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piece3 痛みの追憶
エリカ
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ガチャンと扉を閉め、剛士は独り、廊下を歩きだした。
友人たちを置いて帰ることを選んだ自分を、情けなく思う。
自己嫌悪に浸る剛士の目に、エレベーターホールが映った。
否応なしに、思い返してしまう。
『久しぶりだね、剛士』
出会ってしまった、懐かしい声を。
心の奥に仕舞い込んだ、強い痛みを。
剛士は溜め息をつく。
とてもエレベーターを待つ気にはなれなかった。
足早に非常階段を降りていく。
それでも容赦なく、追憶は彼を追いかけてきた――
「ごめんね、剛士。引き止めちゃって」
自分の連れを先にエレベーターで降らせ、彼女は昔と同じ華やかな微笑を、剛士に向けた。
そして、じっと彼の目を覗き込む。
「隣にいた可愛い子、ウチの1年生だよね。……彼女さん?」
悠里のことを探られ、ズキリと胸が痛んだ。
「……別に。友だちだよ」
思わず目を逸らしてしまった。
何も、後ろめたく思うことはないのに。
自分の心の反応に、剛士自身が驚いてしまう。
彼女が、小首を傾げる。
「なんだ、違うのかぁ。……剛士、あれから女の子を寄せ付けないって噂に聞いてたから……責任、感じてたんだよ」
「責任?」
「そりゃあ……感じるよ」
剛士のおうむ返しに、彼女は寂しげに微笑む。
いたたまれず、剛士は低く呟いた。
「……別に、お前が感じることじゃないだろ」
付き合っていた頃のように、気安く『お前』と呼んでしまい、剛士は思わず顔を歪めた。
沈黙が落ちた。
「……高木さんは?」
自分の動揺を抑え込むために、剛士は敢えて、彼女の現在の恋人を口にする。
途端に彼女の華やかな笑顔は萎れ、寂しく俯いた。
「……大学の課題とかバイトとか、忙しいみたいで。割と放置されてる、かな」
彼女は苦笑し、言った。
「寂しい」と。
彼女の口から、一番聞きたくない言葉だった。
剛士は眉をしかめる。
その言葉は昔と同じ引力を持って、剛士を惹きつけた。
心が過去を遡っていくような空気が、2人の間を流れる。
それを遮ったのは、彼女のスマートフォンの着信音だった。
「あ……」
彼女が画面の文字を見て、バツの悪そうな顔をした。
剛士の心が現実に引き戻される。
「……高木さんだろ。出れば?」
俺はもう行くから、と剛士は彼女の目を見ずに、背を向けて歩き始めた。
「剛士!」
彼女の声が追いかけてきた。
「またね!」
剛士は振り返らず、自分を待つ3人の元へと急いだのだった――
ようやく1階までたどり着き、剛士はビルの外に出た。
もう一度、深い溜め息をつく。
『寂しい』
彼女がそう呟いたとき、咄嗟に考えてしまった。
自分に、何ができるだろうか、と。
もし高木からの着信が無ければ、思考はそのまま、あらぬ方向へ突き進んだかもしれない。
――何を考えてるんだ、俺は。
友人たちと離れ1人歩く夜道は、ひときわ風が冷たく感じられた。
剛士は目を伏せたまま、のろのろと駅に向かって歩く。
――別れたことを、後悔はしていない。
なのにどうして、振り払えないのだろう。
『剛士!』
懐かしい声に、誘なわれるがまま。
彼の心はどうしようもなく、追憶の沼に沈んでいった――
友人たちを置いて帰ることを選んだ自分を、情けなく思う。
自己嫌悪に浸る剛士の目に、エレベーターホールが映った。
否応なしに、思い返してしまう。
『久しぶりだね、剛士』
出会ってしまった、懐かしい声を。
心の奥に仕舞い込んだ、強い痛みを。
剛士は溜め息をつく。
とてもエレベーターを待つ気にはなれなかった。
足早に非常階段を降りていく。
それでも容赦なく、追憶は彼を追いかけてきた――
「ごめんね、剛士。引き止めちゃって」
自分の連れを先にエレベーターで降らせ、彼女は昔と同じ華やかな微笑を、剛士に向けた。
そして、じっと彼の目を覗き込む。
「隣にいた可愛い子、ウチの1年生だよね。……彼女さん?」
悠里のことを探られ、ズキリと胸が痛んだ。
「……別に。友だちだよ」
思わず目を逸らしてしまった。
何も、後ろめたく思うことはないのに。
自分の心の反応に、剛士自身が驚いてしまう。
彼女が、小首を傾げる。
「なんだ、違うのかぁ。……剛士、あれから女の子を寄せ付けないって噂に聞いてたから……責任、感じてたんだよ」
「責任?」
「そりゃあ……感じるよ」
剛士のおうむ返しに、彼女は寂しげに微笑む。
いたたまれず、剛士は低く呟いた。
「……別に、お前が感じることじゃないだろ」
付き合っていた頃のように、気安く『お前』と呼んでしまい、剛士は思わず顔を歪めた。
沈黙が落ちた。
「……高木さんは?」
自分の動揺を抑え込むために、剛士は敢えて、彼女の現在の恋人を口にする。
途端に彼女の華やかな笑顔は萎れ、寂しく俯いた。
「……大学の課題とかバイトとか、忙しいみたいで。割と放置されてる、かな」
彼女は苦笑し、言った。
「寂しい」と。
彼女の口から、一番聞きたくない言葉だった。
剛士は眉をしかめる。
その言葉は昔と同じ引力を持って、剛士を惹きつけた。
心が過去を遡っていくような空気が、2人の間を流れる。
それを遮ったのは、彼女のスマートフォンの着信音だった。
「あ……」
彼女が画面の文字を見て、バツの悪そうな顔をした。
剛士の心が現実に引き戻される。
「……高木さんだろ。出れば?」
俺はもう行くから、と剛士は彼女の目を見ずに、背を向けて歩き始めた。
「剛士!」
彼女の声が追いかけてきた。
「またね!」
剛士は振り返らず、自分を待つ3人の元へと急いだのだった――
ようやく1階までたどり着き、剛士はビルの外に出た。
もう一度、深い溜め息をつく。
『寂しい』
彼女がそう呟いたとき、咄嗟に考えてしまった。
自分に、何ができるだろうか、と。
もし高木からの着信が無ければ、思考はそのまま、あらぬ方向へ突き進んだかもしれない。
――何を考えてるんだ、俺は。
友人たちと離れ1人歩く夜道は、ひときわ風が冷たく感じられた。
剛士は目を伏せたまま、のろのろと駅に向かって歩く。
――別れたことを、後悔はしていない。
なのにどうして、振り払えないのだろう。
『剛士!』
懐かしい声に、誘なわれるがまま。
彼の心はどうしようもなく、追憶の沼に沈んでいった――
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