DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第七十四話 恋のライバル再会を夢見て

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 ジュゴ奈がおもむろにバスケットから包み紙を取り出した。
 「ねえローゼさん、よかったらこれ食べて」
 「おすし? ここ内陸なんですけど、消費期限過ぎてません?」
 「大丈夫よ、においで分かるわ」
 そう言っている時点でアウトでは? ローゼ、くんくん鼻で嗅ぐ。
 「なんか酸っぱい臭いするんですけど。溶けて糸引いてません? 緑とか赤とか、黒いのとかも。これなんですか?」
 「発酵食品と一緒よ」
 一緒にするなよ。あれは食えるんだから。
 「美味いぜ」とパーク。
 ジュゴ奈慌てて「あ、だめっ」と叫ぶ。
 “だめっ”て言った? ねえ“だめっ”て言った?
 「美味すぎてほっぺたが落ちそうだぜ」
 ほっぺたどころかお前全身肉落ちてんぞ。
発酵してる。なに食わしてんだ? 菌強すぎて、食べた人が発酵している。
 
 みるみる間に――

         みるみる間に――
         
                 みるみる間に――

 うんこになっちゃったっっ。

 「ありがとう、ジュゴ奈」と下痢便パークが真剣に言う。
 何のお礼?
 「お前のおかげで、お腹壊してうんこ漏らしちゃうとこ隠せたぜ」
 「ううん、いいの」
 スゲーよ。うんこになりながらうんこ漏らしてたの? 腹下したのすしのせいじゃね?
 その後いろいろ(場所の移動とか)ございまして……。小休憩で全部省略。
 ようやく落ち着いてきた。しばらく楽しくバーベキューが続く。
 ローゼは意外にもウジ吉と仲良しになった。お互い男の子っぽくて明け透けた感じの性格だからだろう。
 ローゼは鷹揚に笑って言った。
 「本当、ウジ吉には驚かされたわ」
 「そうかしら?」
 「実際何もん?」
 「だーかーら、わたしはウジの獣人だって」
 「あ、あの……」ジュゴ奈、言いにくそうに口を開く。続けて言った。
 「獣人(人類)――ではないわ。わたし…魔導士だから分かるの」
 「え? マジで? わたし違うの?」
 ウジ吉ショーックッ。
 「うん…でも何かしら、人獣(獣人と獣のハーフ、若しくはキメラなど)でもないし、邪霊獣でもないし」ジィーと近くまでよって観察するジュゴ奈。
 魔物ですか? 
 「うそっ、わたしもしかしたら人獣かもなぁって思ってたけど」と、ウジ吉取り乱す。
 いや、邪霊獣かもなぁ、って思ってくれよ。
 人間界には、人類(人間や亜人種のエルフなどと狼男とかの獣人)の他に、人獣(人面犬みたいな知能の高い人型? の獣や動物ベースのキメラなど)と精霊獣と邪霊獣(自らの霊力若しくは環境内の霊力濃度が濃くて物質化した生命体、霊的素質から変化した人や動物(ピクシーやトロルなど)と精霊と邪霊(動植物の霊魂)がいる。
 「邪霊獣ですらないってことは、人間界の生き物じゃないんですか?」とエミリアがジュゴ菜に訊く。
 「ううん、物質の生命体だけれど……その、何と言うか――」
 「言って、包み隠さず言って」とウジ吉泣きつく。
 「――うん、“虫”」
 「虫?」
 「そう、虫。サナダムシ」
 がーんっっっ
 ウジ吉周辺を除いて、やっぱりか、という空気が辺りを包む。
 ややどころか長い沈黙の後、ようやくそれを破ってカバ美が口を開いた。
 「結局、恋敵には出会えなかったわね」
 ローゼ「顔が分かれば、旅のついでに探して、わたしたちが言ってあげられるのにね」
 「失敗したわ。賞金首だから、張り紙持って来れば教えてあげられたのに」
 ジュゴ奈「そうそう、裸らしいわ。暴れてまっくってどこかの町を壊滅させたらしいの」
 下着姿でマスクつけたムチ女なら知っている。
 「違う、レイピアらしいの」
 「レイピア?」(ローゼ&エミリア)
 「赤髪で、ロングで、マントつけている時もあるらしいんだけれど、でもいつもおむつ姿なんですって。しかも骸骨柄の」
 みんなでローゼを見やる。
 「もしかしてローゼさん――……」とエミリアが腰を浮かす。
 「その賞金首、他には何したんだ?」とパーク。
 ゴリ子が「たしか、無辜の寝たきり老人の鼻と口に砂糖詰めて窒息死させたり」と答え、カバ美が「通りすがりの人にごはんたかったりしたらしいわ」と続ける。
 「結婚詐欺とも書いてあったわ」とサイ江が付け加える。
 エミリア「微妙に当たってますね」
 当ってねーよ。
 「当たってないとも言い切れませんよ」とエミリア食い下がる。
 そんなにわたしが嫌いですか?
 「大好きでーす♡」その声に誠意0。
 その言葉を証明するかのように、エミリアは、噂は間違っている、とみんなに説明した。投げやりに。
 しばらくして、パークがはたと気づいた。
 「そうだ、借りてきたどんぶり返しに行かねーと」
 何だよ一つくらい。盗賊なんだから別にいいんじゃね?
 「ばか、それ犯罪だろ」
 パークに諭されるなんて、なんかムカつく。
 「それじゃあ、みんな帰ろうぜ」とパーク。「すまなかったな、竜殺紳士を見つけられなくて」
 なんだかんだあったけれど、あった分だけ濃厚だったバーベーキュー。過ごし時間は短かったのに、別れるときはしんみりしちゃう。
 お互いを見送り合うみんな。

