DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第八十二話 特殊設定発覚? 魔女っ娘おじさん

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 「ああーっ!」とエミリア。「パパぁ!」と叫んで塔から飛び降りた。涙を浮かべて歩み寄るエミリアは、堪らず駆けだしてそばで膝をつき、竜殺紳士の頭を抱きあげる。 
 「パパ……」
 「ああ……」と身を起こした竜殺紳士「エミリア、ばれてしまったか」
 竜殺紳士改め、アルフレッド・ワトソンが爽快に笑った。
 「パパ、パパ、ようやく会えたのね、パパ」
 股間の欠片を片手で押さえて立ち上がるアルフレッド。涙を浮かべて何度も「パパ」と繰り返すエミリアは、大粒の涙をボロボロと流しながら父親に抱きつく。
 「どうして、どうして突然姿を消したの? パパ!」
 「ごめんよ、エミリア」
 なに微笑ましい再会演出してんだよ。お前ら離れんなよ。今アルフレッドは両手でエミリア抱きしめているから、股間の欠片下に落ちてるはずだかんな。いや、落ちてないぞ。体が密着しているから、二人の間に欠片挟まっててまだ落ちていない。
 大泣きするエミリアが、パカスカとアルフレッドを叩いて叫ぶ。
 「全然気がつかなかった。どうして教えてくれなかったの?」
 「いや、エミリアの成長を見るのが嬉しくてね。どれだけ強くなったのか知りたくて、つい黙っていてしまったのだよ」
 顔面丸出しでなぜ気がつかない? よくある魔法少女系の漫画じゃないんだから。ほら、変身したら知り合いでも顔分からなくなるやつ。仮面しているわけじゃないのに。普通分かるでしょ。
 ローゼは、あることを思い出した。
 「そうだエミリア、自分で何言っていたか覚えてる? お風呂の話。『娘の風上には置けません』って言ってたけれど、自分のことね」
 「いやー、若気の至りってやつですよ。あははー」
 「『ひどい娘がいるものだ』って言ってたよね」
 「まあ、子供がしでかしたことですから、可愛いもんですよ。ね、パパ」
 「うむ、わしの皮かむりはもう一生治らないだろうがな」
 「忘れられない子育ての思い出だもんね」
 「うむ、確かに」
 「ぱぱ♡」
 エミリアは、おもむろにアルフレッドの手を握ってほほ笑んだ。
 「何だ、エミリア?」
 「ハルマゲドン後のわたしの行く末を考えてくれていて、ありがとう」
 「当り前じゃないか。私が着ていたツノだって、実際はお前のために作ったんだからな」
 「それなのに、あの偽ボインに砕かれて、ホントやになっちゃいますよね」
 なんだよ、めちゃ当てこすり。輿に担いだのエミリアじゃんか。
 「ほんと最悪、ローゼさんのせいで親子の再会台無しですよ」
 エミリアに冷たい視線を送られたローゼが反論した。
 「全然顔気がつかなかったやつの言うこと? わたしがツノ砕かなかったら、あんた気付かないまま、ここ後にしてたよね?」
 「あのー」とさらわれた人たちがやって来て言った。
 「感動的な親子の再会中申し訳ないんですけどー……我々は帰っていいんでしょうね?」
 「え、何で?」とエミリアが頓狂な声をあげて続ける。
 「あなたたちは、ハルマゲドンの時人間の盾になるためにここに集められたんですよ。その使命を果たしてもらわないと」
 何言ってんだよ、エミリア。そんなこえーことケロッと言うなよ。
 「パパの星屑の剣使って斬り殺せば霊魂ごと霊力が手に入るから、それを撃ち放ってラスボスを倒すんですよ」
 えげつねーな。物語に出てくる魔王(魔界の悪魔ではなく、人間界出身で魔王を名乗った者)だってやったことないよ、そんなこと。それ人間やめますか? なみの発言ですよ。
 「でも、大きさ一目で丸わかりですから、支配しやすいじゃないですか」
 何の話してんだよ。星屑の剣関係ないじゃんか。それとんがりパンツの話ですよね。
 「まあ、それメインですからね」
 ちげーよ。少なくとも、そこに焦点当ててんのエミリアだけだよ。
 「そうでしたっけ?」とエミリアが首を傾げる。
 突然「いや、俺もいるぜ」と声が聞こえて、みんなが振り向く。
 そうだ、コイツを忘れてた。パーク・ヨードン。うんこのイメージが強いけれど、コイツもなんか小学生みたいに、その単語に反応するんだ。
 「何で戻ってきたのよ。彼女さんたちはどうしたの?」
 ローゼはため息をついてそう訊いた。
 「懐かしくなってな」
 何が?
