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第六十七話 ミス・カルデは誰の手に?
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ローゼは、左斜め上から振り下ろされたムチを掻い潜って、そのまま更に大きく踏み込んだ。勢いをつけてサイドステップカウンター。カトワーズを撃ち付ける。
アイマスクにカトワーズのおでこがぶつかって、撥ね飛ばされて転げるエルザ。数回転バウンドして着地。そのまま力を溜めるように腰を落とした姿勢で構えなおす。そして「やー」と掛け声と共に渾身の力でムチを振るった。右足爪先一本で立って、左足は地面と平行よりだいぶ上にぴんと伸ばす姿勢。左手は翼を高々と広げた孔雀の様に天を突く。まるで体操選手のリボンの技。
両手を掲げたカトワーズも、「いやぁー!」と叫んで腕を振りおろし、渾身のサイコエネルギーを放出する。
二つの巨大な霊域(スピリチュアル・パワー・フィールド)が出現し、周りに落ちたがれきや巻き込まれた兵士、セシュターズを巻き上げていく。突如として粉砕音を立てて地面が崩れてクレーターと化した。稲妻のような二人の霊域に飲まれた道沿いの建物がえぐられて倒壊。こいつらだけで一騎当千? 一個中隊? 一大隊? もしかしたら旅団くらいの戦力なのでは?
ローゼは思った。
(エルザのヤツ、もし変態じゃなかったら、ロッツォレーチェの軍隊って、今以上に強いのでは?)
パークだってロッツォリーチェの陸軍兵だったっていうし……。本当に変態で良かった。この時ばかりは本当にそう思った。ていうか初めて思った。変態で良かったって言うのも変だけれども。
カトワーズはサイコラーク人だけれど、東の亜大陸で新興国を打ち立てる気だ。反乱を企てているだけある実力。さすがに無謀かもしれないけれど、群雄割拠の小国が乱立する南の方なら出来てもおかしくないぞ。あそこら辺は栄枯盛衰を繰り返して、毎年地図が書き換わるから。
ローゼは、「力が拮抗している――――」と呟いた。「今決められるのはわたしだけだ」でも恐ろしくて踏ん切りがつかない。
躊躇している間にクラゲのハンデがあるカトワーズがにわかに押され始めていることに気がついたローゼは、密かに腰のダガーの握る。腹を括るしかないだろう。
ローゼは「今だ!」と叫んで、エルザめがけて勢いよくダガーを放った。「くっ」と言って刃を握って受け止めるエルザ。ローゼが「エミリアっ」と叫ぶ。呼応したエミリアがエルザの霊域に飛び込んで、大量の霊気を込めた正拳突きを撃ち放つ。
カトワーズとの一進一退を維持したまま、エルザはエミリア渾身の一撃をムチで受け止めた。
そこにローゼが果敢に突撃をかける。エミリアが放った霊気が飛散する前にそれをレイピアで突いた。そして、エミリアの霊気をサーフボード代わりにしてエルザの放つ霊気の上を波乗りするかのように飛びぬけて、反対側に着地。すぐさま乗ってきた霊撃に、フォア&パスステップで突撃シュテッヒェン(刺突)をかます。すかさずエミリアはまた正拳突き。三対一の包囲網が形成された。
エルザ、一本のムチでトライアングル包囲をよく持ち堪える。だが、それもいつまでもは続かない。ついにエルザの力が尽きて、三方向からの攻撃が同時に直撃。
「きゃ~~」と叫んだエルザは、高々と撥ね飛ばされて地面に落ちた。受け身も取れなかった上に頭からだ。全く動かない。伏したままだ。
三人掛かりでようやくエルザを追い詰めた。ローゼが捕まえようとしたところ、ヨロヨロと立ちあがる。
「エルザ……」とカトワーズが呟く。「没落貴族とはいえ、貴族は貴族。没落しても貴族という生まれは消せないんだな」そう言ってほほ笑む。
分かんないけど、なんか感慨に浸ってるよ。
でもよく見ると、カトワーズはカトワーズで疲労困憊しきった様子。
