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piece1 記憶の束縛
楽しいボウリング
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12月下旬。待ちに待った、冬休みへと続く終業式を終えた。
悠里と剛士たち4人は、いつものように交差点で待ち合わせていた。
2学期終了の打ち上げがてら、皆でボウリングでもしようという計画なのだ。
連れ立って電車に乗り、繁華街へ向かった。
「ボウリングなんて、久しぶり」
駅前のボウリング場に辿り着くと、悠里は微笑んだ。
「私なんか、ボウリング初体験だわ」
「彩奈ちゃん、マジで!? オレとゴウは、結構ここに来るんだよ」
彩奈の言葉に無邪気な笑顔で応えたのは、拓真だ。
その手には、マイシューズが握られている。
「オレ、そのうちマイボール作っちゃうかもしんない」
その言葉に、皆が笑った。
拓真が話すと、いつも空気が柔らかくなる。
知り合ってまだ2か月経たない4人だが、その輪の中で、拓真のムードメーカーたる役割は大きかった。
「よし、2チームに分かれようぜ!」
剛士と悠里、拓真と彩奈という組に分かれ、意気揚々と開戦を告げる。
「よぉし、負けんぞ」
拓真が大袈裟に腕まくりを始めた。
立て続けに2ゲームをこなし、勝負は1対1。
悠里と彩奈は、低レベルな争いに終始したが、剛士と拓真は頻繁に来ているだけあって、なかなかの腕前だった。
「けっこう疲れるねー!」
「いい運動になるでしょ?」
腕を振り、笑った彩奈の声に、楽しそうに拓真が応える。
次は悠里が投げる番だ。微笑みながら、ボールを手にした。
「……小さいの、使うんだな」
悠里の取ったボールを見つめ、剛士は、ふっと微笑した。
「お前、手小さいもんな」
「え? そう、かな」
悠里は自分の手に目を落とす。
瞬間、剛士の大きな手の感覚を、思い出してしまった。
大きくて暖かい彼の手が、自分を包み込んでくれる、優しい感覚――
ハッと気がついたときには、既に悠里の頬は真っ赤に色づいていた。
「悠里、赤くなった! かっわいー!」
それを見て、彩奈が冷やかす。
「もー、どんどんイチャイチャしてちょーだい!」
拓真も笑い、口笛を吹いた。
悠里はその場から逃げるように、慌ててレーンに向かう。
めちゃくちゃなフォームで投げたボールは、はじめからガターになり、情けない姿で転がって行ってしまった。
「ゆ、悠里ちゃん! ナーイス!」
拓真と彩奈は、涙が出るほど笑っている。
「悪い、邪魔した」
剛士までもが、笑いながら悠里を迎える。
「……もう」
林檎の頬をしたままで、悠里はむくれながら着席した。
4ゲームめは、疲れた女子2人を休ませ、剛士と拓真が一騎打ちを始めた。
1球投げるごとに、2人でわあわあと騒々しい。
女子2人をそっちのけで騒いでいる彼らを、悠里は微笑みながら見つめる。
剛士の、明るい笑顔。
いつも落ち着いていてクールなイメージのある彼が、無邪気に笑っている。
拓真といるときの剛士はいつも、自然体の明るい笑顔だ。
悠里は、拓真とはしゃぐ剛士を見ているのが好きだった。
拓真のリードで、最後のフレームを迎える。
拓真が、残り1ピンを取り逃がした。
最終の10フレームのみに許される、3投目が無くなった。
「うわああ、ちくしょー!」
拓真が痛恨の悲鳴をあげ、金髪頭を抱える。
次に剛士が投げた一投めは、端と端のピンが残った。
「スプリットだ!」
自分の勝利を確信してか、拓真が嬉しそうに叫ぶ。
「スプリット?」
ボウリングのルールを全く知らない彩奈が、不思議そうに悠里に問いかける。
「残っているピン同士が離れていて、全部倒すのが難しいの」
小声で悠里は答える。
声には出さなかったが、次の一投で残る端と端のピンが上手く倒れるように、祈らずにはいられなかった。
剛士は、真剣な表情でレーンの先を見つめている。
バスケットボールの試合のときのような、闘志を秘めた鋭い瞳に、悠里の心は釘付けになってしまう。
剛士が狙い澄まして投げたボールは、絶妙な角度で端のピンにぶつかった。
そのピンは勢いよく反対側に飛び跳ね、残った片側を蹴り倒す。
わあっ、と悠里と彩奈は歓声を上げ、対する拓真は崩れ落ちた。
「ウソでしょ!それ決めちゃう!?」
剛士の3投目が終了し、スコアが表示された。
結局は、僅差で拓真の勝利だったのだが、彼は金髪頭を掻きながら口を尖らせていた。
「なんかもう最後のスプリットで、全部持ってかれたんだよなあ……」
「だねー!シバさん、持ってるわ」
彩奈が笑いながら相槌を打つ。
「試合に負けて勝負に勝ったって感じだよね」
剛士は不敵な微笑で応えると、悠里に向き直り両手を掲げた。
無邪気な笑顔でハイタッチをする悠里と、嬉しそうな剛士。