 「ここのゴーレムさ」
 お前か反乱の首謀者か?
 「違う。軍人時代、俺が倒したんだ」
 嘘つけ。ゼッテー信じねー。
 「嘘ではないぞ」とアルフレッドがフォローを入れた。
 「知っているのですか? ジェイスター卿(ワトソン家の領地)」
 なんかパークのやつめっちゃ敬語。
 「当り前だ。ジェイスター卿はウェールネス公国が誇る伝説の将軍だからな」 
 「ジェイスター卿アルフレッド・ワトソン……あっ」
 言って気がついたローゼも敬語になった。アルフレッドはこの地域最強の将軍だ。彼一人でロッツォレーチェの数師団を全滅させた逸話がある。
 ウェールネス公国は争いが絶えない東の亜大陸にあって、二つの大国に隣接している。度々戦争になるにもかかわらず近年一度も敗戦を経験していないのは、ひとえにアルフレッドのおかげである。
 ローゼは、エミリアの出自に混乱した。
 「てことは、エミリアって侯爵家のご令嬢?」
 「まあ、そう言うことになりますね」
 めっちゃ得意げ、キツネ顔。こいつ一代男爵家って嘘つきやがった。
 「マジか、でもそういうことか」
 ローゼが思い出すと、今回の旅は度々無一文になるジェットコースター旅行。それなのに、なぜかエミリアだけは無一文にならない。それもそのはず、町にある銀行に届くお金を受け取っていたからだ。エミリアは旅の道中度々実家に手紙を書いていた。その手紙にいつどこに到着すると書いてお小遣いをねだっておけば、実家は行き先にある銀行にお金を送金してくれるってわけ。聞いて納得、そういうことか。
 ローゼは、色々なことを思い起こした。
 「知っていれば、無一文があんなにストレスじゃなかったのに」とローゼがブーブー言う。
 「わたしはストレスレスでしたよ」両手で後頭部を抱えて、足を4の字に組んだエミリアが、舌で口内を押して頬を膨らませて、不躾に言った。
 「そりゃそうよ、お金が送られてくること知っているんだから」
 「違いますよ、借金まみれのぼろきれ雑巾を間近で観察できたからですよ」
 胸の前で腕を組んでキツネ顔。ニンマリ笑うエミリアを見て、ローゼの中に沸々と怒りがこみ上げてきた。
 「しかしローゼ、竜殺紳士は見つけたのか?」とパーク。
 「は?」
 「ジェイスター卿がご一緒してくだされば、さすがの竜殺紳士とはいえ、我々には勝てないさ」
 マジか? パークも分かってないの? 
 「竜殺紳士ってどんなやつ?」ローゼが訊く。
 「ああ、ブラックドラゴンのツノで作ったパジャマ着ているやつだ」
 あれパジャマかよ。絶対寝にくいよ。
 「お休みハットも作るって言ってたな」
 睡眠妨害だよ。
 「パジャマでドラッグストアとか行くんだぜ、信じらんねーよな」
 女の下着だけつけて牛丼屋に行く男の方が信じられん。
 「髪型は?」「七三」「どんな顔立ち?」「目は黒目しかなくて、口髭生やしていて、身長は――お前らくらいだな。そういえば眉毛は濃いめだ」
 そこまではっきり描写できて、何故分からん。分かるわたしがおかしいの?



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