DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第四十八話 富豪のお見合い大作戦

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 「そのタイトルおかしいでしょう⁉」とローゼが叫ぶ。「お見合っていないじゃん! 百歩譲っても前の話なんじゃないの?」
 「そう言ってくれるなら、OKってことだよねー!」と、カトワーズが嬉々として迫る。
 「ふざけないでっ」
 ローゼが振り向きざまにパンチを繰り出す。見た目によらず良いフットワークで避けるカトワーズ。ローゼは気がついていないが、テレパシーで行動は予測されている。殴る蹴るの猛攻撃を繰り出すが、何一つも当らない。
 すごい、と思ったエミリアは、良い修行だと言ってカトワーズに決闘を申し込む。
 「やった」今の内に逃げてしまおう、とローゼは走るが、サイコキネシスでエミリアを遠くの部屋に押しやって、すぐに追いかけて来た。
 「あのエミリアが手も足も出ず? めっちゃ強敵かもしんない!」
 大慌てで逃げるローゼに、カトワーズが叫ぶ。
 「なぜ逃げるんだい? ローゼちゅわ~ん。僕と結婚すれば一生左うちわ。全人類の一パーセントの大金持ちなのに。
  人生バラ色、いや黄金色さ。飲み水にも金粉、料理にも金粉。金貨が詰まった純金風呂に入って、流す水にも金粉入りさ。おしり拭き紙もシルクや柔紙じゃないんだよ。貨幣なんだ」
 「紙幣? 何? 紙幣って」
 いや、シルクや柔紙だって世間一般使ってないよ。柔紙なんて一ロールで金の延べ棒と同価値なんだから。普通端切れか葉っぱだよ。
 「紙幣を知らないのかい? これだからミッドエルの田舎はダメなんだ。ローゼちゃんみたいな上流民は、ミッドエルなんて辺境国家に籍を置いていちゃいけないよ。
  良いかい? これが紙幣ってやつさぁ」
 そう言って懐から札束を取り出したカトワーズは、束ねていた紙を千切ってまき散らした。
 手に取ったローゼは「?」なんだコレ? と穴が開くほど見やるが、ただの変な紙だ。高価な紙に変な絵が描いてある。右側にカトワーズの肖像があって真ん中に〇と蝶ネクタイの絵、左側に1と数字が描いてある。裏を見ると、どこかの風景画になっていて、なぜかカトワーズが手を振っている。おしり拭きにくそうな硬い紙。
 紙は高価なのになんてもったいないことするんだ、とローゼは放り捨てた。
 ようやく向こうの部屋から出てきたエミリアが走りながら舞い落ちてくる紙幣を取って言った。
 「これにお金と同じ価値があるなんて、信じられませんね」
 「ほんとよねー」
 逃げまどいながらカトワーズの説明を聞いても、二人は信じない。
 「この“1”って何かしら?」とローゼが言うと、カトワーズが答えて言う。
 「金貨一枚ってことだよ」
 それを聞いて二人ともビックリ仰天。ローゼが叫ぶ。
 「こんな紙切れが金貨一枚? しかもこれあんたが作ってんでしょ? 作りたい放題じゃん」
 念写で作ったデザインを基に手書きで一枚一枚絵描きが描いているとはいえ、時間をかければほぼ無尽蔵に作り出せる。資産無限大? とてもローゼには理解できない。
 「僕と結婚すれば王妃様だよ」と言うカトワーズに、ローゼが言い返す。
 「侯爵家が何言ってんのよ」
 「もうすぐ国を作るから本当になるよ。僕とローゼが支配する奴隷の国さ」
 最悪だな。
 「僕のお金は僕のもの。奴隷のお金も僕のもの。国の資産全部が僕のもの。朕は法なり。お金は超法規的な方法で合法的に使いたい放題だよ」
 「なんか、どっかのいじめっ子みたいなこと言ってるー!」ローゼの声が流涕している。
 超法?合法? どっちか分かんないけど、それは置いておいてエミリアが言う。
 「やったじゃないですかぁ、ローゼさん。もうお金に困ることなんてありませんよ。立派なレイピア十本でも百本でも思いのままに手に入ります」
 カトワーズが「一万本でもプレゼントー」と叫ぶ。
 「いらないよー、そんなにー」
 そう言ってローゼは振り返って続ける。
 「国民からお金全部巻き上げたら、貧しくなって何も食べれないじゃない。すぐに革命が起こって滅びるぞ」
 「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ、国民なんていないから(全員奴隷)。それにベーシックインカム制度を採用するんだ」
 「ベーシックインカム?」(ローゼ&エミリア)
 カトワーズが自慢満々に説明する。
 「まず全ての財産を取り上げる。それをご飯に換えて僕が食べる。残した残飯を肥やしにして畑を作る。そこでできた作物を奴隷に配るんだ」
 そのシステム破たんしてるぞ。
 「ローゼちゅわーん、そんなに照れなくても良いんだよ。遠慮なく僕の胸に飛び込んでおいでー」
 脂肪で弾き返されそう。
 「ローゼちゃんが僕と結婚してくれたら、僕はローゼちゃんにいろんなことをいっぱいしてあげるんだ」
 「わぁ素敵」とエミリア。「いったいどんなことしてあげるんですか?」と訊く。
 「あんなことやこんなことさ。そんなことやどんなこともだよ」
 もわもわもわ~ん、と膨らむカトワーズの妄想。
 「ローゼちゃんには、僕にひざまくらをさせてあげるんだ。ほかにもウサちゃんリンゴを『あーん』とさせてあげたり、ナデナデさせてあげたりぃ――」
 「全部あんたがしてもらってんでしょ!」とローゼがつっこむ。
 想像の中のローゼは、白とピンクのリボンやヒダ飾りが多用されたモード系ドレス姿。大きく膨らんだファージンゲールが特徴的。でもその妄想変じゃね? パンツ見えそうなくらいの超ミニスカート。ガードル丸見えじゃんかよう。
 でもエミリア「へそだしルックは今もですね」
 「いつかはサイコラークの全女性が着ることになるファッションさ。いち早くローゼちゅわんに着せてあげたいんだ」と照れながらも真剣に語るカトワーズ。
 「いやいやいや、それはないでしょ? 何そのなっがい頭、銀髪のカツラなんてかぶりたくないわよ」
 「サイコラークの伝説に出てくる天空人の髪型さ。僕達の高貴な血統を合わせれば、雲の上にだって住めるはずだよ」
 お前一人で飛んでいけば? て言うかおむつジジイ、まさかのまさか、実は高貴な天空人?
「嫌よ」と断るローゼ、迫ってくるカトワーズ。妻は夫の言うことを聞くものだと興奮気味。
 ローゼは男尊女卑を非難して言った。
 「何考えてるのよ! 時代錯誤もいいとこだわ」
 「別に後ろを歩けとは言わないよ、僕は紳士だからね。僕が考えているのは、だただた初夜のことばかり!」
 「大声で言うことじゃないでしょ! そこ後ろで頬赤らめない!」
 ローゼ、メイドを指さし怒鳴りつける。
 ついに来たかエッチ系。下ネタばかりの作品だから、ある意味好色異色系。本当に♡♡♡な展開になるんでしょうか? 頑張れカトワーズ。結果は如何に?

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