 ゴリ子
 「あなた良い人だったのね、ごめんね疑ったりして」
 「分かればいいのよ」とローゼが微笑む。
 「うん、ありがとう。夜道には気を付けてね」
 つけ狙う気かよ。

 ジュゴ奈
 「わたし、ファイアー以外にも練習して、魔法憶えるわ。首を洗って待っててね」
 なに目的に修業すんだよ。

 カバ美
 「わたしアゴ強くて、キャベツみたいに一口で砕けるのよ。見せてあげたかったわ」
 何をだよ。何をキャベツみたいにする気だよ。
 「あなた自身は見れないけどね」
 頭かよ!

 サイ江しんみり。
 「エミリア、あなたの歌詞に込めた想い、わたしが受け継いだわ。受け継げきれなかったけれど」
 「うん、四分の一も無理だったね」とさらりと言う。
 まだ残ってるんですか? わたしへの気持ち。
 エミリアの言葉を胸に受け取り、サイ江が続ける。
 「気持ちを渾身の一撃に込められるようになったら、また会いに来るわ」
 来なくていいよ。“一撃”ってなんだよ。歌声じゃないのかよ。

 ウジ吉挨拶
 「わたし、いつかブラとパンティ穿けるようになって戻ってくるわ。………あれ? わたし戻ってきてローゼに何するの? 意味ないじゃん」
 手足も胸も腰もないんだから、穿くこと自体に意味ないじゃん。

 パーク、ウジ吉にランデブー。
 「そんなお前だからこそ、いつか脱げるようになった下着に価値があるんだ」
 「嬉しい、パーク様」
 絡み合って何してんだよ気持ち悪い。あ! あ! パークお尻から侵入試みられているぞ。
 「わたし生まれ変われる気がするの」
 寄生するだけですやん。
 エミリア「でもいつも漏らしてんだから、すぐ出てきちゃうのでは?」
 「ああ、そうさ」とパーク。
 もしかして経験済み?
 「お前ら、気がついていなかったのか?」
 「何が?」とローゼそう言って、エミリアと顔を見合す。
 「初めて会った時も、この間会った時も、俺の漏らした粉砕処理してドロドロに溶かした後、脱水し損ねた元食物の中でぐっすりんこだったんだぜ」
 敢えて汚い言い回しで言うなよ。間違いではないけれど。それよりマジか? ルイスの時脱糞シーンなかったけれど。
 パーク「あの馬糞、俺の馬糞なんだぜ」と自信満々。
 馬糞出せるってどういうことよ。何食ってどう処理したら、人糞にならずに馬糞になって出てくるんよ。
 「もう良いわ、一番近い村までも大分距離があるから、陽が暮れないうちに帰んなさいよ」とローゼへきへき。
 なんか得る物がない時間でした。


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