DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第七十一話 蚊って何でわざわざ耳元飛ぶのかな?

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 「それより、何でこんな危険な森に普通の人が紛れてんの?」とローゼが疑問を呈した。
 「わたしたち、悪者退治しにきたの」とジュゴ奈が言う。
 サイ江が「そうそう、わたしたちの大事なパーク様を横取りしようとする性悪女が出没したらしいのよ」と続けた。
 「うん、一言言ってあげないと、って思ったの」とカバ美。
 「ああ、それで偶然会ってここまで来たんだ」とパークが引き継いだ。「俺は、カトワーズに念写を頼んでくれたローゼにお礼するために、竜殺紳士を探しに来たんだけどな」
 「そうなの? でも偶然再会なんてすごいわね」とローゼが答える。
 するとゴリ子「うん、町の女の子みんな脱いだ下着が行方不明になる怪事件が多発していてね、注意が呼びかけられてたのよ」
 明らかにパークの仕業。
 「それで、わたしたちのも盗まれたのよねー」とウジ吉が言う。
 お前手足ないのに、何言ってんだよ。
 「じゃかーしーわ、黙って聞けや!」
 パークが聞かないふりするのはお約束。
 エミリアひそひそ。
 「ジュゴ奈さんがノーパンなのって換えがないからですかね」
 ノーパン? スカート穿いているのに何故分かる?って股出てる。腰めっちゃ長くて足短いから、スカートから股出てるよ。
 「やだ、見ないでよエッチ!」
 見せんなよエッチ。
 「ローゼさん、これR指定には?」とエミリア、ソフト絶望。
 ジュゴンだし、尾ひれだし、ダイジョブなんじゃね?
 「それより、みんな身長百八十センチ前後あってBWH大きいのに、パークはサイズ大丈夫なの?」
 「ああ、頭にかぶるんだ。特にゴリ子の抜け毛がチクチクして気持ちいい。剛毛だからな」
 「やだーもう、バラさないでー」とゴリ子が腕を振るう。パーク三回転して木に激突。瀕死状態。ガチ怖えー。
 バラすも何も、全身剛毛じゃないですか? とはつっこめない。
 見ると、たき火があってお湯を沸かしている。ハーブティーの袋もあるから、お茶の準備をしているようだ。ローゼとエミリアは断りを入れて、お邪魔になっても一緒に休憩することにした。
 森の中に入ってから戦闘は一度もない。ドラゴンがウジャウジャ生息している森だから、人と戦えるほどの大型の獣や邪霊獣は住んでいない。それでもローゼたちは疲労していた。ずっと気を張り詰めてきたからだ。
 二人はみんなと打ち解け合おう、と話題を探した。
 パークがゴリ子と話していてそっぽを向いた時、「そうだ」と言ってカバ美がローゼに話しかけた。
 「剣て、どう構えればいいの?」
 「剣? 良いよ。直立して――」
 ローゼがそう言うと、カバ美は言われた通りに動作を始める。
 「――右足を斜め四十五度に開いて、斜め後ろに下げるの。剣は右頬の斜め前にグリップが来るようにして、切っ先は天を突くのよ」
 「それでどうするの?」
 「右足を踏み出しながら、相手の頭や喉をめがけて斜めに振り下ろすの。それが基本の一つかなぁ? 『オーバルハウ』って言うのよ」
 「へぇ~」と相づちをするカバ美、おもむろにわきに置いてあった大きな石斧を取り上げた。
 「……右足を斜め四十五度、後ろに下げて、石斧を構える」
 一瞬間があって「死ねっ」とカバ美一言。解放された殺気を纏った『オーバルハウ』がローゼを襲う。勢い余って、斬りつけるというより“叩き潰し切る”って感じのオーバルハウ。
 ローゼ「どひゃぁ」と叫んで仰向けに転げて一回転。間一髪で避けはしたのだけれど、座っていた丸太は叩き潰されたて千切れてしまった。もし避けなければ、ローゼがぶちゅっぱされていただろう。
 「チッ、仕留め損ねた」カバ美小声で吐き捨てる。
 振り下ろす瞬間を目撃してしまったパークが、ワナワナ震えながらカバ美に叫んだ。
 「何やっているんだ! カバ美」
 「えへっ♡ ここやぶ蚊が多いものだから」
 「なんだ、そっかー」
 ンなわけあるか。蚊殺すのに何使ってんだよ。
 「刺されると痒いじゃない?」
 刺さなくても飲めるようにしてあげるんですか? 蚊のために? 
 「上手いこと言うなぁ」とパーク。
 上手くねーから。
 「それより、たくさん人いるんだし、バーベキューしない? ちょうどドラゴンのお肉もあるんだし」とサイ江がフォロー。
 「ちょっと――」ローゼが“待って”と言いかけた時に、エミリアが「さんせーい😃🎶」と手をあげながら叫んで、言葉を遮る。
 みんなもそろって「さんせーい」と声をあげた。
 なんかカバ美の行為がうやむやになった。
 みんながバーベキューの準備を始める横で、妙に担当作業の準備開始を遅らせようとする動作のカバ美、なんか準備の準備をするふりして素振りしてる。
 ようやく気が休まると思ったのに、全く休まらない。ローゼの死角に消えようとするカバ美、常にこっちを見ているのが分かるほど変な雰囲気。ひときわ異彩を放っている。
 石を集めながら彼女をチラリと見やるローゼ、苦笑い。「はぁ~」とため息吐いてがっかりするしかありませんでした。

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