DEVIL FANGS

緒方宗谷

文字の大きさ
110 / 113

第百十話 続・最終話 総括

しおりを挟む
 この一カ月近い長旅の中で、相当なうっぷんがたまっていたローゼは、報告とばかりに言いたい放題ぶちまける。
 「かくかくじかじか、紆余曲折あって、あれこれあれこれ、どれそれあって、なんたらかんたらウンタラクンタラらんたった―――てなもんですよ」
 「ふーん」とヨーゼフ「まあ、通商手形取り戻せなかったんだから、残りのお金は払えないよ」
 「えー何でですかぁ? でも盗ったの別の盗賊団だったんですよ。取ってなかったんだから完遂でいいでしょう?」
 「だめ、盗ってなかったって証明できてないもん」とヨーゼフ頑な。
 「散々探しましたよ」と食い下がるローゼ。
 「つーか――」と中年男が引き継いで言う。「君、誰にも勝ってないよね」
 「はぁ? 何言ってんですか? 全戦全勝でしたからっ!」
 ローゼの記憶をプレイバック。
 「パーク・ヨードン戦を見てみよう」とヨーゼフが言って初めから振り返る。
 中年男「なんか、昔話聞かされてうやむやになってない? しかも牛丼ご馳走になってるし」
 「うっ」とローゼは言葉に詰まった。
 「次のダーククウォーターエルフとなんかひどいよね」とヨーゼフがつっこむ。
 「ほんとですな。オントワーン自ら斬られにいってますよ」中年男が付け加えた。
 「これは、わたしのレイピアさばきが凄すぎて、ああ斬られざるを得なかったんですよ」
 「すごい言い訳ね」とヨーゼフぽつり。
 ローゼ「すっごい悪魔みたいなやつらもいたんですよ」と敵の強さを猛烈アピール。
 「雑魚ジャン。皮剥がされた負け犬じゃん」と中年男意に介さない。
 ヨーゼフが次のアンドレイ戦にちゃちゃをいれる。
 「完全にボディビルショーだよね。独り舞台じゃん」
 「いい汗かかれてますよ」とエミリアが割って入って「もう“ウォーミングアップできました”って感じですね」
 「お前仕事してないじゃん」と中年男が呆れ顔。続けて「キャンプファイアーして飯食って帰って来ただけじゃないの?」
 ヨーゼフが被せて追い打ちかます。
 「うやむやじゃんよ。作者だって三回読んで、ようやく気付いたくらいじゃないの?」
 「まさか、そう言うセリフありましたよ」
 そう言ってリプレイしようと記憶を捻るローゼに時間を与えず、ヨーゼフが更に言った。
 「じゃあ、百歩譲って忘れていたよね、絶対」
 「はい」どこからともなく声がする。
 「『はい』じゃねーよ。答えるなよ世界の外から」
 ローゼが天に向かってこぶしを上げて振り回し、大きな声で怒鳴りつけた。
 「次行ってみよう」と中年男が先に行く。
 エルザ・ブラウンが登場すると、間髪入れずに中年男が言った。
 「何でお連れしなかったんだよ」
 なに目的だよ。
 「縛られ目的に決まってんだろ」
 ヨーゼフ、なんか息荒くして言う。
 「わしゃ、もう年だから、ソフトなやつにしてもらいたいね」
 ローゼそれガン無視して、「見てわたしの強さ」と指さした。「勇猛果敢に突進して、とどめの一撃ですよ」
 中年男が「嘘つけ」と言うと、ヨーゼフが続ける。
 「突進とめられてるよね。しかも偶然アイマスクが落ちただけじゃん」
 加えて中年男「よく見ると、エルザ様はエミリアさんと遊びながら、あんたのお相手しているよね。もう余裕しゃくしゃくじゃん」
 長老「そういえばアンドリュー、どうなったの?」
 「え?  知りませんけど」
 そう言うローゼに、エミリアが答える。
 「激しい馬走の末に、今は松の木折りに落ち着いて、第三子を妊活中らしいですよ」
