DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第五十五話 ついに確保? 射程に入ったターゲット

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 「ルイスに勝っちまうとはな」
 そう声が聞こえて、ローゼたちが振り返る。
 「パーク・ヨードン⁉」(ローゼ&エミリア)
 何うんこから顔出してんだ!  
 「脱糞しすぎて、うんこになれたんだ」パーク自慢げ。
 うんこになって踏まれる人生ってどんなだよ。
 「ちょー超したね」
 超してねーよ。くぐったんだろ人生のハードルを。いや潜ったんだよ、底辺の辺の下を!
 「俺はもはや人間じゃねー」
 「分かってるよ。会った時から分かってるから」
 ローゼのつっこみにパークがポッと赤らむ。
 「褒めてないから! 照れんじゃないわよ!」
 ズボズボとパークが土から這い出てくる。なんだ、糞人(ふんじん)になったんじゃなかったのね。
 「人がうんこなんかになれるわけねーだろ、バカか? お前は」パーク真顔。
 分かってるよ。バカにしたはずなのに、バカにされてなんか悔しい。
 「下民が」と、うんこを見るような冷たい目でパークを見やるカトワーズ。
 “見るような”じゃなくて良いよね。もう“うんこ”で良いよね。
 「カトワーズ」と、懐かしさを込めてパークがはにかむ。「見てくれ、今の俺の姿を」
 「糞土だな。それより話しかけんな。ウジ野郎」
 「今俺は成長しているんだ。なあ分かるだろ?」
 「黙れ五月蠅い糞バエ野郎」
 スゲー扱いだな。話まったくかみ合わない。いやかみ合ってる? ウジからハエに成長してる。
 自信満々にパークが「ふっ」と笑う。
 「俺は天下を取るぜ。そのためにお前の念写が必要なんだ」
 あの下品な下着念写紙集、カトワーズが撮ったんか。それもそうだな、同じ悪魔牙団で唯一のエスパーだから。
 ローゼが、「あ――」と思い出して言った。
 「そんなことより、あの時牙団から走って去って行ってから、そのままですか? ヘレンちゃんの下着のまま……」
 ほんとだ。コイツ何週間このままだったんだ?
 そこスルーしてパークが言った。
 「ローゼリッタ、カトワーズほどの男を倒しちまうなんて、やっぱりただ者じゃなかったな」
 「何で知ってるの?」
 「ずっと見ていたからさ」
 「嘘、どこで?」
 プレイバックみんな注目――――――て何度見ても出てこないんですけど?」
 「VTRが間違ってんだ」とパークが言う。
 別のでプレイバックもう一度。
 「真暗じゃん?」とローゼが眉をひそめる。
 「ちょうど映ったぞ」
 「何にも見えない」と言うローゼとエミリアにカトワーズが解説してやる。
 「こいつ、家の敷地の外の下水道で糞水に浸かっていたんだ」
 すると、腕を組んで瞳を閉じて頷くパーク。
 「ああ、さすがだ、よく分かったな。俺はそこから様子をうかがっていたんだ」
 なんでだよ。そこまで来たなら中入ってこいよ。
 「入れなかったんだ、何故だかな」
 理由をカトワーズが説明する。
 「僕が超能力で壁作っていたんだよ。ゴキブリすら入れたくないのに、僕の家にパークを入れるわけにはいかないからな」
 ほんとヒドイ扱われ方だな。――てパークどこ? エミリアが指さす方を見ると、木陰で肩を震わせて泣いている。
 ローゼは、慰めたくない気持ちを抑えて慰めるようにパークに言った。
 「わたしたちお昼にするから、あんたももう川で体洗ってアジトに帰りなさいね」そう声をかけた後「夏休みエンジョイしなさいよ」
 「付きまとってやる」
 ぎょっとするローゼ。
 「念写してくれるまで付きまとってやるからな」
 どんなストーカーだよ。
 「お前らみんなくそまみれだ」
 逆キレかよ。なんか魔王化してるぞ。情けない感じで。
 「こうやって世を恨んで魔王って生まれるんでしょうね」とエミリア悟る。
 ローゼに無理にお願いされたカトワーズは、仕方なく念写を承諾。横流し物資にあった羊皮紙を使って、仁王立ち、イケメンポーズ、アイドルスマイル念写念写念写。パークの気が済むまで念写してやった。
 「やったー」と念写紙を両手に掲げたパークは、喜んで飛び跳ねながらアジトへと帰って行った。
 無駄な出来事が一件落着。

