EVER FOURTEEN

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始まりと信号女

信号女?

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翌日、いつもより重たい足取りで、相良は学校へ向かった。
昨日美鈴とあんな約束をしたものの、あのメンバーと話すのは、できれば避けたい。
犯人(?)から渡されたスニーカーを、スポーツリュックの奥の奥に突っ込んで登校するいつもの通学路が、ずっと続いてくれないものかと何度も考えた。
まず自分たちは何からしたらいいのかも分からないし、相良のスニーカー然り、この道具が一体なんの役に立つのかも分かっていない。
しかもグループで活動するとあれば、必然的にリーダーというのが必要になる。
あの中で自分からリーダーを買って出る人が居るわけもないだろうし、そうなったらいかにも断れなさそうな相良や美鈴に押し付けられそうだ。
美鈴は元々、そういうのは断れない性格で、小学生の時からよく掃除当番を押し付けられては、相良と一緒に掃除をしていた。
今も、クラスの女子とうまくやっている風を装っているが、男子に人気があるのを嫉妬され、裏でパシリに使われているのを相良は知っている。
何度か手伝おうとしたが、私は大丈夫だからと何もさせてくれない。
パシられている事を追求すれば、そんな事はないと無理やり固めたような笑顔で言われた。
彼女は全て自分の落ち度だと思い、それを全て受け入れてしまっている。
これ以上、美鈴にそんな苦労はして欲しくない。
だとするなら相良がやるのかといえば、それも気が引けた。
あんなクセの強さの塊みたいな集団、まとめるだけでも一苦労なはずだし、なにより自分のことを信用してくれなさそうだ。
男子たちはまぁ、郁実とは相入れなさそうだけど、どうにかなりそうな気はする。
しかし女子は…。正直言うと自信がない。
結衣と麗はクールな感じがするし、秋翔は王子の風格からか、近寄りがたい。
あの面子をまとめるのは、相楽にとって、円周率を割り切ることよりも難しく思えた。
別に自分がリーダーをやると決まったわけでもないのに、あからさまに青い顔をして、教室の自分の席に着く。
改めて、昨日一緒にいた面子がどんな様子か、チラッと見てみた。
大和はいつも通り、大きな声で何人かの男子と談笑をしていた。一人だけ大きいからよく目立っている。
郁実は一人で、鞄のチャックを何度も開け、中身を確認している。きっと彼も、自分の懐中電灯を持ってきているのだろう。
ルーカスは無用心にも、コインを机の上に取り出して、窓から差す光に照らして観察していた。
七瀬は猛ダッシュで教室のドアをガララッと開け、肩で息をつきながら机に向かう。別に遅刻ギリギリじゃないのに。
麗と結衣は、二人で向かい合って何かを話していた。麗は相良に気づくと、意外にも胸の位置まで手を上げ、挨拶をしてくれた。相良は驚いたが、自分も手を上げて返した。
秋翔は朝から女子の黄色い声援に囲まれ、少し疲れているように見えた。時々眠そうにあくびをしている。
「相良くんっ!」
突然、隣から声がかかる。
びっくりして横を向くと、美鈴が「えへへっ」と笑いながら相良の隣の席に着いた。
二人は教室の窓側の席で、一番後ろ。
「おはよう」
美鈴は相良の顔を覗き込みながら言った。
「うん、おはよう」
冷静な感じを装いつつ、相良はそれに返事をする。
「いつもより鞄重そうだね。もしかして、アレ、持ってきてるの?」
美鈴の言う『アレ』とは、犯人(?)からもらったオレンジのスニーカーだろう。
「うん、持ってきてるよ」
相良はリュックを少しだけ開けて、美鈴にスニーカーを見せた。
「いいなぁ。私もなんか道具欲しかったなぁ」
羨ましそうにほっぺを膨らませる美鈴を見て、相良は段々落ちていた気持ちが回復していくのがわかった。
「そんなにいいもんでもないと思うけどなぁこれ。でも、なんで美鈴だけなかったんだろうな」
「私も最初それ思った!だけどね…」
一瞬、美鈴が相良を見つめて黙った。
「ん?どうした?」
相良が優しく聞くと、美鈴はしばらく黙った後、真面目な顔をして口を開く。
「多分、私のは…」

―――キーンコーンカーンコーン……

いいところでチャイムが鳴り、周りが各々の席に着き始める。
「あっ、えっと、また放課後ね!」
美鈴はそれだけ言うと、さっと教卓の方に向き直った。
「…わかった」
続きが気になったが、相良も教卓に向き直る。
チャイムが鳴り終わる直前あたりで、教室の扉がガラッと開いた。
相良たちの担任が、出席簿をドンと教卓に置いて、アタマを掻きながら話し始める。
「よーし日直、号令」
「きりーつ、きをつけー、おはようございまーす」


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