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第八十九話 肉を切らせて骨を断つ
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第六幕 戦場で海に浮かぶ船に掲げられた扇子を射落としたと思い込んでいるスリングショット
「パチンコ?」言ってローゼは一瞬ゾクッとした。三人して辺りを見渡す。誰もいなくてホッとする。
気を取り直した佐間之介が「馬鹿者。これはパチンコなどというおもちゃじゃなくて――」言って一瞬ゾクッとした。三人して辺りを見渡す。誰もいなくてホッとする。
「――スリングショットという武器なのだ」
そう言って急に一歩さがった佐間之介、ローゼに狙いを定めて射かけてきた。
「危ない!」と避けるローゼ。
「ぬ? なかなかすばしっこい。だが次はどうだ。喰らえ」
「あだっっ」
今度は命中。続く三発目はレイピアで斬り落とされた。
「あ、これお豆ですよ。ローゼさん」エミリアが拾ってくんくん匂いを嗅いだ。
「豆~?」と濁点がつくような声で訝しげにローゼが唸る。そして「どうせ――」と言いながらお豆を拾い上げた。「このお豆を育てたら、雲より高く成長して巨人の国に行けるって言うんでしょ?」
「それって、攻撃になりませんよ」エミリアほよよん。
するとローゼは、「これを人目掛けて撃ち込めば、お豆が肌に根付いて絞殺されるの」と肩にレイピアを担いで投げやりに言った。
瞬時に「違う!」と否定する佐間之介。「太古の戦場で海に浮かぶ船に掲げられた扇子を射落としたと伝わる伝説の武器なのだ」
「へー」と二人は無関心。
「幾つか紀元を遡る遠い昔、ジパングを真っ二つに分けた戦いがあった。圧倒的な数を誇っていて慢心していた赤き流れ旗(識別旗)の大軍勢は、突如として現れたスリングショットを装備した白き流れ旗の軍勢に包囲されて、四方八方から射かけられて大敗走した、と言う大いくさがあった。その時、からくも海上に逃れた彼らが、船に扇子を掲げ、追っ手をバカにして『射ぬけるものなら射てみよ』と挑発した、と記録された古文書が残っておる。
それによると、白き流れ旗を掲げる追手側の大将が腕に覚えのある者を募ったところ、たった一人だけ手をあげる武者がいる。大将がその武者に任せてみたところ、見事扇子を射抜いて落としてみせた、という逸話だ」
「なんか負けた方なのに、船の積み荷多いですね」
エミリアがそう言うのでローゼが佐間之介の想像を見やると、確かにすごい山積み。
「なんだろ、あの塊」
佐間之介が見やって解説。
「俵だな」
「俵?」
「穀物を入れるのだ。こっちで言うと麻袋とかだろうかな」
何が入っているのか気になってズームイン。ワラの隙間からこぼれるお豆。
「分かった」とローゼが手のひらでぽんっ、とする。
「敵の放ったお豆を拾い集めて帰るんだわ」
「よく見ると、すごいばかにした感じにお礼してます」とエミリアが指摘。
「確かに」と見やるローゼ。どっちが負けたんだか……「――て言うか、想像上の浜辺と扇子の距離凄過ぎない?」
それを聞いて、遠くに向かってお豆を発射する佐間之介。でも全然飛ばない。
「がびーん」
「何ハトが豆鉄砲くらったような顔してるのよ」と言うローゼに、
エミリア「うまいっ」
動揺隠しきれない佐間之介の頬に一筋の汗。
「ま、まあ、古いものだからな。威力が保てていなくても当然だ」
諦めないやつ。
佐間之介からスリングショットを受け取ったローゼがマジマジ見る。これ子供のおもちゃ?
ただの木の枝に紐つけただけ。
「どこで手に入れたんですか?」とエミリアが訊くと、佐間之介は自慢げに語り出す。
「これは、とあるポリス(ペトラキオアスの城壁都市)の子供部屋で見つけたのだ」
「空き巣?」(エミリア)
「違う、開いていた窓からたまたま見えたの。それを家の者に無理に頼み込んで、金貨三十枚で譲ってもらったのじゃ」
おもちゃに三十枚?
