#秒恋2 2人の日常を積み重ねて。〜恋のトラウマ、ゆっくりと乗り越えよう〜

ReN

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piece4 夜の電話

踏み出す一歩

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悠里は、自分の心を奮い立たせる。

『がんばれ、悠里!』
彩奈の励ましが、耳元で聴こえた気がした。
胸に手を当て、悠里は一歩を踏み出す。

「ゴウさん」
『……ん?』
「明日、カレーパーティーしませんか?」
『え?』
あまりに唐突な悠里の言葉に、剛士はポカンとした声を上げた。

咄嗟に、思い浮かんだのだ。
『ゴウ、カレー好きだよ!2日にいっぺんは学食で食ってるもん』
初めて4人一緒に帰った日、拓真がそう教えてくれたことを。

自分がいま、彼のためにできること。
他に思いつかなかった。

剛士の本心はわからない。
けれど、電話をくれた。
自分を見てくれた。
自分に手を伸ばしてくれた。

だから、元気づけたい。
剛士が笑顔になれるように。
自分にできる、精一杯で……

「拓真さんが、明日ゴウさんに会うって言ってました。私も明日、彩奈と会うの。だから、みんなで集まれたらいいなって……」
心臓が痛いくらいに脈打っている。
我ながら、なんて唐突な誘いなんだろう。
緊張に息が詰まりそうだった。


剛士が、ふっと小さく吹き出す。
『お前、面白いよな』
「え?」
『時々、予想外のことを言う』
「……ふふ。私もいま、びっくりしてます」
彼の笑い声につられ、悠里も笑ってしまう。
苦しい程の緊張感は、すっと優しく解けた。

『ありがとう、悠里』
剛士が、静かに囁いた。
『……うん。食べたい。お前のカレー』
「ゴウさん……」
急に恥ずかしくなり、悠里の頬が熱くなる。
「うん。がんばって作るね!」

そうして2人で、明日の段取りを話し合う。
10時に、悠里の家の最寄り駅に集合。
皆で駅前のスーパーで買い物をして、家に向かうことにした。

『拓真には、俺から連絡するよ』
剛士の声に明るさが戻ってきた気がして、悠里は嬉しくなった。
ようやく悠里の頬にも、自然な微笑みが浮かぶ。
「ありがとう、ゴウさん」
剛士の声が、優しく返ってきた。
『俺の方こそ。じゃあ、明日な』
「うん!」


彼との通話を終了すると、明日への喜びに膨らむ胸を押さえながら、今度は彩奈に電話を繋げる。
「彩奈! あの、明日なんだけど……」

経緯を説明すると、彩奈は素っ頓狂な声を上げながら、褒めてくれた。
『すごいじゃん! よくやった悠里!』
「えへへ……」
親友に甘えたくなり、悠里は子どものように笑う。
「うん。がんばっちゃった……」

『男は胃袋を掴めって言うしね! ナイスよ、悠里!』
「え?」
予想外の言葉に、悠里はうろたえる。
「や、やだ、そんなんじゃないよ! ただゴウさんに、元気になってほしくて……」
『いいのよいいのよ』
その声だけで、彩奈のニヤニヤ顔が目に浮かぶ。
『料理は悠里の武器なんだから、活用しなきゃ!』
「もう……」

恥ずかしさに膨れっ面になった悠里の耳に、嬉しい言葉が届いた。
『伝わるよ!シバさんを笑顔にしたいっていう、悠里の気持ち』
がんばれ、悠里! 
彩奈の声が、暖かく悠里の背中を押す。

「……うん」
悠里は頷き、微笑んだ。
「がんばる」

甘い鼓動に震える胸を抱え、悠里は自分の剛士への気持ちを、明確に感じた。
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