#秒恋4 恋の試練は元カノじゃなくて、元カノの親友だった件。

ReN

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piece6 密室の恐怖

やり過ごそう

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ひとまずはホッとして、悠里は頭を下げる。
「あの……ありがとうございます」
「いや。……ってか、大丈夫?」
悠里を庇った男子生徒が、声を顰めて問いかける。
「悠里ちゃん、今日ムリに連れて来られてるでしょ」

咄嗟に言葉を出せず、悠里は唇を噛む。

「カンナ先輩からは、悠里ちゃんもノリノリだって聞いてたからさ……話が違い過ぎて、正直困ってる」
男子生徒は苦笑し、頭を掻く。


やはりこの人たちも、先週の勇誠学園の生徒のように、カンナから嘘を吹き込まれているのだ。
悠里は、小さく頷いてみせた。

「……カンナ先輩、けっこう強引な人だから」
ちらりと彼女を一瞥し、男子生徒は呟く。

共学校の男子たちがカラオケを始めたのを見て、彼は顔を顰めた。
音楽に声が掻き消されないように、彼は悠里の耳に向かって語りかける。

「とにかく、オレたちの横にいて。何とか、穏便にやり過ごそう」
カンナのスマートフォンが、この状況を捉えているのがわかった。
悠里はそちらの方を見ないようにしながら、男子生徒に向かって頷いた。


「おっ、次は勇誠の方に媚びてんだ? うまいねえ」
カンナが大声で話しかけてくる。
「さっきの、袖掴んで上目遣いするヤツとか、いかにもビッチって感じ!」
スマートフォンを振りながら、いいものが撮れたと言わんばかりに、カンナは笑う。

「……そんな、ビッチって」
勇誠学園の1人が苦笑する。
「悠里ちゃん、そんな感じじゃないけどなあ」

「ちょっと、もう騙されてんの? だからアンタは見る目無いんだって」
カンナが、せせら笑う。
「ビッチじゃなかったら、学祭で写真なんか撮らせないし、それが勇誠で出回ったりしないって。かわいい!って男子校で騒がれて、気持ち良くなってんだから、この子はさ」

悠里は俯き、ぎゅっと両手を握り締める。


何度も罵られていると本当に、自分の態度がいけなかったのではないかという、自責の念に苛まれる。

生まれて初めて投げつけられる、汚い言葉。
じわりと涙が込み上げる。

「いやいや、あの写真はウチの生徒が勝手に撮ったもんだし……あー、まあ、いいや」
カンナと言い争っても仕方がないと判断したのだろう。
男子生徒は、苦笑いで口をつぐんだ。


カンナは笑みを深める。
「ビッチで、他の女のオトコにまでちょっかいかけてくるからさあ。だから私は親切心で、フリーなオトコを紹介してやってるわけ」

悠里の顔を覗き込むようにして、カンナは言った。
「先輩のオトコに手ぇ出さないように。しっかり教育してやらないとねえ?」


剛士のことを言っているのだとわかり、悠里は顔を上げた。

この人は、エリカの意志も、剛士の気持ちも無視している。
そして、身勝手な思い込みだけで、悠里に接触し、貶めてくる。

――どうして。
どうしてこの人に、ここまで言われなければならないの。

悠里は、唇を噛み締め、カンナを見据えた。


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