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sideシーちゃん
sideシーちゃん出逢い~新人教育
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小さな頃療養のために預けられた叔父の別荘。田舎過ぎて何もない上に、放任主義の叔父に敷地内だからと放置された。過保護に守られて育った僕には初めての経験で、体力もなくて敷地内の原っぱに辿り着いても何をしたら良いのだか分からない。八つ当たりで見える草を引き千切っていたら、ふいに、僕の手を小さな手がきゅっと握ってきた。
「そのくさおてて切れちゃうよ。おれもこんなになったの。こっち、お花あるよ。」
擦り傷だらけの手を見せる天使は、僕の手を引いてくれた。
「おれ、よーすけ。きみは?」
「シーちゃん。」
「シーちゃんかわいいねぇ。おはなあげる。」
名前も分からない花に葉っぱの混ざった花束?はお世辞にも美しい出来とは言えなかったが、心がじんわりとあたたかくなった。あの日からヨウちゃんに逢えるのが、夏休み一番の楽しみになった。
最初に結婚って言いだしたのは僕だったけど、ヨウちゃんも、花冠や花指輪を作って何度も求婚してくれた。
結婚しようねと言いながら僕を花で飾り立てるヨウちゃんは、きっと僕を女の子だと思っている。身体が成長して男らしくなってくると、ヨウちゃんに嫌われるのではないかという不安が大きくなり、とうとう会いに行けなくなり別荘にこもった。
寂しそうに原っぱで花冠を作るヨウちゃんを、バルコニーから双眼鏡でそっと眺める。側に居たいと願うのに、怖がる足は動かなかった。原っぱから回収したいくつもの花冠が、部屋の中で瑞々しさを失い朽ちていった。そして、年月が経ちヨウちゃんも祖父の家に来なくなった。
少し大きくなり、沢山の人と会っても、僕の心はヨウちゃんに囚われたままだった。使える力もお金も少しずつ増やしながら、ヨウちゃんをひたすら追いかけるうちにヨウちゃんの兄妹と出逢った。
「お前がシーちゃんか。」
「あんたたち、ヨウちゃんの兄妹だよね?」
二人の異常な執着と露払い効果で、ヨウちゃんの周りには、恐ろしいほど人がいなくて寂しい学生生活を送った事を知った時は驚いた。
本来ならば、愛され可愛がられるべき存在のヨウちゃんは、特別な愛を渇望しながら兄妹の妨害でそれを得られない可哀想な人に育っていた。選ばれないをずっと体験してきて自己肯定感も低い。要らない虫がついていなかったありがたさと囲い込むには絶好のタイプとタイミングだけど、のびのびとしたあの頃のヨウちゃんを思うと胸が痛くなって、手にいれたい気持ちとあの頃のヨウちゃんを取り戻して欲しい気持ちとの板挟みになった。
兄妹のハニトラには、事前に知っていてもいなくても出逢ってからずっとヨウちゃん一筋の僕が掛かるわけもない。今までの手も使えず、俺と争うのは得策ではないと踏んだらしい滉耀と『ヨウちゃんを守るため』という名目で、お互いを見張るために連絡先を交換した。
なんとか、ヨウちゃんの会社の新人として入社できそうな体裁が整ったので、親の力を使い新人指導にヨウちゃんをつけてもらう。田村部長は、無茶なことをしたことを知っていたみたいで最初に見たときから渋い顔をされた。面と向かって何かは言わないものの、僕を見ながらやたらヨウちゃんを撫で回すのは牽制だろうか?腹が立つ。
自己紹介からカミカミのヨウちゃんは、見た目の柔らかく可愛いイメージもあって新人たちから絶大な人気が出て、僕たちのグループは羨ましがられていた。ヨウちゃんを守らないと!誰にも絶対渡さない!
