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piece6 親友たちへの告白
悠里の親友は私
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「彩奈ちゃん。本当にありがとう。おかげで、ちょっと目が覚めた気がする」
エリカがようやく、彼女本来の、強く華やかな瞳を取り戻した。
彼女は、しゃんと背を伸ばし、正面にいる彩奈を見つめた。
「私、悠里ちゃんの力になりたい。悠里ちゃんと剛士が早く、2人で一緒にいられるように。だから、近いうちにまた、悠里ちゃんに会いに行こうと思うんだ。良かったら一緒に……」
その瞬間、彩奈の目が、ぎらりと怒りを放った。
ハッと、エリカは口をつぐむ。
拓真が作りかけていた和やかな空気が、粉々に砕けた。
代わりに、鋭い緊張感が5人を支配する。
彩奈が小さく、しかし、はっきりとした声音で言った。
「それは、貴女の役目ではないです」
「……え?」
彩奈の言葉に、エリカは戸惑いの声を上げる。
彩奈が目を上げ、真っ直ぐにエリカを見据えた。
「悠里には、私が会いに行きます。本当は、いますぐにでも行きたいけど、もう夕方遅い時間だから、無理ですね」
言外にある彩奈の悔しさを感じ取り、剛士は彼女に声を掛ける。
「……ごめん。もっと早く彩奈に伝えてたら、今日会いに行けたよな」
彩奈は剛士の声には応えず、エリカに向かって続けた。
「修了式の日、悠里を助けてくれたことは、感謝してます。けど、もう充分です。ここから先は、私に任せてください」
「で、でも……」
エリカの声を遮り、彩奈が強く言った。
「悠里の親友は、私です!」
彩奈の心の叫びに、エリカも剛士も、拓真も高木も皆、言葉を失う。
彩奈は、グッと息を飲み込み、それからもう一度、皆の顔を見て言った。
「……お願いだから、悠里のことは、私に任せてください」
何か、彩奈を説得する言葉を探しているらしいエリカを、剛士は目で押し留める。
そうして、彩奈に向かって、しっかりと頷いた。
彩奈以上に、悠里のことを理解し、支えてくれる存在を、剛士は知らない。
彼女に、任せる他ない。
悠里のためにも、自分たちは彼女を信じて、全面的に従うべきだ。
「うん……彩奈、よろしくお願いします」
剛士は彩奈に向かい、深く頭を下げる。
彩奈は、硬い表情のままだった。
ふぅっと息をつき、彩奈は立ち上がった。
皆で囲むテーブルの輪から、彼女はひとり、外れていく。
「……じゃ、これで」
話は終わりだという彼女の態度に、皆は少なからず、驚いてしまう。
会釈をして、この場を去ろうとする彩奈を見つめ、剛士は追い縋る。
「悠里と会えたら……俺に連絡くれないか?」
彩奈は、彼の方には目を向けず、口元に冷ややかな笑みを浮かべた。
「……必要なら、悠里から連絡行くんじゃないですかね」
『必要なら』
つまり、悠里から連絡がないのは、剛士が必要とされていないからだ。
そう突き放されたのが、わかった。
受けてしまった明確な拒絶に、剛士は、グッと唇を引き結ぶ。
彩奈は、顔を背けたまま続けた。
「私はいま、悠里のことしか考えられません。私に、伝書鳩を期待しないでください」
小さな希望すら、打ち砕かれた。
けれど、彩奈の言う通りだと思った。
悠里を助けることのできなかった自分が、彼女に力を貸して貰おうなんて、虫の良すぎる話なのだ。
剛士は、微かに頷く。
「……うん。そうだよな。ごめん」
「……彩奈ちゃん、」
見兼ねて口を開いた拓真の肩を押さえ、剛士は首を横に振る。
そうして剛士は、彩奈に向かって優しく、真摯な声音で言った。
「辛い話を聞かせてしまって、本当にごめん。情けないけど、俺からの連絡には、返事がなくて……それで、彩奈に相談させて貰ったんだ。悠里を助けるには、それしかないと思ったから」
彩奈には、悠里のことだけを考えて、動いて欲しい。
悠里のこと以外を、彩奈に求めてはいけない。
自分は、もうこれ以上、彩奈に頼っては――甘えては、いけない。
悠里との未来を繋ぎ止めたいなら、自分自身で、何とかするしかない。
時間がかかっても、必ず。
剛士は、腹の奥で決意を結んだ。
剛士は、深く深く頭を下げる。
「彩奈……悠里のこと、助けてください」
彩奈は暫くの間じっと、自分に向かって頭を下げる剛士を見下ろしていた。
「――少し、安心しました」
乾いた笑いを零し、彩奈は応えた。
「私を呼んだ理由が、私にフォローさせて、貴方と悠里の仲を取り持てっていう話なんだったら……私は本当に、貴方のことを軽蔑するところでした」
冷たい声音だった。
いつもの『シバさん』や、喧嘩をしたときの『アンタ』でもない。
『貴方』と、他人行儀に呼ばれる痛み。
彩奈から引かれた、暗くて深くて遠い、一線。強固な隔たり。
