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piece8 向き合い、終わらせる
核心
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そうして、少しずつ核心に近づこうとするかのように、彼女は問いを重ねる。
『好きな子がいるなら、どうしてこの電話、出てくれたの?』
「過去を引き摺ったままじゃ、その子の方を向けないだろ」
剛士はきっぱりと言った。
「俺は100パーセント、好きな子と向き合いたいから」
『あはは、昔とおんなじこと言ってる』
弾かれたように、エリカが笑い出した。
それは皮肉でも馬鹿にしたのでもない、純粋で楽しげな笑い声だった。
不思議そうな雰囲気を醸した剛士に、エリカは言った。
『剛士さ。私と付き合ってた頃、ウチの部員に絡まれたことあったでしょ』
ウチの部員。つまりエリカ、そして悠里たちの通う聖マリアンヌ女学院のバスケ部員ということだ。
身に覚えがあり、剛士は唇を引き結ぶ。
『2番めでいい、セフレでもいいからって、食い下がられたんだよね? でも、きっぱり断った。俺は好きな子に100パーセントでいるからって』
溜め息混じりに剛士は言う。
「……俺、お前に言わなかったはずだけど」
『うん。聞いたのは相手の女の子から』
「最悪だな」
『あはは、気にしてないよ。その子もさ、何か私に言わないと気が済まなかったんだろうし』
エリカは明るく笑い飛ばしたが、ふと思い出したように独りごちる。
『ああ、でも。……剛士を狙ってるのは自分だけじゃない。知らないのはアンタだけ。おめでたい女って言われたっけ』
「……最悪だな」
過去のエリカが受けた暴言に顔をしかめ、剛士は溜め息をついた。
『その子以外で剛士に言い寄ったのが誰なのか。それはちょっとだけ、気になったかな』
「……知らなくていいよ」
『あはは。そうだね』
剛士が口を割るとも思っていなかったのだろう、エリカはあっさりと引き下がる。
そして、当時はいろいろあったねえと、彼女は戯けたように呟いた。
「いろいろ、か。……できれば、その当時に聞きたかったな」
『そうだね』
剛士の静かな声に、エリカもしんみりと答えた。
『何かあったときにその都度、剛士に話せてたら。何かが違ったのかもね』
エリカはもう一度、剛士の意志を確かめた。
『剛士。どうして、私からの電話に出てくれたの?』
「終わらせるために」
決然と剛士は答えた。
エリカが沈黙を保つ中、剛士は言った。
「あのとき俺は、逃げたんだよな。エリの気持ちを聞くのが怖くて、きちんと話し合わなかった」
『……でもそれは、私のやったことのせいだから』
エリカの声が、剛士は悪くないのだと、語りかける。
「今、こうなってるのは、俺のせいだよ」
剛士は、静かに言った。
「俺があのとき、向き合わなかったから。そのせいでお前の中にも、過去が残ってしまっているなら。ちゃんと話して、ケリをつけないとな」
『うーん……終わらせる前提?』
この電話が繋がってから、初めて剛士が笑った。
「エリも本当は、俺とヨリを戻そうなんて思ってないだろ」
『……なんで、そう思うの?』
「高木さんと、うまくやってるだろうからさ」
『……なんで?』
「そうでなければ、年末年始にお前から連絡があったはずだから」
エリカが返答に窮し、口籠もる。
剛士は、淡々と続ける。
「カラオケで会ったときは、まあ本当に高木さんと会えてない時期だったんだろうけど。あのときだって、連絡は来てたみたいだし。ちゃんと、年内に仲直りしたんだろ?」
ふうっとエリカが息をつく。
『……すごいなあ、剛士は。僅かな情報で、ビシバシ当ててくる』
少しだけ砕けた声音で、剛士は言った。
「まあ、高木さんと何かあったからって、俺にこられても迷惑だしな」
