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第七十二話 才能を信じて羽ばたけ栄光の未来へ!
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バーベキューを楽しむため、ローゼたちはどこからドラゴンを捌こうか、と周りを歩いて回っていた。前を歩いていたパークが、ドラゴンの前足の向こうに行った時、後ろからしこを踏む時のような音が聞こえたのでローゼが振り返ると、時速五十キロで突っ込んでくるサイ江が視界いっぱいに広がった。
びっくりしてとっさの全転で避けたローゼの手前で急停止するサイ江に、ドキドキする胸を抑えて「な、何?」と問うローゼ。
「わたし、歌手目指してサバンナから出てきたんだ」
「サバンナ?」
「グランド大陸のずっと南の方にある大陸よ」
聞いてもどんなところか想像できない。
「見て、わたしのダンス」
「わぁ、すごい、ダンスうまーい」とローゼとエミリアはビックリして褒めまくる。超キレッキレのダンス。流れる黒髪が綺麗で印象的だ。
サイ江は言った。
「中学出てすぐデビューしたの。十五歳の時ね。すぐにブレイク寸前までいったわ。わたしもそのまま歌姫になれるって思ってた。世界の歌姫目指してたの」
ゆっくりした感じで思い出シーンにフェードイン。
どこかの辺境の掘立小屋。深夜零時の畑の真ん中。真っ暗けっけ。誰もいない。
「今日は特別ステージ、野外ライブ」
ごめん……君騙されて無い?
スタッフいなくて送迎なし。唯一やって来たバックダンサーのパーク。楽屋(兼ステージ)でサイ江がリハに夢中で自分の荷物に背中を向けたその瞬間に、火照ったこのハゲ下着を盗む。もちろん足の親指で摘まんで。
たまたまターンした時にそれを見てしまったサイ江。絵にも描けない異様な光景。「あんな風に足で摘まむなんて」と顔が赤く染まる。
「盗んだのは下着じゃないの。わたしの心」
何見たの? 知りたくないけど、めっちゃ気になる!
不意に背を向けたサイ。徐にローゼたちの方に向き直って、
「聴いてください、新曲、TRY MEET」
どこからともなくイントロスタート。
ジャッジャッジャジャ♪ ジャ~ジャジャーン♪
🎼刺そーうよ、誘うーよ、どぅりゃあぁぁ、MEET🎼
「うひゃぁぁ」
サイが“どぅりゃあぁぁ”のところで突っ込んできて大パニック。ゼロ距離ダッシュで時速五十キロ。
🎼串刺し くり抜き めった刺し♪ あなたのハートの息の根止めてあげーる🎼
全てを間一髪で避けたローゼ。サイ江は後ろのドラゴンの腹にツノが刺さって、ようやく止まった。
何だ今の歌? 何だよミートって! 何に挑戦してんだよ
ドキドキする胸を抑えてローゼがサイ江に叫ぶ。
「“MINCHI”の方が良かったかしら?」
グチャグチャじゃんか、“刺そうよ”どころじゃないじゃんか。
エミリア感激「ざーんしーんっ」
続いてサイ江。
「新曲SLAY YOU歌います」
こえーよ、“お前を殺す”ってどんな歌だよ! 元々“屠る”を英訳したら“SLAY”って出たけど、“SLAY”を和訳したら虐殺って出たよ。
「聴いてください」サイ江陶酔。
つーかその目線どこ見てんの? 見てる先どんだけ遠く? ドームライブ(コロシアム)の広さだよね?
「思い入れのある言葉をタイトルにしました。しかもSlaughtewrにかかっています」
どの辺が? 目的ですか? わたしに何する気なんですかぁぁ⁉
エミリア「わたし良い歌知っていますよ」
頼むよ、エミリア雰囲気変えて。
「『血祭り』」
被せんなよ。そんな歌聴いたことねーよ
「ローゼさんに出会ってから今までの気持ちを“死”に込めました。
お前が作ったのかよ。“死”に敢えて“”がついているってことはワザと間違えてんのか?
「いいえ、正しく書きました」
本気? それ本気?
サイ江、見つめ合って頷くエミリアに頷き返す。
「新曲歌います。『血祭り』」
イントロスタート、どこから照らすの? スポットライト。
🎼君が流した血は 悪夢の中 永眠必死の 血祭り花火ー🎼
即興? 歌詞まだ聞いていないのに、何で歌えるの?
「わたしへの感情シンクロしてる?」二人を見やって、ローゼ絶望の溜息混じる。
エミリアはサイ江の歌を聞いて、「違いますよ」とあやをつけた。今の歌詞をすんごいシャウトで歌い切る。
メタル? パンク? もっと可愛いガールズバンドやろうよ。
すかさずエミリア「新ユニット、ベイビーパンク」
二番煎じにもなんないよ。
「何匹目かのドジョウねらいです」
せめて二匹目にしろよ。
サイ江が足を開いて構えた。
「あなたさえいなければ、パーク様はわたしのもとに戻って来るわ」
「あなたさえいなければ、主人公はわたしのものだわ」
サイ江とエミリアで挟み撃ち。
まだ狙ってんのかよ、主人公。
「聴いてください、新曲、死をくれてやるぜ☠ ローゼ」
イントロなしでサビが始まる。
🎼君が砥いだナイフの切れ味忘れない 十個くらいに刻んで食べること夢見てー🎼(エミリア&サイ江)
白昼堂々スプラッタぁ?