駆けつけてきたセバスチャンが「お坊ちゃま」と声をかける。「一度ホテルに退きましょう。籠城です。お屋敷からの援軍を待って反撃しましょう」
「分かった。何とかこのクラゲも解いてくれ」
「わー」とみんなに担がれてホテルに去っていくカトワーズとその軍勢。セバスチャンが辺りの傭兵にカネをばらまいて、防衛完成立て籠もる。ホテル全部屋貸切状態。泊まっていたお客さんまで追い出されてきた。
どんだけ権力買ってあるんだ? あの金満野郎。
もちろん、立ち退き料はたんまり払われたし、別のホテルに同等以上の部屋を用意されているから、宿泊客に文句はない。お土産付きで、逆に得したくらいだ。
残された三人が構えてにらみ合っていると、遠くから砂煙を巻き上げて突進してくる何者かがいる。みんなで見やると、こっちに突っ込んでくる美穂。輿に担がれている? いや輿じゃない。人間騎馬だ。て、なんでブリーフ? まさか美穂女王様? アゲハのアイマスクをつけて、どこで拾ったのか、監獄の塀の上についていそうな有刺鉄線を振り回している。襯衣は胸の下で結んでいて、南国の美女風の装い。半袖もまくり上げて肩露出。トロピカル・トランクスもさまになってる。
三つ巴? 何とか調略して美穂をこちらに引き入れなければ――。思わずローゼが口を開いた。
「美穂ちゃん、わたしたちお友だちでしょ? こっちに味方してくれるわよね?」
「うーん……」
美穂はローゼとエルザを何度も交互に見やる。
「ちょっと待って」と言った美穂は、人間騎馬を下りて、おもむろにローゼに近づいていって、胸をモミモミ。「うーん」悩む。今度はエルザのところに行って、胸をモミモミ。「うーん」と悩んで、人間騎馬に戻っていった。そして「覚悟! 似非巨乳」と、力強くローゼを指でさした。
「何でぇ⁉ わたしの方が若くてはりがあるでしょ⁉ ピチピチよー」
「熟してない。 青いりんごは甘くないもん」
それを聞いて、エルザ大笑い。「大人の魅力は無いみたいね」
するとエミリアが付け加えた。「そうなんです。ホロヴィッツさんにも言われてました」
忘れていたのに。
有刺鉄線を使ってエルザをまねたムチ攻撃。まだまだ未熟。ここに至るまで何人もの男の服を引き裂いてきたらしいが、ローゼの前では軽くいなされてしまった。
勝てないと察した美穂は、人間騎馬の右後ろの小太り男(ちょっと若め)をムチ打って、逃走開始。
「待てー」とローゼたちが追いかける。でもしんどい。エルザの攻撃をかわして追いかけるのは至難の業だ。
カトワーズのおかげでエルザの戦闘力は大幅減退している。今なら勝てるかもしれないが、美穂の格好が前より悪化している。しかも+α変な趣味。だからこのまま放っておくわけにもいかない。
追撃戦と同時に撤退戦状態。もう勝ってんだか負けてんだか、ローゼには分からなかった。
アイマスクにカトワーズのおでこがぶつかって、撥ね飛ばされて転げるエルザ。数回転バウンドして着地。そのまま力を溜めるように腰を落とした姿勢で構えなおす。そして「やー」と掛け声と共に渾身の力でムチを振るった。右足爪先一本で立って、左足は地面と平行よりだいぶ上にぴんと伸ばす姿勢。左手は翼を高々と広げた孔雀の様に天を突く。まるで体操選手のリボンの技。
両手を掲げたカトワーズも、「いやぁー!」と叫んで腕を振りおろし、渾身のサイコエネルギーを放出する。
二つの巨大な霊域(スピリチュアル・パワー・フィールド)が出現し、周りに落ちたがれきや巻き込まれた兵士、セシュターズを巻き上げていく。突如として粉砕音を立てて地面が崩れてクレーターと化した。稲妻のような二人の霊域に飲まれた道沿いの建物がえぐられて倒壊。こいつらだけで一騎当千? 一個中隊? 一大隊? もしかしたら旅団くらいの戦力なのでは?
ローゼは思った。
(エルザのヤツ、もし変態じゃなかったら、ロッツォレーチェの軍隊って、今以上に強いのでは?)