『うん。ぐうの音も出ないから、言葉をオブラートに包んで貰えるかな?』
お互いに笑ってしまい、腹の探り合いをしている緊張感が、ふっと和らいだ。
『好きな子がいるなら、どうしてこの電話、出てくれたの?』
「過去を引き摺ったままじゃ、その子の方を向けないだろ」
剛士はきっぱりと言った。
「俺は100パーセント、好きな子と向き合いたいから」
『あはは、昔とおんなじこと言ってる』
弾かれたように、エリカが笑い出した。
それは皮肉でも馬鹿にしたのでもない、純粋で楽しげな笑い声だった。
不思議そうな雰囲気を醸した剛士に、エリカは言った。
『剛士さ。私と付き合ってた頃、ウチの部員に絡まれたことあったでしょ』
ウチの部員。つまりエリカ、そして悠里たちの通う聖マリアンヌ女学院のバスケ部員ということだ。
身に覚えがあり、剛士は唇を引き結ぶ。
『2番めでいい、セフレでもいいからって、食い下がられたんだよね? でも、きっぱり断った。俺は好きな子に100パーセントでいるからって』
溜め息混じりに剛士は言う。
「……俺、お前に言わなかったはずだけど」
『うん。聞いたのは相手の女の子から』
「最悪だな」
『あはは、気にしてないよ。その子もさ、何か私に言わないと気が済まなかったんだろうし』
エリカは明るく笑い飛ばしたが、ふと思い出したように独りごちる。
『ああ、でも。……剛士を狙ってるのは自分だけじゃない。知らないのはアンタだけ。おめでたい女って言われたっけ』
「……最悪だな」
過去のエリカが受けた暴言に顔をしかめ、剛士は溜め息をついた。
『その子以外で剛士に言い寄ったのが誰なのか。それはちょっとだけ、気になったかな』
「……知らなくていいよ」
『あはは。そうだね』
剛士が口を割るとも思っていなかったのだろう、エリカはあっさりと引き下がる。
そして、当時はいろいろあったねえと、彼女は戯けたように呟いた。
「いろいろ、か。……できれば、その当時に聞きたかったな」
『そうだね』
剛士の静かな声に、エリカもしんみりと答えた。
『何かあったときにその都度、剛士に話せてたら。何かが違ったのかもね』
エリカはもう一度、剛士の意志を確かめた。
『剛士。どうして、私からの電話に出てくれたの?』
「終わらせるために」
決然と剛士は答えた。
エリカが沈黙を保つ中、剛士は言った。
「あのとき俺は、逃げたんだよな。エリの気持ちを聞くのが怖くて、きちんと話し合わなかった」
『……でもそれは、私のやったことのせいだから』
エリカの声が、剛士は悪くないのだと、語りかける。
「今、こうなってるのは、俺のせいだよ」
剛士は、静かに言った。
「俺があのとき、向き合わなかったから。そのせいでお前の中にも、過去が残ってしまっているなら。ちゃんと話して、ケリをつけないとな」
『うーん……終わらせる前提?』
この電話が繋がってから、初めて剛士が笑った。
「エリも本当は、俺とヨリを戻そうなんて思ってないだろ」
『……なんで、そう思うの?』
「高木さんと、うまくやってるだろうからさ」
『……なんで?』
「そうでなければ、年末年始にお前から連絡があったはずだから」
エリカが返答に窮し、口籠もる。
剛士は、淡々と続ける。
「カラオケで会ったときは、まあ本当に高木さんと会えてない時期だったんだろうけど。あのときだって、連絡は来てたみたいだし。ちゃんと、年内に仲直りしたんだろ?」
ふうっとエリカが息をつく。
『……すごいなあ、剛士は。僅かな情報で、ビシバシ当ててくる』
少しだけ砕けた声音で、剛士は言った。
「まあ、高木さんと何かあったからって、俺にこられても迷惑だしな」
『うん。ぐうの音も出ないから、言葉をオブラートに包んで貰えるかな?』
お互いに笑ってしまい、腹の探り合いをしている緊張感が、ふっと和らいだ。
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