圏のデザインではない。とても優雅な装飾でふんだんに飾られている。ミッドエルのお隣フィーリアンも金銀細工が多用される文化であるが、フィーリアン発祥のゴシック文化のそれとは違う。豪華な灰色の石造建築の町の中でもひときわ輝く白と金の馬車は、おとぎの国から迷い出てきたようであった。
馬車に揺られて案内されたのは、郊外にある薄いオレンジ色の大きなお屋敷。宮殿さながら見事に彫刻が施された総石作り。ローゼたちは、初めて見る意匠の豪華なつくりの大建築に感嘆以外することが出来ない。ファサードにはふんだんに大理石が使われている。灰色の石造建築中心の中央市街と違って、この辺りはみんな色鮮やかな豪邸ばかり。どれも宮殿の様に大きくてバロックかビサンチン建築のように見える。
ローゼたちを招待した主が住む屋敷は、その中で唯一のロココ建築。上から見ると“コ”の字型で五階建て。一階当たりの高さが三階分はある。来るまでに見たお屋敷の中でも目を奪われずにはいられないほど、豪華絢爛で規模が大きい。富豪ばかりの邸宅が立ち並ぶ中にあっても圧倒的な優雅さを誇っている。
「どこかの王族ですかね?」とエミリアが呟いた。
三メートルを超える塀に囲まれた敷地に入ると、庭の中央にとても大きくて壮麗な彫刻が施された噴水が見える。その手前、道を中央に据えて左右に見えるバラ園には大輪のバラが咲き乱れていて、遠くからでも高貴な香りが漂ってきて、その優美さが見て取れた。
大国ミッドエルの首都出身とはいえローゼは平民の出なので、こんな豪邸の敷地に入ったことは一度もない。学校は小砦風であったが、あくまで砦であるので美しい装飾は皆無。それにミッドエルはゴシック建築圏でロマネスクが混在する地域。地方都市はミッドエル独自文化のメルヘンな街並みだけれど、大都市はおもに茶色か灰色の建物が多い。
エミリアにしても、出身のウェールネス公国はロッツォレーチェ王国に隣接する小国だから、この国の文化圏の一国。貴族の屋敷はルネサンス風レンガ建築だし、地方都市は木造が多い。だから、口をあんぐり開けてずっと見入っている。
車寄せに馬車が停まって、二人が四輪車から降りる。三メートル以上はあろうかという重厚なつくりの扉が開くと、中に幅の広いの廊下(ほぼ部屋)があって、咲き乱れた赤バラ柄で煌めく乳白色のじゅうたんが敷いてある。左右が衛兵の詰所になっていた。壁も扉も彫刻が施されていて、楽園かと見まがうほど。
廊下の奥にあったドアをくぐった瞬間、二人は度肝を抜かれた。中はダンスパーティーをするような大広間になっていて、大きなシャンデリアが吊り下がっている。ローゼの身の丈より高い暖炉もある。外観以上に色鮮やかな内壁は左右対称で、壁にはたくさんの絵が飾られていた。壁は見渡す限りロカイユといわれる浮彫の装飾、要所要所に豪快な筋肉美を見せる彫像をいだく大きな壁龕が設けられている。設えられた煌びやかな調度品は、どれも超一流の最極品。
ローゼが今入って来た扉を振り返ると、左右に青やオレンジなどの極彩色に塗られたサイキックナイトの石造が二つあった。意匠のテーマは、神魔と闘うエスプス(超能力兵士)たち。独立柱すら円柱か角柱か分からないほどのロカイユで覆われている。普通のお屋敷なら漆喰を使って装飾する部分も全て大理石だ。石像もロカイユも全て金細工が施されている。
「お連れしてまいりました、カトワーズ様」とセバスチャンが四十五度で頭を下げた。
半円を描くように伸びる階段の上から「うむ」と男の子の声がして、大勢のメイドが下りてくる。
「なんじゃあれ?」とローゼが叫ぶ。エミリアもびっくり顔だ。
なんと、丸々太ったお坊ちゃんを乗せた升型の輿を担いだ四人のメイドが中央にいる。
輿が一階まで下りてきてローゼの前に停まると、少しの間無音な時間が場を支配した。それを打破するかのように、セバスチャンが言う。
「こちらは、我らが主カトワーズ・マーキン様でございます」
坊ちゃん刈り? よく言えばマッシュルームカット。前髪から耳横、後ろ髪まで一直線。なぜか後頭部の下の方は髪がない。刈り上げているわけではなく、生えてすらいない。ぱつんぱつんの子供スーツを着ていて、大きな赤い蝶ネクタイをしている。升を覗くとあぐらをかく足は短パンだ。
セバスチャンに紹介をされたカトワーズが無言で頷く。手を合わせて親指同士でもじもじしている。挨拶するローゼたちにも目を合わせず、恥ずかしそうに斜め下を俯いていた。
カトワーズがメイドの一人を見やると、やや間があって、そのメイドがローゼに話しかけてきた。
「――あ、こちらにランチをご用意しておりますので、一緒に食べましょう、とお坊ちゃまは申しております」
「早く言えよバカ! これだから下級貴族は嫌なんだよ」
カトワーズ饒舌に激怒り。
「申し訳ございません、お坊ちゃま」とメイドは平謝る。
なんつー内弁慶。
「あの……もうそのくらいで――」とエミリアが言うと、「う? ああ、ぅん」呟いて恥ずかしそうに斜め後ろを向く。すると輿を担いだメイドたちはくるりと回って、カトワーズをローゼの正面に向ける。
「あれ? この顔――」ローゼははたと気がついた。「ぽっちゃり王子?」パークの念写紙の隅に頭四分の一くらい映っていた男の子だ。
「まさかね」と笑うローゼに、虚を突かれた様子のカトワーズ。
「僕を知っているのか?」
急に心の距離が縮まって、カトワーズ心を開いた。貴族風の高いイントネーションで言う。ローゼが悪魔牙団のことを話すと、カトワーズが笑って「ぽっちゃり王子時代の僕を知っているとはな。足跡は全て消したつもだったけれど、パークから足がつくとは、やっぱり下民は存在する価値すらないんだな」
すごいことサラッと言ったよ。どんだけ差別発言だよ。でも名簿にあった“ぽっちゃり王子”。見た目から当てずっぽだったけれど、ドンピシャ当っちゃたよ。
「まさか、カトワーズ・マーキンと言うあだ名がついた、ぽっちゃり王子さんじゃないですよね?」と、ローゼが訊いた。
「まさか。極東の島サルじゃあるまいし、そんなわけないじゃん。そんなのは最下等民族だけさ。あんなのはこの地上から駆逐されれば良いのに。ゴキブリのように」
いや、ゴキブリ駆逐されていないかんね。おむつジジイのことだろうけど、ひどすぎる。ひどすぎると思いきれないけれどひどすぎる。
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