パークだってロッツォリーチェの陸軍兵だったっていうし……。本当に変態で良かった。この時ばかりは本当にそう思った。ていうか初めて思った。変態で良かったって言うのも変だけれども。
カトワーズはサイコラーク人だけれど、東の亜大陸で新興国を打ち立てる気だ。反乱を企てているだけある実力。さすがに無謀かもしれないけれど、群雄割拠の小国が乱立する南の方なら出来てもおかしくないぞ。あそこら辺は栄枯盛衰を繰り返して、毎年地図が書き換わるから。
ローゼは、「力が拮抗している――――」と呟いた。「今決められるのはわたしだけだ」でも恐ろしくて踏ん切りがつかない。
躊躇している間にクラゲのハンデがあるカトワーズがにわかに押され始めていることに気がついたローゼは、密かに腰のダガーの握る。腹を括るしかないだろう。
ローゼは「今だ!」と叫んで、エルザめがけて勢いよくダガーを放った。「くっ」と言って刃を握って受け止めるエルザ。ローゼが「エミリアっ」と叫ぶ。呼応したエミリアがエルザの霊域に飛び込んで、大量の霊気を込めた正拳突きを撃ち放つ。
カトワーズとの一進一退を維持したまま、エルザはエミリア渾身の一撃をムチで受け止めた。
そこにローゼが果敢に突撃をかける。エミリアが放った霊気が飛散する前にそれをレイピアで突いた。そして、エミリアの霊気をサーフボード代わりにしてエルザの放つ霊気の上を波乗りするかのように飛びぬけて、反対側に着地。すぐさま乗ってきた霊撃に、フォア&パスステップで突撃シュテッヒェン(刺突)をかます。すかさずエミリアはまた正拳突き。三対一の包囲網が形成された。
エルザ、一本のムチでトライアングル包囲をよく持ち堪える。だが、それもいつまでもは続かない。ついにエルザの力が尽きて、三方向からの攻撃が同時に直撃。
「きゃ~~」と叫んだエルザは、高々と撥ね飛ばされて地面に落ちた。受け身も取れなかった上に頭からだ。全く動かない。伏したままだ。
三人掛かりでようやくエルザを追い詰めた。ローゼが捕まえようとしたところ、ヨロヨロと立ちあがる。
「エルザ……」とカトワーズが呟く。「没落貴族とはいえ、貴族は貴族。没落しても貴族という生まれは消せないんだな」そう言ってほほ笑む。
分かんないけど、なんか感慨に浸ってるよ。
でもよく見ると、カトワーズはカトワーズで疲労困憊しきった様子。
駆けつけてきたセバスチャンが「お坊ちゃま」と声をかける。「一度ホテルに退きましょう。籠城です。お屋敷からの援軍を待って反撃しましょう」
「分かった。何とかこのクラゲも解いてくれ」
「わー」とみんなに担がれてホテルに去っていくカトワーズとその軍勢。セバスチャンが辺りの傭兵にカネをばらまいて、防衛完成立て籠もる。ホテル全部屋貸切状態。泊まっていたお客さんまで追い出されてきた。
どんだけ権力買ってあるんだ? あの金満野郎。
もちろん、立ち退き料はたんまり払われたし、別のホテルに同等以上の部屋を用意されているから、宿泊客に文句はない。お土産付きで、逆に得したくらいだ。
残された三人が構えてにらみ合っていると、遠くから砂煙を巻き上げて突進してくる何者かがいる。みんなで見やると、こっちに突っ込んでくる美穂。輿に担がれている? いや輿じゃない。人間騎馬だ。て、なんでブリーフ? まさか美穂女王様? アゲハのアイマスクをつけて、どこで拾ったのか、監獄の塀の上についていそうな有刺鉄線を振り回している。襯衣は胸の下で結んでいて、南国の美女風の装い。半袖もまくり上げて肩露出。トロピカル・トランクスもさまになってる。
三つ巴? 何とか調略して美穂をこちらに引き入れなければ――。思わずローゼが口を開いた。
「美穂ちゃん、わたしたちお友だちでしょ? こっちに味方してくれるわよね?」
「うーん……」
美穂はローゼとエルザを何度も交互に見やる。
「ちょっと待って」と言った美穂は、人間騎馬を下りて、おもむろにローゼに近づいていって、胸をモミモミ。「うーん」悩む。今度はエルザのところに行って、胸をモミモミ。「うーん」と悩んで、人間騎馬に戻っていった。そして「覚悟! 似非巨乳」と、力強くローゼを指でさした。
「何でぇ⁉ わたしの方が若くてはりがあるでしょ⁉ ピチピチよー」
「熟してない。 青いりんごは甘くないもん」
それを聞いて、エルザ大笑い。「大人の魅力は無いみたいね」
するとエミリアが付け加えた。「そうなんです。ホロヴィッツさんにも言われてました」
忘れていたのに。
有刺鉄線を使ってエルザをまねたムチ攻撃。まだまだ未熟。ここに至るまで何人もの男の服を引き裂いてきたらしいが、ローゼの前では軽くいなされてしまった。
勝てないと察した美穂は、人間騎馬の右後ろの小太り男(ちょっと若め)をムチ打って、逃走開始。
「待てー」とローゼたちが追いかける。でもしんどい。エルザの攻撃をかわして追いかけるのは至難の業だ。
カトワーズのおかげでエルザの戦闘力は大幅減退している。今なら勝てるかもしれないが、美穂の格好が前より悪化している。しかも+α変な趣味。だからこのまま放っておくわけにもいかない。
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