DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第百十一話 新・最終話 総括2

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 再生を見合わせたカトワーズ戦だったが、ローゼの思惑を察した名無しが飛ばした頭から再生し直す。
 「もうだめじゃん」とヨーゼフが呆れる。「もうコントやってんじゃん。しかも生着替え全部モザイク。ちょっとサービス頼みますよ」
 「こういうの、薄くは出来ないものですかね」と注文を出す名無し。
 「手も足も出てないじゃん」と、ヨーゼフがため息をついた。
 「でも見てくださいよ」ローゼ、つなぎとめようと必死にすがる。「――ほら、わたしの俊敏なフットワークで、カトワーズを縛り上げたんですよ」
 「クラゲのおかげだろ?」と言ってクラゲ野郎を指さすヨーゼフ。「なんかクラゲから巻きついてるよ」とローゼに言った。
 「何言ってんですか! もう死んでますから。勘違いです。白内障と緑内障です」
 「ひどいことサラッと言うなぁ」
 名無しが「まあ、これも勝ててないですね」と言って説明し出した。
 「マーキン様の侍従の人たち、みんな平然としてますよ。こんなんじゃ負けないって確信があるんですよ」
 「だよね」と引き継いだヨーゼフ「マーキン様も乗り気で新婚旅行に出発だもんね」
 「人質ですよ」
 ローゼの一言聞き流された。長いものには巻かれろってこと。
 「なに? 君、軍人さんにまで手だしたの?」とドン引きヨーゼフ。
 「出されたんですよ。でも多勢に無勢でもこの強さです、わたし」
 「雑魚じゃん。敵の中で最弱じゃね?」
 「しかも長老、見てください」と巻き戻す名無し。
 「運頼みの男の運に翻弄され放題じゃないですか。これは負けですよ」
 「いえ、勝ちです」と言い切るローゼ。
 「いや、負けじゃよ」ヨーゼフ全否定。「――て言うか、わし巻き込まれたくないかんね。あんたにお金渡して、ウェールネス軍に目つけられるなんて嫌だかんね」
 「もう帰る」と言うヨーゼフをローゼが無理に引きとめていると、
 「次の美穂ちゃんなんだよ」と名無しが文句をつける。「この子素人じゃん、しかも年端もいかない子供じゃん」
 「でも“牙”ですよ」と、ヨーゼフをふん捕まえたローゼが言う。
 「家出少女だよ」
 「でもめっちゃすばしっこい子でした」
 「うん、手も足も出てないもんね」と納得するヨーゼフ。
 ここにモザイク入らないって、世界を司る真理どうなってんの?
 「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ」と笑い転げるローゼ以外。
 エミリア、あんたも笑われるネタの一因だからね。
 「見てください!」とローゼが仕切り直した。「わたしエルザに勝ってますよ。これがわたしの実力です。それに美穂ちゃんにも勝ちました」
 だが、名無しを出し抜けない。
 「すっ飛ばしたけど、エミリアさんと二人掛かりで勝ててないじゃん。しかも勝ったのマーキン様のおかげじゃないの? 縛られて力使えないのに」
 「うむ、マーキン様が凄いんじゃな」納得ヨーゼフ。
 名無しが続ける。
 「美穂ちゃんに勝ったって嘘ついてない? しっかり逃げられて、捕まえるだけで一週間経ってんじゃん」
 「こっち見てよ」とヨーゼフが言うので、エミリアの記憶捜索開始。
 美穂ちゃん、ローゼの知らないところでエルザに説得されて家に帰ることにしたようだ。ほとんど自分からローゼに捕まりにいっていた。
 つかエミリア、何つるんでんだよ。
 しらー…と白い目でローゼを見やるヨーゼフと名無しに、ローゼ「なはは」と笑うしかない。
 でもローゼ「次の竜殺紳士(りゅうごろしんし)戦は間違いなしの戦いです」と自信満々満ままん。ローゼの記憶にアタックイン。
 「だいたい分かるよ、ねえ長老?」と、名無し訝しげ。
 「うむ、そうだね。この星屑の剣で倒すんだろ?」
 「これ気になりません?」とエミリア。
 「どれどれ?」と長老がエミリアの指さすところを見やる。
 「なんかわたしたちの顔に青たんあるでしょ?」
 なんか映像とばされてるぞ、と気がついた名無しが巻き戻す。
 長老唖然。
 「ボッコボコじゃん。フルボッコ。完膚なきまでに大惨敗じゃん。二人掛かりで何やってんの?」
 更に気付いた名無しが指さす。
 「見てください、長老。ローゼリッタさんの歯、ギャグ漫画みたいに一本かけてますよ」
 「ほんとだ。ギャグ漫画風で良かったよね。真面目にかけてたら、今も一本ないもんね」
 「ここまでは前半戦です。本番はこれからですよ」とローゼが三十秒スキップ繰り返す。
 ツノパジャマを破壊するシーンを見て、長老たちは「ふーん」と流す。
 「だからこれ星屑の剣の力だよね?」
 そうつっこむ名無しを援護して、エミリアがおまけをおすそ分け。
 「わたしがやっても出来たでしょうね。完全無欠の剣頼りでしたから」
 「しかも、この人もウェールネスの軍人さん? 挙句、最強伝説のワトソン将軍じゃん。本当、ワシャあんたとは他人だかんね」とエンガチョーするヨーゼフ。「マーキン様とワトソン嬢がいなかったら、あんた今頃国に追われてたと思うよ?」
 「あのさぁ――」と名無し。
 「仕事と関係ないから飛ばしたけれど、獣人のねーちゃんたちとの戦い、全連敗じゃん。あの子ら完全に素人だろ?」
 「いや、あれ戦っていれば勝てましたよ」ローゼ、カチンときたのか、眉をひそめてそう言った。
 「言い訳しない。これじゃあ、仕事したって言わないよね。他の戦いで勝てたなんて言われてもやっぱ胡散臭いよ」と名無しが返す。
 話せば話すほど、残りの代金払わないほうに持っていこうとする依頼主たちでした。

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