DEVIL FANGS

緒方宗谷

文字の大きさ
108 / 113

第百八話 エピローグ

しおりを挟む
 長きにわたる激戦に、ついに終止符が打たれた。負けたルイス軍(ルイス除く)はさも当然、と荷物をまとめて帰る準備。だって過去戦績全戦全敗、勝った経験一切Zero。
 悪魔牙団の団員たちは、戦利品とばかりに奪い取った物資(横流し用)を使って、兵士やマフィアを交えて別れの酒盛りを始めていた。
 剣下手とはいえ、そこそこ訓練していたルイスの猛攻を相手にして心身ともにすり減らしたローゼは、その場にへたり込んだ。「ローゼさーん」と名前を呼んで駆け寄るエミリアに微笑み返すだけで精一杯。エミリアの後ろからやってくる牙たちには、アイコンタクトだけしか出来なかった。
 何やら興奮して延々とまくしたてるエミリアの後ろまでやってきたアンドレイが、「そう言えば――」と思い出したように言った。「お前、刀剣市に来たんだってな。あれ――いつまでだっけ?」
 すると、隣のオントワーンが答えて言う。
 「二十七日までだから、もうそろそろじゃないですか?」
 それを聞いて慌てるローゼ。「ちょっと、そういうことは早く言ってよね!」と叫んで荷物(物資からワインを失敬して)をまとめて馬鞍のカバンに入れる。
 「あーあ」とため息をつくエミリア。「せっかく気がついていなかったのに」
 それでか、まくしたててたの。よくよく思い出してみると、「ゆっくり休め」だのなんだの引きとめるようなことばかり言っていたな。
 エミリア置いていかれそう。急いで荷造り、追いかける。
 「あっ、待ってくださいローゼさん。わたしも一緒に足引っ張りに行きますから」
 二十九万文字超過無駄にする気なんですか?
 「ちょっとどいてどいて~」と階段に並ぶ列に馬で割り込むローゼ。そのまま列の兵士を押しのけて、無理やり階段を駆け下りていく。
 馬で兵士を轢き倒しながらローゼを追いかけるエミリア。ローゼの気遣い全部台無し。ルイス不在で兵士の命ダイジョブですか? Yes good job! と言えたらいいなぁ、とだけ言っておきたい。
 空は夕焼け色に染まり始めて久しい。辺りには気温が下がるのを待っていた羽虫が飛び交い、草の根からは虫の音色が響いている。たぶんローゼは、日没までに下界に下りきることは叶わないだろう。
 階段のそばまで歩み寄って、ローゼを見送る牙の面々。それぞれに心の中で賞讃と送迎の言葉をかける。そしてやや間があって、アンドレイの指示でカレンダーを見に行っていたパークの部下(アンドレイの部下は既にガス殺されている)が戻ってきて言った。
 「今日二十六日っす」
 「着いた頃にはもう終わっているな」とアンドレイ。
 「終わっていますね」とオントワーン。
 「…………」何も答えないパーク。今見てきたところによると、露店の店先に良いものは殆どないものの、まだ商売はなされている。五掛け三掛け(5割7割引き)当たり前。
 次のセリフ、アンドレイの番。
 「ローゼリッタのやつ、別れの挨拶もせずに慌ただしいやつだったな」
 「でも、ボケ倒してつっこませるのは面白かったなぁ」と振り返るパーク。
 「俺は心残りがありますよ」とオントワーン。
 訊くと、ヒューマンレザーのアーマーを着せてからつっこませたかった、とのこと。
 「また来てほしいッスね」とパークが続ける。
 「ああ」と答えるアンドレイ「ああいうバカやってくれる剣士には、そうそうお目にかかれないからな」
 遠くからローゼの声が響いて木霊する。
 「「「あ~~~~~! お願いだから間にあって~~~~~‼‼‼」」」「「――あって~」」(木霊)「――あって~」(木霊) “――あって~”(木霊) あって~(木霊)
 三人は感慨にふけりながら、ローゼの背中が見えなくなるまでしみじみと見送った。

 ちゃらら~~~ ちゃ~ちゃ~ちゃ~~ ジャ~~~~ンンン~

 フェード暗転 幕 みんなで拍手

 明るくなってもオーディエンス(団員たち)は拍手喝采。コンフェティの雨あられ。スタンティングオベーション鳴りやまない。終いにウェーブが何度も起こる。

 大団円だ。団員たちが口々に牙たちを労う。
 「お疲れ様した~」「お疲れでーす」「お疲れしたっ」


 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...