「もう良いよ」ローゼが〆る。
「ローゼさん、わたしたち三人ブレイク間違いなしですよ」とエミリアがフォロー。
「わたし生贄にしてブレイクする気か⁉」
「違います。ローゼさんがトリです。大トリです」
「へ? ホント? どんな感じ?」
「ライブの最後で打ちあがるんです」
正にブレイク。
「はじけ飛んで思い出の中。永遠になれるなんて羨ましいわ」と羨むサイ江。
じゃあ、お前がやれよ。
「あなたに譲るわ」
押し問答の末「もう!」とサイ江「らちが明かないわね」と全部すっ飛ばして「バーベーキューに紛れれば!」と突っ込んできた。食う気ですか? 証拠隠滅完全犯罪?
でもパークが来る気配。ローゼが叫ぶ。「助けてーパークー」
動揺したサイ江、軌道それてドラゴンの腹に突っ込んだ。
ローゼの悲鳴を聞いて戻って来たパークが、襲われたローゼたち(エミリア被害者面した)を見てサイ江を怒鳴る。
「何はしたないことしているんだ、つまみ食いだなんて。ドラゴンは生じゃ食えないぜ」
「違う、違う」とローゼ。
「そうなの」とサイ江「違うのよ。わたし、血抜きしなきゃって思って穴開けたの」
「何だそうなのか」
ローゼが「今わたし、襲われ――」と言いかけた時に、エミリアが割って入って答えた。
「血抜きは大切ですよ。お肉生臭くなっちゃいますもん」
「野生肉だしな」とパーク納得。
「それじゃーもう一回」と言って離れたサイは、ローゼめがけて全速突進。
「わたしを狙うなっ」
「間にいると危ないわよ」
そこでローゼは反対側に行く。それを追うサイのツノ。先っちょ使ってロックオン。ローゼがどこへ行ってもロックオン。
「明らかにわたし狙ってんでしょ!」とつっこむローゼ。
すかさず「ローゼ」とパークが怒る。「遊んでいると怪我するぞ」
「わたしが悪いのよ」とサイ江。「わたしがちゃんと合図し――」言い終わる前にローゼに突っ込み「――なかったから」と言ったのは、ドラゴンに刺さったツノを抜いた時。
寿命が縮みそうな思いのローゼ、息も絶え絶え。
「合図する気微塵もないじゃん」
バーベキューはいつのことやら。
びっくりしてとっさの全転で避けたローゼの手前で急停止するサイ江に、ドキドキする胸を抑えて「な、何?」と問うローゼ。
「わたし、歌手目指してサバンナから出てきたんだ」
「サバンナ?」
「グランド大陸のずっと南の方にある大陸よ」
聞いてもどんなところか想像できない。
「見て、わたしのダンス」
「わぁ、すごい、ダンスうまーい」とローゼとエミリアはビックリして褒めまくる。超キレッキレのダンス。流れる黒髪が綺麗で印象的だ。
サイ江は言った。
「中学出てすぐデビューしたの。十五歳の時ね。すぐにブレイク寸前までいったわ。わたしもそのまま歌姫になれるって思ってた。世界の歌姫目指してたの」
ゆっくりした感じで思い出シーンにフェードイン。
どこかの辺境の掘立小屋。深夜零時の畑の真ん中。真っ暗けっけ。誰もいない。
「今日は特別ステージ、野外ライブ」
ごめん……君騙されて無い?
スタッフいなくて送迎なし。唯一やって来たバックダンサーのパーク。楽屋(兼ステージ)でサイ江がリハに夢中で自分の荷物に背中を向けたその瞬間に、火照ったこのハゲ下着を盗む。もちろん足の親指で摘まんで。
たまたまターンした時にそれを見てしまったサイ江。絵にも描けない異様な光景。「あんな風に足で摘まむなんて」と顔が赤く染まる。
「盗んだのは下着じゃないの。わたしの心」
何見たの? 知りたくないけど、めっちゃ気になる!
