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piece4 楽しい遊園地

心が湧き立つ朝

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翌朝、悠里は眠い目を擦りながら、支度をしていた。
気を抜いたら、目を閉じてしまいそうになる自分に、鞭を打つ。

ケーキのデコレーションをした昨夜。
やり始めるとつい凝ってしまい、気づけばまた深夜になっていた。
そのうえ、ドキドキと高鳴る胸を抑えることができず、ろくに眠れなかったのだ。

先日のように、寝不足を剛士に悟られてはいけない。
いつもは飲まないブラックコーヒーを淹れ、眠気を飲み下した。

彩奈が飾りつけてくれたリビングの壁を見つめ、悠里は微笑む。
Happy birthdayの金色の文字や、綺麗なグリーンリーフ。
そしてたくさんの風船が、悠里の心を湧き立たせた。


1時間後に剛士と、悠里の最寄駅で待ち合わせをする。
彩奈と拓真とは現地で集合するのだが、剛士が一緒に行こうと言ってくれたのだ。

「その方が楽しいだろ」
悪戯っぽい笑みを浮かべた剛士の顔を思い出し、悠里は幸せに浸る。

遊園地までは、電車で20分程度の距離である。
しかし、たとえ僅かな時間でも2人きりになれるのは嬉しかった。


今日は、あのワンピースを着よう。
初めて剛士と一緒に出かけたときに買った、ネイビーのワンピース。

『いいと思います』
試着したときにくれた彼の笑顔を、今でも大切に覚えている――


「さてと、」
まだ寝ているのであろう弟のために作った朝食のサンドイッチに、ラップをする。
昼は、炒飯でも作っておいてあげればいいだろうか。

悠里は冷蔵庫から食材を取り出し、トントンと軽快に刻む。
鼻歌を零しながら、悠里は元気よくフライパンを振った。


結局、出発する頃になっても弟は起きてこなかった。
悠里は書き置きをし、家を出る。

風もなく、日差しの暖かささえ感じられる陽気だった。
遊園地日和、そしてサプライズ日和だと悠里は思い、そっと笑んだ。
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