ヨウちゃんのことを気に入っている野田と香取が近づきすぎないように間に入ったり、仕事中に近づきたくてあれこれ質問に行ったりして好意をアピールしたり、側にいる時間を作っているつもりだったのに……。ヨウちゃんの中で、僕の行為が全て空回りどころかヨウちゃんの低い自己肯定感を更に削るような行為だったと後から知った時は、この時の僕を殴って止めたい気分になり落ち込んだ。
今日も、田村部長は僕のヨウちゃんの頭をやたら撫で回す。撫でた後に、こちらに視線を寄越すのは態とだろう。
他の沢山のサークルの執拗過ぎるほどの勧誘を蹴って、ヨウちゃんの居るサークルに入った最初のリーグ戦。ヨウちゃんとペアを組めることになった。これは正真正銘くじ引きで、田村部長が静かに舌打ちしていたのを知っているザマァ見ろ。
試合中に何度も
「新見っ!」
ヨウちゃんが呼ぶ名字は、小さい猫が鳴いているみたいでとても可愛いくて、持ち帰ってべろべろに甘やかせたい妄想に意識が持っていかれそうになりながら、勝って喜ばせたいと気合いをいれる。
ヨウちゃんの助言通り、本当に憎たらしいほどの攻めやラリーが続いたが、若さとスピードでなんとか勝ちをもぎ取った。久々にハードな運動をして、試合終了時には薄く汗をかいていた。
真横には肩で息をしながら、汗でTシャツの張り付いたヨウちゃん。ヤバイこれは、目の毒なんだけどと思いつつ目線をやるとヨウちゃんが、こっちをじっとりとした目で見ている。誘っているの?!もう本気でうちに連れ帰りたい。
「そのくさおてて切れちゃうよ。おれもこんなになったの。こっち、お花あるよ。」
擦り傷だらけの手を見せる天使は、僕の手を引いてくれた。
「おれ、よーすけ。きみは?」
「シーちゃん。」
「シーちゃんかわいいねぇ。おはなあげる。」
名前も分からない花に葉っぱの混ざった花束?はお世辞にも美しい出来とは言えなかったが、心がじんわりとあたたかくなった。あの日からヨウちゃんに逢えるのが、夏休み一番の楽しみになった。
最初に結婚って言いだしたのは僕だったけど、ヨウちゃんも、花冠や花指輪を作って何度も求婚してくれた。
結婚しようねと言いながら僕を花で飾り立てるヨウちゃんは、きっと僕を女の子だと思っている。身体が成長して男らしくなってくると、ヨウちゃんに嫌われるのではないかという不安が大きくなり、とうとう会いに行けなくなり別荘にこもった。
寂しそうに原っぱで花冠を作るヨウちゃんを、バルコニーから双眼鏡でそっと眺める。側に居たいと願うのに、怖がる足は動かなかった。原っぱから回収したいくつもの花冠が、部屋の中で瑞々しさを失い朽ちていった。そして、年月が経ちヨウちゃんも祖父の家に来なくなった。
少し大きくなり、沢山の人と会っても、僕の心はヨウちゃんに囚われたままだった。使える力もお金も少しずつ増やしながら、ヨウちゃんをひたすら追いかけるうちにヨウちゃんの兄妹と出逢った。
「お前がシーちゃんか。」
「あんたたち、ヨウちゃんの兄妹だよね?」
二人の異常な執着と露払い効果で、ヨウちゃんの周りには、恐ろしいほど人がいなくて寂しい学生生活を送った事を知った時は驚いた。
本来ならば、愛され可愛がられるべき存在のヨウちゃんは、特別な愛を渇望しながら兄妹の妨害でそれを得られない可哀想な人に育っていた。選ばれないをずっと体験してきて自己肯定感も低い。要らない虫がついていなかったありがたさと囲い込むには絶好のタイプとタイミングだけど、のびのびとしたあの頃のヨウちゃんを思うと胸が痛くなって、手にいれたい気持ちとあの頃のヨウちゃんを取り戻して欲しい気持ちとの板挟みになった。
兄妹のハニトラには、事前に知っていてもいなくても出逢ってからずっとヨウちゃん一筋の僕が掛かるわけもない。今までの手も使えず、俺と争うのは得策ではないと踏んだらしい滉耀と『ヨウちゃんを守るため』という名目で、お互いを見張るために連絡先を交換した。
なんとか、ヨウちゃんの会社の新人として入社できそうな体裁が整ったので、親の力を使い新人指導にヨウちゃんをつけてもらう。田村部長は、無茶なことをしたことを知っていたみたいで最初に見たときから渋い顔をされた。面と向かって何かは言わないものの、僕を見ながらやたらヨウちゃんを撫で回すのは牽制だろうか?腹が立つ。
自己紹介からカミカミのヨウちゃんは、見た目の柔らかく可愛いイメージもあって新人たちから絶大な人気が出て、僕たちのグループは羨ましがられていた。ヨウちゃんを守らないと!誰にも絶対渡さない!
ヨウちゃんのことを気に入っている野田と香取が近づきすぎないように間に入ったり、仕事中に近づきたくてあれこれ質問に行ったりして好意をアピールしたり、側にいる時間を作っているつもりだったのに……。ヨウちゃんの中で、僕の行為が全て空回りどころかヨウちゃんの低い自己肯定感を更に削るような行為だったと後から知った時は、この時の僕を殴って止めたい気分になり落ち込んだ。
今日も、田村部長は僕のヨウちゃんの頭をやたら撫で回す。撫でた後に、こちらに視線を寄越すのは態とだろう。
他の沢山のサークルの執拗過ぎるほどの勧誘を蹴って、ヨウちゃんの居るサークルに入った最初のリーグ戦。ヨウちゃんとペアを組めることになった。これは正真正銘くじ引きで、田村部長が静かに舌打ちしていたのを知っているザマァ見ろ。
試合中に何度も
「新見っ!」
ヨウちゃんが呼ぶ名字は、小さい猫が鳴いているみたいでとても可愛いくて、持ち帰ってべろべろに甘やかせたい妄想に意識が持っていかれそうになりながら、勝って喜ばせたいと気合いをいれる。
ヨウちゃんの助言通り、本当に憎たらしいほどの攻めやラリーが続いたが、若さとスピードでなんとか勝ちをもぎ取った。久々にハードな運動をして、試合終了時には薄く汗をかいていた。
真横には肩で息をしながら、汗でTシャツの張り付いたヨウちゃん。ヤバイこれは、目の毒なんだけどと思いつつ目線をやるとヨウちゃんが、こっちをじっとりとした目で見ている。誘っているの?!もう本気でうちに連れ帰りたい。
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