不意に背を向けたサイ。徐にローゼたちの方に向き直って、
「聴いてください、新曲、TRY MEET」
どこからともなくイントロスタート。
ジャッジャッジャジャ♪ ジャ~ジャジャーン♪
🎼刺そーうよ、誘うーよ、どぅりゃあぁぁ、MEET🎼
「うひゃぁぁ」
サイが“どぅりゃあぁぁ”のところで突っ込んできて大パニック。ゼロ距離ダッシュで時速五十キロ。
🎼串刺し くり抜き めった刺し♪ あなたのハートの息の根止めてあげーる🎼
全てを間一髪で避けたローゼ。サイ江は後ろのドラゴンの腹にツノが刺さって、ようやく止まった。
何だ今の歌? 何だよミートって! 何に挑戦してんだよ
ドキドキする胸を抑えてローゼがサイ江に叫ぶ。
「“MINCHI”の方が良かったかしら?」
グチャグチャじゃんか、“刺そうよ”どころじゃないじゃんか。
エミリア感激「ざーんしーんっ」
続いてサイ江。
「新曲SLAY YOU歌います」
こえーよ、“お前を殺す”ってどんな歌だよ! 元々“屠る”を英訳したら“SLAY”って出たけど、“SLAY”を和訳したら虐殺って出たよ。
「聴いてください」サイ江陶酔。
つーかその目線どこ見てんの? 見てる先どんだけ遠く? ドームライブ(コロシアム)の広さだよね?
「思い入れのある言葉をタイトルにしました。しかもSlaughtewrにかかっています」
どの辺が? 目的ですか? わたしに何する気なんですかぁぁ⁉
エミリア「わたし良い歌知っていますよ」
頼むよ、エミリア雰囲気変えて。
「『血祭り』」
被せんなよ。そんな歌聴いたことねーよ
「ローゼさんに出会ってから今までの気持ちを“死”に込めました。
お前が作ったのかよ。“死”に敢えて“”がついているってことはワザと間違えてんのか?
「いいえ、正しく書きました」
本気? それ本気?
サイ江、見つめ合って頷くエミリアに頷き返す。
「新曲歌います。『血祭り』」
イントロスタート、どこから照らすの? スポットライト。
🎼君が流した血は 悪夢の中 永眠必死の 血祭り花火ー🎼
即興? 歌詞まだ聞いていないのに、何で歌えるの?
「わたしへの感情シンクロしてる?」二人を見やって、ローゼ絶望の溜息混じる。
エミリアはサイ江の歌を聞いて、「違いますよ」とあやをつけた。今の歌詞をすんごいシャウトで歌い切る。
メタル? パンク? もっと可愛いガールズバンドやろうよ。
すかさずエミリア「新ユニット、ベイビーパンク」
二番煎じにもなんないよ。
「何匹目かのドジョウねらいです」
せめて二匹目にしろよ。
サイ江が足を開いて構えた。
「あなたさえいなければ、パーク様はわたしのもとに戻って来るわ」
「あなたさえいなければ、主人公はわたしのものだわ」
サイ江とエミリアで挟み撃ち。
まだ狙ってんのかよ、主人公。
「聴いてください、新曲、死をくれてやるぜ☠ ローゼ」
イントロなしでサビが始まる。
🎼君が砥いだナイフの切れ味忘れない 十個くらいに刻んで食べること夢見てー🎼(エミリア&サイ江)
白昼堂々スプラッタぁ?
「もう良いよ」ローゼが〆る。
「ローゼさん、わたしたち三人ブレイク間違いなしですよ」とエミリアがフォロー。
「わたし生贄にしてブレイクする気か⁉」
「違います。ローゼさんがトリです。大トリです」
「へ? ホント? どんな感じ?」
「ライブの最後で打ちあがるんです」
正にブレイク。
「はじけ飛んで思い出の中。永遠になれるなんて羨ましいわ」と羨むサイ江。
じゃあ、お前がやれよ。
「あなたに譲るわ」
押し問答の末「もう!」とサイ江「らちが明かないわね」と全部すっ飛ばして「バーベーキューに紛れれば!」と突っ込んできた。食う気ですか? 証拠隠滅完全犯罪?
でもパークが来る気配。ローゼが叫ぶ。「助けてーパークー」
動揺したサイ江、軌道それてドラゴンの腹に突っ込んだ。
ローゼの悲鳴を聞いて戻って来たパークが、襲われたローゼたち(エミリア被害者面した)を見てサイ江を怒鳴る。
「何はしたないことしているんだ、つまみ食いだなんて。ドラゴンは生じゃ食えないぜ」
「違う、違う」とローゼ。
「そうなの」とサイ江「違うのよ。わたし、血抜きしなきゃって思って穴開けたの」
「何だそうなのか」
ローゼが「今わたし、襲われ――」と言いかけた時に、エミリアが割って入って答えた。
「血抜きは大切ですよ。お肉生臭くなっちゃいますもん」
「野生肉だしな」とパーク納得。
「それじゃーもう一回」と言って離れたサイは、ローゼめがけて全速突進。
「わたしを狙うなっ」
「間にいると危ないわよ」
そこでローゼは反対側に行く。それを追うサイのツノ。先っちょ使ってロックオン。ローゼがどこへ行ってもロックオン。
「明らかにわたし狙ってんでしょ!」とつっこむローゼ。
すかさず「ローゼ」とパークが怒る。「遊んでいると怪我するぞ」
「わたしが悪いのよ」とサイ江。「わたしがちゃんと合図し――」言い終わる前にローゼに突っ込み「――なかったから」と言ったのは、ドラゴンに刺さったツノを抜いた時。
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