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解き放たれる悪
第8話 戦勝会議
しおりを挟む反逆者ローレンスが地上より消えたことで、ユルゲナム王国、ドワーフ、そして教会の連合軍の勝利は確定した。悪魔たちは姿を消し、妖魔たちは降伏か、あるいは逃亡したのである。
この戦いの中で、ユーグもいつの間にか姿を消しており、状況から戦死であっただろうと処理される。残された人々は今後の方針を巡り、対立が生じた。
各国の文官や大使たち、数十人が会議室で議論をかわしている。すでに勝利から数日が経過しており、勝利の余韻よりも焦燥感の方が強い。互いに妥協点が見つからず、それでも結論は出さねばならない。そのような状況下で時間だけは流れ続けるのだ。多少なりとも責任感があれば、いや責任感が強ければ強いほど心身は疲労する。
「妖魔を支配する王冠の力を使い、奴らを奴隷として使役すれば、王都を復興するまでの期間は大いに短縮できます。扱いに危険はある品物でしょうが、今はそれを使う時です。このままでは上で死に者、冬の寒さで死ぬ者、その被害はこの戦いで戦死した者たちより多くなります」
ユルゲナム王国の文官は必死に説得するが、教会とドワーフは否定的な態度である。
「お気持ちはわかるが、この王冠は禍々しい力を持っている。とても利用するだけでは、第二のローレンスを生み出しかねない。教会で保管させてほしい」
「王冠を使うなという意見には賛成だが、教会に保管するのは賛成できん。すでに一度、ローレンスに禁書が渡ったという不祥事を忘れたわけではあるまい。我らドワーフが責任をもって、最下層の溶岩に沈める。無論、王国に対する恩義は忘れておらん。食料や居住地を再建する支援も惜しまぬ。ドワーフ王国を代表して、それは約束しよう」
と、このように妖魔の王冠に対する処遇だけでも意見は分かれたが、それ以上に投降した妖魔の扱いにも困った。
「今は茫然自失といった様子ですが、もしも我々が全員を処刑するような動きを見せれば、奴らは捨て身の反撃に出るでしょう。しかし、捕らえておくには数が多すぎる。そもそも、今の状態でも抑えていられるかどうかも不明なのだ」
「では、奴らを許して、受け入れてやれというのか? ありえない。連中がどれだけ残忍に我が国民を殺したのか、今も王都には無惨な屍が並んでいる。たとえこちらが血を流そうとも、奴らを殲滅するべきだ」
「鎖に繋いで奴隷にすればいい。先ほど、王冠は破壊するべきだと意見を出したが、妖魔を殺し尽くすのは反対だし、現状は不可能だ。それよりも鎖で繋いで労働に従事させればいい。奴らを疲れさせて、我々が回復した後で改めて処分すればいい」
残された妖魔に対する処遇も意見がわかれる。
戦場では揃った足並みが、今は無様なダンスを晒している。とはいえ、永遠に議論するわけにもいかない。誰かが代表して決めねばならぬということで、今回の戦いで最も功績のあったルミナが王冠と妖魔の処遇を決めることになる。
ユルゲナム王国とドワーフは少なからず不満であったが、実は教会も同様の心境である。ルミナが敬虔な信徒であることは疑いないが、それは必ずしも政治的な判断ができることを意味していない。むしろ、原理主義的な思考は新たな軋轢を生みかねない危うさがあった。
とはいえ、実際に戦場で武功を立てたのは事実であり、すべての勢力から一定の支持を得ていることは無視できない。
「わたしは神官戦士でしかなく、この提案が最善であるかはわかりかねますが、意見を聞きたいとのことなので率直に申し上げます。妖魔の王冠も、そして妖魔の存在も邪悪であることは疑いなく、これを放置することは後々の世にまで禍根を残すこと疑いありません。ゆえに妖魔の王冠の力を使い、妖魔たちに王都を復興させた後、妖魔たちを支配して奴らに自身の墓穴を掘らせて葬るのが最善かと。すべてが終わった後、妖魔の王冠はドワーフ大使殿の提案通りに火口にでも放り込むのがよろしいかと」
「……その提案を支持したいところだが、ひとつ問題がある。誰が妖魔の王冠を被る?」
「お許しいただければ、わたくしが。戦場でのことでしたが、一度は妖魔たちを支配しました」
ルミナの提案を否定する者はいなかった。
賛成するかのようにどこからか拍手が鳴り響き、それは会議の場全体に及んだ。こうして結論は出たが、最初に拍手した人物は誰なのか、後に誰かが確認したが誰にも名乗り出なかった。
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