「掘り出し物だ。もしオークションで買おうものなら、延べ棒何十本あっても買えんだろうな」
「ふーん」と言いながら紐を引っ張るエミリア。いきなりバキッ、音がした。
「ああッッッ‼‼‼ 何てことするんだ」とアゴが外れる佐間之介。
「あら~、もういらない」
ぺいっ、と捨てるエミリア、ローゼに向かってニコニコしてる。
走っていって拾う佐間之介、「至極の宝器が……」ぎろりとエミリアを睨みつける。「もう許さん、そこになおれーい」
エミリアはローゼの後ろにササッと隠れた。
「お前からか、赤毛の‼‼」
「いや、わたし何も――」
佐間之介すごい剣幕。巻き込まれたローゼ、エミリアを引き出そう、と悪戦苦闘。でもマントの中から出てこない。
「どうしてこーなるの?」
ローゼの吐いた溜息には、諦めの気持ちがこもっていた。
「パチンコ?」言ってローゼは一瞬ゾクッとした。三人して辺りを見渡す。誰もいなくてホッとする。
気を取り直した佐間之介が「馬鹿者。これはパチンコなどというおもちゃじゃなくて――」言って一瞬ゾクッとした。三人して辺りを見渡す。誰もいなくてホッとする。
「――スリングショットという武器なのだ」
そう言って急に一歩さがった佐間之介、ローゼに狙いを定めて射かけてきた。
「危ない!」と避けるローゼ。
「ぬ? なかなかすばしっこい。だが次はどうだ。喰らえ」
「あだっっ」
今度は命中。続く三発目はレイピアで斬り落とされた。
「あ、これお豆ですよ。ローゼさん」エミリアが拾ってくんくん匂いを嗅いだ。
「豆~?」と濁点がつくような声で訝しげにローゼが唸る。そして「どうせ――」と言いながらお豆を拾い上げた。「このお豆を育てたら、雲より高く成長して巨人の国に行けるって言うんでしょ?」
「それって、攻撃になりませんよ」エミリアほよよん。
するとローゼは、「これを人目掛けて撃ち込めば、お豆が肌に根付いて絞殺されるの」と肩にレイピアを担いで投げやりに言った。
瞬時に「違う!」と否定する佐間之介。「太古の戦場で海に浮かぶ船に掲げられた扇子を射落としたと伝わる伝説の武器なのだ」
「へー」と二人は無関心。
「幾つか紀元を遡る遠い昔、ジパングを真っ二つに分けた戦いがあった。圧倒的な数を誇っていて慢心していた赤き流れ旗(識別旗)の大軍勢は、突如として現れたスリングショットを装備した白き流れ旗の軍勢に包囲されて、四方八方から射かけられて大敗走した、と言う大いくさがあった。その時、からくも海上に逃れた彼らが、船に扇子を掲げ、追っ手をバカにして『射ぬけるものなら射てみよ』と挑発した、と記録された古文書が残っておる。
それによると、白き流れ旗を掲げる追手側の大将が腕に覚えのある者を募ったところ、たった一人だけ手をあげる武者がいる。大将がその武者に任せてみたところ、見事扇子を射抜いて落としてみせた、という逸話だ」
「なんか負けた方なのに、船の積み荷多いですね」
エミリアがそう言うのでローゼが佐間之介の想像を見やると、確かにすごい山積み。
「なんだろ、あの塊」
佐間之介が見やって解説。
「俵だな」
「俵?」
「穀物を入れるのだ。こっちで言うと麻袋とかだろうかな」
何が入っているのか気になってズームイン。ワラの隙間からこぼれるお豆。
「分かった」とローゼが手のひらでぽんっ、とする。
「敵の放ったお豆を拾い集めて帰るんだわ」
「よく見ると、すごいばかにした感じにお礼してます」とエミリアが指摘。
「確かに」と見やるローゼ。どっちが負けたんだか……「――て言うか、想像上の浜辺と扇子の距離凄過ぎない?」
それを聞いて、遠くに向かってお豆を発射する佐間之介。でも全然飛ばない。
「がびーん」
「何ハトが豆鉄砲くらったような顔してるのよ」と言うローゼに、
エミリア「うまいっ」
動揺隠しきれない佐間之介の頬に一筋の汗。
「ま、まあ、古いものだからな。威力が保てていなくても当然だ」
諦めないやつ。
佐間之介からスリングショットを受け取ったローゼがマジマジ見る。これ子供のおもちゃ?
ただの木の枝に紐つけただけ。
「どこで手に入れたんですか?」とエミリアが訊くと、佐間之介は自慢げに語り出す。
「これは、とあるポリス(ペトラキオアスの城壁都市)の子供部屋で見つけたのだ」
「空き巣?」(エミリア)
「違う、開いていた窓からたまたま見えたの。それを家の者に無理に頼み込んで、金貨三十枚で譲ってもらったのじゃ」
おもちゃに三十枚?
「掘り出し物だ。もしオークションで買おうものなら、延べ棒何十本あっても買えんだろうな」
「ふーん」と言いながら紐を引っ張るエミリア。いきなりバキッ、音がした。
「ああッッッ‼‼‼ 何てことするんだ」とアゴが外れる佐間之介。
「あら~、もういらない」
ぺいっ、と捨てるエミリア、ローゼに向かってニコニコしてる。
走っていって拾う佐間之介、「至極の宝器が……」ぎろりとエミリアを睨みつける。「もう許さん、そこになおれーい」
エミリアはローゼの後ろにササッと隠れた。
「お前からか、赤毛の‼‼」
「いや、わたし何も――」
佐間之介すごい剣幕。巻き込まれたローゼ、エミリアを引き出そう、と悪戦苦闘。でもマントの中から出てこない。
「どうしてこーなるの?」
ローゼの吐いた溜息には、諦めの気持ちがこもっていた。
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