その冷たさに耐えながら、剛士は『そんなことは思っていない』という意思を込め、首を横に振った。
エリカがようやく、彼女本来の、強く華やかな瞳を取り戻した。
彼女は、しゃんと背を伸ばし、正面にいる彩奈を見つめた。
「私、悠里ちゃんの力になりたい。悠里ちゃんと剛士が早く、2人で一緒にいられるように。だから、近いうちにまた、悠里ちゃんに会いに行こうと思うんだ。良かったら一緒に……」
その瞬間、彩奈の目が、ぎらりと怒りを放った。
ハッと、エリカは口をつぐむ。
拓真が作りかけていた和やかな空気が、粉々に砕けた。
代わりに、鋭い緊張感が5人を支配する。
彩奈が小さく、しかし、はっきりとした声音で言った。
「それは、貴女の役目ではないです」
「……え?」
彩奈の言葉に、エリカは戸惑いの声を上げる。
彩奈が目を上げ、真っ直ぐにエリカを見据えた。
「悠里には、私が会いに行きます。本当は、いますぐにでも行きたいけど、もう夕方遅い時間だから、無理ですね」
言外にある彩奈の悔しさを感じ取り、剛士は彼女に声を掛ける。
「……ごめん。もっと早く彩奈に伝えてたら、今日会いに行けたよな」
彩奈は剛士の声には応えず、エリカに向かって続けた。
「修了式の日、悠里を助けてくれたことは、感謝してます。けど、もう充分です。ここから先は、私に任せてください」
「で、でも……」
エリカの声を遮り、彩奈が強く言った。
「悠里の親友は、私です!」
彩奈の心の叫びに、エリカも剛士も、拓真も高木も皆、言葉を失う。
彩奈は、グッと息を飲み込み、それからもう一度、皆の顔を見て言った。
「……お願いだから、悠里のことは、私に任せてください」
何か、彩奈を説得する言葉を探しているらしいエリカを、剛士は目で押し留める。
そうして、彩奈に向かって、しっかりと頷いた。
彩奈以上に、悠里のことを理解し、支えてくれる存在を、剛士は知らない。
彼女に、任せる他ない。
悠里のためにも、自分たちは彼女を信じて、全面的に従うべきだ。
「うん……彩奈、よろしくお願いします」
剛士は彩奈に向かい、深く頭を下げる。
彩奈は、硬い表情のままだった。
ふぅっと息をつき、彩奈は立ち上がった。
皆で囲むテーブルの輪から、彼女はひとり、外れていく。
「……じゃ、これで」
話は終わりだという彼女の態度に、皆は少なからず、驚いてしまう。
会釈をして、この場を去ろうとする彩奈を見つめ、剛士は追い縋る。
「悠里と会えたら……俺に連絡くれないか?」
彩奈は、彼の方には目を向けず、口元に冷ややかな笑みを浮かべた。
「……必要なら、悠里から連絡行くんじゃないですかね」
『必要なら』
つまり、悠里から連絡がないのは、剛士が必要とされていないからだ。
そう突き放されたのが、わかった。
受けてしまった明確な拒絶に、剛士は、グッと唇を引き結ぶ。
彩奈は、顔を背けたまま続けた。
「私はいま、悠里のことしか考えられません。私に、伝書鳩を期待しないでください」
小さな希望すら、打ち砕かれた。
けれど、彩奈の言う通りだと思った。
悠里を助けることのできなかった自分が、彼女に力を貸して貰おうなんて、虫の良すぎる話なのだ。
剛士は、微かに頷く。
「……うん。そうだよな。ごめん」
「……彩奈ちゃん、」
見兼ねて口を開いた拓真の肩を押さえ、剛士は首を横に振る。
そうして剛士は、彩奈に向かって優しく、真摯な声音で言った。
「辛い話を聞かせてしまって、本当にごめん。情けないけど、俺からの連絡には、返事がなくて……それで、彩奈に相談させて貰ったんだ。悠里を助けるには、それしかないと思ったから」
彩奈には、悠里のことだけを考えて、動いて欲しい。
悠里のこと以外を、彩奈に求めてはいけない。
自分は、もうこれ以上、彩奈に頼っては――甘えては、いけない。
悠里との未来を繋ぎ止めたいなら、自分自身で、何とかするしかない。
時間がかかっても、必ず。
剛士は、腹の奥で決意を結んだ。
剛士は、深く深く頭を下げる。
「彩奈……悠里のこと、助けてください」
彩奈は暫くの間じっと、自分に向かって頭を下げる剛士を見下ろしていた。
「――少し、安心しました」
乾いた笑いを零し、彩奈は応えた。
「私を呼んだ理由が、私にフォローさせて、貴方と悠里の仲を取り持てっていう話なんだったら……私は本当に、貴方のことを軽蔑するところでした」
冷たい声音だった。
いつもの『シバさん』や、喧嘩をしたときの『アンタ』でもない。
『貴方』と、他人行儀に呼ばれる痛み。
彩奈から引かれた、暗くて深くて遠い、一線。強固な隔たり。
その冷たさに耐えながら、剛士は『そんなことは思っていない』という意思を込め、首を横に振った。
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