 子供いたんかよ。聞きたくないよ、そんな情報。何で知ってんだよ。
 「エルザさんから聞きました」
 あいつ、結構面倒見良いよな。まさか二人揃って入信してんじゃ……。
 「次のホロヴィッツとの戦いを見てくださいよ」とローゼが言って、変なヒルとの戦いはすっ飛ばして、怒涛の突き連打から普通再生。
 確かにすごい、とヨーゼフたちは息を飲む。なんとかあらを探して物言いつけねば、ともう必死。
 そこにエミリアが助け舟。 
 「こんなに〈大きなヒル〉なっても全然魔力減っていないんですよー」
 「じゃあだめじゃん」と言いながら、中年男が親指を立てる。グッジョーブ。応えてエミリアも親指を立てる。
 中年男は続けて言った。
 「回復が追いついていないだけで、全然ダメージ与えてないんだろ? あのまま続けていたら、あんたさんの方が疲れていつか負けちゃってるよ」
 「そんなことありません」ローゼ、シラを切る。
 「でも――」とエミリアがローゼの言葉を遮って言う。「わたしが霊撃でラッシュしても結局ケロッと復活してました」
 「だろ?」「だな」(ヨーゼフ&中年男)「でしょ」(エミリア)
 「でも、エミリアの攻撃で、アイツ死にかけてましたから」ローゼ譲んない。
 「魔力は減っていませんでしたよ」と食い下がるエミリア。
 とことん敵だな。
 ここでヨーゼフが畳みかけてきた。映像はおむつジジイとの一戦に差し掛かったところだ。
 「いたいけない老人に何たる悪行! もうやらん! 銭なんかびたワンチップやらん」
 「いやいやいやいや、悪党ですよ」とローゼは言い訳するが、ヨーゼフは「もう引退したんだから、ただの爺様ですよ」と全否定する。そして続けて言った。
 「しかも負けてんじゃん。すたこらさっさって逃げてんじゃん」
 「それは――」
 「それでもどれでもだめだからね。しかも役所からもらったオムツまで奪って、老人しいたげるにもほどがある」
 「それはクラゲ野郎退治のために……」
 「そのクラゲ野郎だって、おむつの吸水性のおかげだかんね。あんたのおかげ違うからね」
 ローゼは、おむつの話に戻して、“おむつジジイがくれると言ったのだ”と言おうとしたが、ヨーゼフは強引に次の話に進ませていく。
 しかし、映像をスキップしていた中年男が、おもむろに巻き戻した。 
 「しかもクラゲ食ってお腹壊さないの?」
 「だいじょぶでしたよ。とても美味しかったです」
 繰り返し繰り返し、ローゼとエミリアの水着姿を見返すエロオヤジ&エロジジイ。
 「良い目の保養ですな、長老」
 「そうじゃな、名無しの」
 もしかして“名無し”が名前ですか? 
 エロ厳禁。バコッと二人を殴りつけて、ローゼ先を急ぐ。
 急に「ストープ‼‼ ストーップッ‼‼‼」と名無しがつばきまき散らして叫ぶ。
 どうしたのかと思ったら、
 「何でモザイクやねん‼‼ ここちゃんと見せんといかんとちゃうの?」
 なんでだよ。お風呂だよ。
 「何やってんだか分からんよ」とヨーゼフがフォロー。
 戦ってんだよ。
 すったもんだを繰り返しても諦めのつかない名無しをボコって、ローゼはスローリピート再生をやめさせた。このエロども、なんか細目にすると見えると思っているらしい。
 「どうせ、偶然アイマスクが落ちて逃げていったんでしょ?」とヨーゼフ、ナイス予知。
 エミリア何度も頷き大笑い。直後に実際そうなった挙句、怒られローゼのシーンだけモザイクが晴れて恥を晒す。
 ローゼ以外が抱腹絶倒悶え死ぬ。
 「もうサイテー!」とローゼが泣きを入れた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...