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第百八話 エピローグ
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長きにわたる激戦に、ついに終止符が打たれた。負けたルイス軍(ルイス除く)はさも当然、と荷物をまとめて帰る準備。だって過去戦績全戦全敗、勝った経験一切Zero。
悪魔牙団の団員たちは、戦利品とばかりに奪い取った物資(横流し用)を使って、兵士やマフィアを交えて別れの酒盛りを始めていた。
剣下手とはいえ、そこそこ訓練していたルイスの猛攻を相手にして心身ともにすり減らしたローゼは、その場にへたり込んだ。「ローゼさーん」と名前を呼んで駆け寄るエミリアに微笑み返すだけで精一杯。エミリアの後ろからやってくる牙たちには、アイコンタクトだけしか出来なかった。
何やら興奮して延々とまくしたてるエミリアの後ろまでやってきたアンドレイが、「そう言えば――」と思い出したように言った。「お前、刀剣市に来たんだってな。あれ――いつまでだっけ?」
すると、隣のオントワーンが答えて言う。
「二十七日までだから、もうそろそろじゃないですか?」
それを聞いて慌てるローゼ。「ちょっと、そういうことは早く言ってよね!」と叫んで荷物(物資からワインを失敬して)をまとめて馬鞍のカバンに入れる。
「あーあ」とため息をつくエミリア。「せっかく気がついていなかったのに」
それでか、まくしたててたの。よくよく思い出してみると、「ゆっくり休め」だのなんだの引きとめるようなことばかり言っていたな。
エミリア置いていかれそう。急いで荷造り、追いかける。
「あっ、待ってくださいローゼさん。わたしも一緒に足引っ張りに行きますから」
二十九万文字超過無駄にする気なんですか?
「ちょっとどいてどいて~」と階段に並ぶ列に馬で割り込むローゼ。そのまま列の兵士を押しのけて、無理やり階段を駆け下りていく。
馬で兵士を轢き倒しながらローゼを追いかけるエミリア。ローゼの気遣い全部台無し。ルイス不在で兵士の命ダイジョブですか? Yes good job! と言えたらいいなぁ、とだけ言っておきたい。
空は夕焼け色に染まり始めて久しい。辺りには気温が下がるのを待っていた羽虫が飛び交い、草の根からは虫の音色が響いている。たぶんローゼは、日没までに下界に下りきることは叶わないだろう。
階段のそばまで歩み寄って、ローゼを見送る牙の面々。それぞれに心の中で賞讃と送迎の言葉をかける。そしてやや間があって、アンドレイの指示でカレンダーを見に行っていたパークの部下(アンドレイの部下は既にガス殺されている)が戻ってきて言った。
「今日二十六日っす」
「着いた頃にはもう終わっているな」とアンドレイ。
「終わっていますね」とオントワーン。
「…………」何も答えないパーク。今見てきたところによると、露店の店先に良いものは殆どないものの、まだ商売はなされている。五掛け三掛け(5割7割引き)当たり前。
次のセリフ、アンドレイの番。
「ローゼリッタのやつ、別れの挨拶もせずに慌ただしいやつだったな」
「でも、ボケ倒してつっこませるのは面白かったなぁ」と振り返るパーク。
「俺は心残りがありますよ」とオントワーン。
訊くと、ヒューマンレザーのアーマーを着せてからつっこませたかった、とのこと。
「また来てほしいッスね」とパークが続ける。
「ああ」と答えるアンドレイ「ああいうバカやってくれる剣士には、そうそうお目にかかれないからな」
遠くからローゼの声が響いて木霊する。
「「「あ~~~~~! お願いだから間にあって~~~~~‼‼‼」」」「「――あって~」」(木霊)「――あって~」(木霊) “――あって~”(木霊) あって~(木霊)
三人は感慨にふけりながら、ローゼの背中が見えなくなるまでしみじみと見送った。
ちゃらら~~~ ちゃ~ちゃ~ちゃ~~ ジャ~~~~ンンン~
フェード暗転 幕 みんなで拍手
明るくなってもオーディエンス(団員たち)は拍手喝采。コンフェティの雨あられ。スタンティングオベーション鳴りやまない。終いにウェーブが何度も起こる。