「……あー、そうだった。ゴウには、勝利の女神がついてるんだよなあ」
「だねえ。あれには勝てないわな」
拓真と彩奈は、うんうんと納得の表情を浮かべ、微笑ましい2人を見守った。
悠里と剛士たち4人は、いつものように交差点で待ち合わせていた。
2学期終了の打ち上げがてら、皆でボウリングでもしようという計画なのだ。
連れ立って電車に乗り、繁華街へ向かった。
「ボウリングなんて、久しぶり」
駅前のボウリング場に辿り着くと、悠里は微笑んだ。
「私なんか、ボウリング初体験だわ」
「彩奈ちゃん、マジで!? オレとゴウは、結構ここに来るんだよ」
彩奈の言葉に無邪気な笑顔で応えたのは、拓真だ。
その手には、マイシューズが握られている。
「オレ、そのうちマイボール作っちゃうかもしんない」
その言葉に、皆が笑った。
拓真が話すと、いつも空気が柔らかくなる。
知り合ってまだ2か月経たない4人だが、その輪の中で、拓真のムードメーカーたる役割は大きかった。
「よし、2チームに分かれようぜ!」
剛士と悠里、拓真と彩奈という組に分かれ、意気揚々と開戦を告げる。
「よぉし、負けんぞ」
拓真が大袈裟に腕まくりを始めた。
立て続けに2ゲームをこなし、勝負は1対1。
悠里と彩奈は、低レベルな争いに終始したが、剛士と拓真は頻繁に来ているだけあって、なかなかの腕前だった。
「けっこう疲れるねー!」
「いい運動になるでしょ?」
腕を振り、笑った彩奈の声に、楽しそうに拓真が応える。
次は悠里が投げる番だ。微笑みながら、ボールを手にした。
「……小さいの、使うんだな」
悠里の取ったボールを見つめ、剛士は、ふっと微笑した。
「お前、手小さいもんな」
「え? そう、かな」
悠里は自分の手に目を落とす。
瞬間、剛士の大きな手の感覚を、思い出してしまった。
大きくて暖かい彼の手が、自分を包み込んでくれる、優しい感覚――
ハッと気がついたときには、既に悠里の頬は真っ赤に色づいていた。
「悠里、赤くなった! かっわいー!」
それを見て、彩奈が冷やかす。
「もー、どんどんイチャイチャしてちょーだい!」
拓真も笑い、口笛を吹いた。
悠里はその場から逃げるように、慌ててレーンに向かう。
めちゃくちゃなフォームで投げたボールは、はじめからガターになり、情けない姿で転がって行ってしまった。
「ゆ、悠里ちゃん! ナーイス!」
拓真と彩奈は、涙が出るほど笑っている。
「悪い、邪魔した」
剛士までもが、笑いながら悠里を迎える。
「……もう」
林檎の頬をしたままで、悠里はむくれながら着席した。
4ゲームめは、疲れた女子2人を休ませ、剛士と拓真が一騎打ちを始めた。
1球投げるごとに、2人でわあわあと騒々しい。
女子2人をそっちのけで騒いでいる彼らを、悠里は微笑みながら見つめる。
剛士の、明るい笑顔。
いつも落ち着いていてクールなイメージのある彼が、無邪気に笑っている。
拓真といるときの剛士はいつも、自然体の明るい笑顔だ。
悠里は、拓真とはしゃぐ剛士を見ているのが好きだった。
拓真のリードで、最後のフレームを迎える。
拓真が、残り1ピンを取り逃がした。
最終の10フレームのみに許される、3投目が無くなった。
「うわああ、ちくしょー!」
拓真が痛恨の悲鳴をあげ、金髪頭を抱える。
次に剛士が投げた一投めは、端と端のピンが残った。
「スプリットだ!」
自分の勝利を確信してか、拓真が嬉しそうに叫ぶ。
「スプリット?」
ボウリングのルールを全く知らない彩奈が、不思議そうに悠里に問いかける。
「残っているピン同士が離れていて、全部倒すのが難しいの」
小声で悠里は答える。
声には出さなかったが、次の一投で残る端と端のピンが上手く倒れるように、祈らずにはいられなかった。
剛士は、真剣な表情でレーンの先を見つめている。
バスケットボールの試合のときのような、闘志を秘めた鋭い瞳に、悠里の心は釘付けになってしまう。
剛士が狙い澄まして投げたボールは、絶妙な角度で端のピンにぶつかった。
そのピンは勢いよく反対側に飛び跳ね、残った片側を蹴り倒す。
わあっ、と悠里と彩奈は歓声を上げ、対する拓真は崩れ落ちた。
「ウソでしょ!それ決めちゃう!?」
剛士の3投目が終了し、スコアが表示された。
結局は、僅差で拓真の勝利だったのだが、彼は金髪頭を掻きながら口を尖らせていた。
「なんかもう最後のスプリットで、全部持ってかれたんだよなあ……」
「だねー!シバさん、持ってるわ」
彩奈が笑いながら相槌を打つ。
「試合に負けて勝負に勝ったって感じだよね」
剛士は不敵な微笑で応えると、悠里に向き直り両手を掲げた。
無邪気な笑顔でハイタッチをする悠里と、嬉しそうな剛士。
「……あー、そうだった。ゴウには、勝利の女神がついてるんだよなあ」
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