DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第五十九話 美穂ちゃんの趣味

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 「実は……」としげおが深刻そうに話し始めた。なんか、しげおの耳からお花が咲いている。茎がめっちゃ長い割に花が小さいやつ。
 内容は美穂のイタズラ話。だけど本人の前だから抑え気味に話しているようだ。
 「~~ということなんです」
 言ってるそばから、あんたズボン脱がされてますけど。
 ローゼがエミリアを見やると、なんか男爵の口髭みたいな髪型になってる。びっちり綺麗な真ん中わけで。
 ローゼは、(エミリア……とうとう気がふれたのかしら?)とも思ったが、しげおの説明から、犯人は美穂なのだろう。ワザと何も言わなかった。
 まつ毛ながっ
 よく見ると瞼に目が書いてあって、瞬きしても目を開けたまま。
 (これが理由で、この子逮捕されないかしら)
 そう思いながら、ローゼは視線をご両親に戻す。
 お母さん上半身袋詰め。レディース(ヤンキー女子)がよくやるトイレいじめの一つ。踝まであるスカートをまくりあげて上半身を包んで縛って、トイレの個室に放置するやつ。パンツ丸出しだから恥ずかしくて人呼べない。忍耐強く内側からほどくしかない。
 美奈子、幸い下はステテコ姿。右ももにつぎはぎがある。
 しげお「でも、美穂はとってもいい子なんですよ」とほほ笑んだ。
 なんか耳の花萎れてたれている。更にローゼは気付いて言った。
 「頭髪なくなってますけど? なんか、おでこの部分にちぢれ毛一本が残ってるのみですが?」
 「へぇ~、いまはそんなですかぁ」
 めっちゃ笑顔で清々しい。
 しげおは「本当、今が一番可愛い時分ですよ」と、うんこヘアの頭で言う。トグロ巻いた三段うんこ。伝説のギャグ漫画でアイアンマペット(魔法で動く鉄人形)の女の子が枝に刺して持っていたやつ。今は耳にあった枯れた花がなくなって、たんぽぽの綿毛が生えている。
 しげお放心状態? 目が遠くを見ているよね、物悲しそうに。
 ローゼが瞬きした刹那、なんか阿修羅みたいに顔が三つになってるしげお。耳が伸びてタコ口キッスみたいになっている。左右の側頭部にヌケちゃんちっくな目が描いてあって。
 「じゃあ、僕たちは仕事に参りますので」しげおが言う。
 それ、クビになりませんか?
 夫婦は答えてくれなかった。笑顔で美穂に手を振って、ローゼたちに会釈して立ち去る。
 奥さんあれ前見えてんの?
 家に帰ると弟のテルが出迎えた。そしてご挨拶。二歳下の八歳、少し長めの髪で可愛い感じだ。しっとりした髪質で、薄いベージュの肌。お外で遊んでる? 元気そうだけどちょっと内気そう。お姉ちゃんをちらちら見ている。
 テルは、ほんのちょっとおどおどした感じで言った。
 「おねーちゃん、この人たち誰?」
 美穂ガン無視。あれあれ? どうしたの?
 「うん」とテル。「おねーちゃん、いつも僕のことイジ――」
 急に美穂がテルの二の腕をつねる。
 「――優しくしてくれるんだ」
 「部屋行ってなよ」と美穂がテルのももを膝で小突く。
 「うん」
 「仲悪いですね」とエミリア。
 「仲良くする必要なんてないもん」と美穂。「あの子が生まれたばっかりに――」
 親の愛情が一人占めできなくなった?
 「お小遣いが減っちゃったんだから」
 現ナマかよ
 「お父さんに、新しいトランクスをプレゼント出来ない」
 お父さん大好きっ子なんだな――て、おい! お父さんが風呂入っている隙に、何タンスの中からトランクス盗んでんだよ。変な夢描くなよ。
 「アンチークってやつよ」
 アンティークね。そういうのデニムやレザーでやるもんよ。
 テルが部屋に入ったのを確認しに行った美穂がローゼのところに戻ってきたので、エミリアが「弟をいじめちゃだめよ」と諭す。
 「黙れペチャパイ」
 「ペチャッ⁉」エミリア ギョギョギョッ!
 ローゼ大ウケ。
 「あまりいじめてあげないで、この子気にしているようだから」
 「うん分かった」と素直にお返事をする美穂。
 「美穂ちゃん」とエミリアが叫ぶ。「ローゼさんだって偽ボインなんだよ」ほらっ、と腰を指を指して「くびれてるから大きく見えるだけだって、おむつジジイが言ってたもん」。
 「冗談よしてよ、わたしそこそこあるんだから」と余裕しゃくしゃくにローゼが言った。
 「ほほう」と言って美穂が指でエアモミモミしながら「確認に揉ませてもらおうかなぁー」。
 げ? 子供でも変態?
 しばらく追いかけっこが続いて、小休憩。その時、部屋から出てきたテルが「あの……」と声を発する。
 「あ、お昼ご飯」とエミリアが気がついた。さっき十一回くらい鐘がなっていたっけ、と思い出す。「ローゼさん、急いで買ってきましょう」
 「うん、スープはキッチンにあるみたいだから、パンとメインね」
 「いえ」とテルが遮る。妙におどおどしながら何か躊躇している様子。やや間があって「あの…、いつまでそんな姿してるんですか? ふだんからですか?」
 ローゼが鏡を見やると、激ケバメーク。「なんじゃこりゃ~!」
 「あっはっはっはっ」とエミリアと美穂。「ようやく気がついたんですかぁ?」とバカにする。
 「何言ってんのよ! あんただってひどいでしょ⁉」
 「あ~、いつの間に! ローゼさん何で教えてくれなかったんですかっ! ぷんぷん」
 なんだよ。お前もだろ?
 「ご飯はパンと干し肉があるよ」と美穂が取ってきた。「お、ワインもありますな」とローゼ。陶器ボトルと木のコップを持ってきた。
 ローゼが火を起こしてスープを暖炉にかける。温め直している間に二人は変なメイクを洗い流した。

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