 ――それで、この物資どうする?
 「良いじゃん、もらっちゃえば」とカトワーズ。おもむろにパンパン、と手を鳴らす。
 「お呼びでしょうか、お坊ちゃま」と超濃紺色スーツの男。誰あんた?
 「わたくしアンチュールと申します。セバスチャン様に仰せつかって、お坊ちゃまの護衛のためについております、奥様」
 「えー? 結婚してるのー?」とがっかりする元奴隷の三人。いや今も奴隷か?
 「してないわよ。勝手な言いがかり」ローゼ速攻全否定。
 「まあ、二号三号でも良いけどね、どうぞよろしく」とワンレン女。
 話聞けよ。
 続々出てくるカトワーズの私兵。何人いるんだよ。それより、戦ってたのずっと見てたのかよ。スモールソードを持った十人程度の軽武装兵。金銀糸と宝石をちりばめた鮮やかな刺繍が施されたパステル調のロココスーツ。絞まった感じのカフに刺繍があるスマートなコートとウエストコート(ベストみたいの)にブリ―チーズ(半ズボン)。白い絹らしき長い靴下が目に鮮やか。サイコラークの服装めっちゃおしゃれ。戦う気ないんじゃないの? とはいえ、いれば相当な戦力になったはず。
 唖然と見つめるローゼをよそに、そそくさと物資をかたしていく。
 「しばしお待ちください」とアンチュールが言ったので、予定だったピクニックを開始した。
 持ってきたのは生ハムやチーズなどを使った数種類のパニーノが入ったバスケット一つだけなのに、幾つも運ばれてくるバスケット。テーブルとクロスまで用意されて、超豪華な屋外ランチ。フルコース。その横で積まれていくレンガ。なんだなんだと見ていると、瞬く間に組まれていく大きな焼き窯。ルヴァンと呼ばれる自前(カルデで一番の高級パン屋)のパンだねで作ったパン生地が運ばれてきて、瞬く間にこんがり焼かれて、良い香り。
 フルコースの品々は、やっぱり一口ずつしか食べさせてもらえず。ローゼ欲求不満だったが、最後に出てきたのは、生ハム、チーズにバジルやトマト、一口サイズのお肉などの具をふんだんに盛った焼き立てゴージャス・ピッツァ。
 ローゼが「パニーノはどうするの?」とカトワーズに訊くと、「冷えたパンは消しゴムだ」と返ってきた。
 パン屋に謝れ。
 「あ、お茶がありますよ、本物のチャノキのヤツ」と、エミリアが喜びの声をあげる。「コーヒー豆まで……さすが軍事物資」
 本当だ。チャノキのお茶は高価なので、ローゼもあまり飲んだことがない。故郷では誕生日の時だけだったし、コーヒに至っては人生で二、三杯飲んだだけ。カトワーズのところでも出なかった。
 「いや、出せたよ。訊いたよ。何飲むかメイドのマリーが訊いたんだよ」とカトワーズ。
 「そうだっけ?」
 「ローゼちゃんはビールとワインしか頼まなかったの」
 「いやらしい」とエミリアがジトッとした目でローゼを見やる。
 「あはははは、うん、まあ、ここはお紅茶を楽しみましょう」とローゼが提案した。
 「そう言って、ブランデーでもたらすんでしょう?」とつっこむエミリア。
 悪びれず「うん、まーね」と答えるローゼ。結局ドボドボと紅茶に注がれるブランデー。「あ、フィーリアンのカシスワインがある。二杯目の紅茶に入れて飲もおっと」
 ルンルン気分のローゼは、東の亜大陸の南の方で作られているというコーヒーリキュールを見つけて、食後のコーヒーに混ぜるために確保した。
 「この甘いの美味しいわね」ローゼ思わず試し飲み。
 「飲んだくれめ」とエミリアが呟いた後、ふと気がついて「でも、軍の横流しを横領して大丈夫なんですか?」と疑問を呈した。
 カトワーズが目くばせすると、「かしこまりました」とアンチュールが頭を下げる。たぶん根回しするんだろう。
 ルンルン気分でピクニックを楽しんでいると、奴隷を持っていたルイスに一目置いた様子のカトワーズが、ルイスが逃げていった(?)方を見やって徐に呟いた。
 「いつか、あの凶悪運で大物になるかもな」
 ならねーよ。
 「でも――」とエミリアがローゼに言う。「エスパーの予知能力半端ないのでは?」
 ややあって――「まっさかー」と笑う三人でした。



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