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おまけのお話 剛士と拓真

自信を持ってくれるように

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『頭ん中100パー、クリアにしてからじゃないと、悠里ちゃんには行けないってか』

拓真が笑う。
『ゴウってそういうとこ、律儀っていうか、不器用だよね』

剛士は、ゆっくりと言葉を探す。
「うん、まあそれもあるんだけど、」
『ん?』

「……悠里な。まだ俺と過ごした時間が短いから、自信がないって、言ったんだ。……きっと俺が、不安な思いをさせたせいだ」


そのときの悠里の顔と声を思い返す。
涙ぐんだ大きな瞳。それでも彼女は、大丈夫だよというふうに、にっこりと優しい微笑みを浮かべて、剛士を見上げた――


「だから、これからたくさん、一緒に日常を過ごそうって。2人で話したんだ」

『……そうだったんだぁ』
拓真が柔らかい声で言った。

『悠里ちゃん、これからもお前と、一緒にいてくれるって?』
「……うん」

我知らず、剛士の口元に笑みが浮かんだ。

「悠里のなかで、俺との日常が積み重なって、当たり前になって。俺のこと、好きになって欲しいな……」

拓真が笑った。
『ゴウって、そんな鈍感だっけ』
「え?」

『オレと彩奈ちゃんから見れば、早く付き合えよ!ってくらい、2人の気持ちはハッキリしてるのに』

友人から見た自分たちは、そう見えるのかと薄く微笑みながらも、剛士は答えた。

「時間をかけてあげたいんだ。悠里に、自信持って貰えるように。安心して貰えるように。ゆっくり、関係を築いていきたい」

『……そっか』
拓真が温かく笑った。
『悠里ちゃんの気持ちもわかった上で言ってんだな。ならオレは何も言うまい』
「はは、なんだよそれ」

赤裸々に気持ちを表現した照れを隠すために、剛士も笑った。


『悠里ちゃんが早く自信持ってくれるように。いっぱい、一緒に過ごしてあげろよ?』
「……うん。がんばって、悠里の気持ちを勝ち取る」
『よっしゃ!その意気だ!』
拓真が明るい声をあげた。

『2人の日常に、オレと彩奈ちゃんも入ってるよね?』
「当たり前だろ」
『オレも、彩奈ちゃんも。ずっと2人のこと応援してるからな。ま、大船に乗った気持ちでどうぞ!』
戯けた拓真の声に、剛士は思わず笑った。


『……頭、整理できた?』
優しい声が、耳に届いた。

暖かい気持ちに満たされ、剛士は応える。
「……うん。さんきゅ」

拓真が朗らかに笑った。
『なら良かった。じゃあゴウ、また明日な!今日は、ゆっくり寝な?』
「おう」

言葉にしきれない感謝を胸に、剛士は親友との通話を終えた。
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