大団円だ。団員たちが口々に牙たちを労う。
「お疲れ様した~」「お疲れでーす」「お疲れしたっ」
悪魔牙団の団員たちは、戦利品とばかりに奪い取った物資(横流し用)を使って、兵士やマフィアを交えて別れの酒盛りを始めていた。
剣下手とはいえ、そこそこ訓練していたルイスの猛攻を相手にして心身ともにすり減らしたローゼは、その場にへたり込んだ。「ローゼさーん」と名前を呼んで駆け寄るエミリアに微笑み返すだけで精一杯。エミリアの後ろからやってくる牙たちには、アイコンタクトだけしか出来なかった。
何やら興奮して延々とまくしたてるエミリアの後ろまでやってきたアンドレイが、「そう言えば――」と思い出したように言った。「お前、刀剣市に来たんだってな。あれ――いつまでだっけ?」
すると、隣のオントワーンが答えて言う。
「二十七日までだから、もうそろそろじゃないですか?」
それを聞いて慌てるローゼ。「ちょっと、そういうことは早く言ってよね!」と叫んで荷物(物資からワインを失敬して)をまとめて馬鞍のカバンに入れる。
「あーあ」とため息をつくエミリア。「せっかく気がついていなかったのに」
それでか、まくしたててたの。よくよく思い出してみると、「ゆっくり休め」だのなんだの引きとめるようなことばかり言っていたな。
エミリア置いていかれそう。急いで荷造り、追いかける。
「あっ、待ってくださいローゼさん。わたしも一緒に足引っ張りに行きますから」
二十九万文字超過無駄にする気なんですか?
「ちょっとどいてどいて~」と階段に並ぶ列に馬で割り込むローゼ。そのまま列の兵士を押しのけて、無理やり階段を駆け下りていく。
馬で兵士を轢き倒しながらローゼを追いかけるエミリア。ローゼの気遣い全部台無し。ルイス不在で兵士の命ダイジョブですか? Yes good job! と言えたらいいなぁ、とだけ言っておきたい。
空は夕焼け色に染まり始めて久しい。辺りには気温が下がるのを待っていた羽虫が飛び交い、草の根からは虫の音色が響いている。たぶんローゼは、日没までに下界に下りきることは叶わないだろう。
階段のそばまで歩み寄って、ローゼを見送る牙の面々。それぞれに心の中で賞讃と送迎の言葉をかける。そしてやや間があって、アンドレイの指示でカレンダーを見に行っていたパークの部下(アンドレイの部下は既にガス殺されている)が戻ってきて言った。
「今日二十六日っす」
「着いた頃にはもう終わっているな」とアンドレイ。
「終わっていますね」とオントワーン。
「…………」何も答えないパーク。今見てきたところによると、露店の店先に良いものは殆どないものの、まだ商売はなされている。五掛け三掛け(5割7割引き)当たり前。
次のセリフ、アンドレイの番。
「ローゼリッタのやつ、別れの挨拶もせずに慌ただしいやつだったな」
「でも、ボケ倒してつっこませるのは面白かったなぁ」と振り返るパーク。
「俺は心残りがありますよ」とオントワーン。
訊くと、ヒューマンレザーのアーマーを着せてからつっこませたかった、とのこと。
「また来てほしいッスね」とパークが続ける。
「ああ」と答えるアンドレイ「ああいうバカやってくれる剣士には、そうそうお目にかかれないからな」
遠くからローゼの声が響いて木霊する。
「「「あ~~~~~! お願いだから間にあって~~~~~‼‼‼」」」「「――あって~」」(木霊)「――あって~」(木霊) “――あって~”(木霊) あって~(木霊)
三人は感慨にふけりながら、ローゼの背中が見えなくなるまでしみじみと見送った。
ちゃらら~~~ ちゃ~ちゃ~ちゃ~~ ジャ~~~~ンンン~
フェード暗転 幕 みんなで拍手
明るくなってもオーディエンス(団員たち)は拍手喝采。コンフェティの雨あられ。スタンティングオベーション鳴りやまない。終いにウェーブが何度も起こる。
大団円だ。団員たちが口々に牙たちを労う。
「お疲れ様した~」「お疲れでーす」「お疲れしたっ」
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