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第一章
運を操る力…②
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「この絵画がどなたがお描きに?」
「下の息子だ。もうずいぶん前だがね」
聖装飾物とは古代に生きた装飾師たちが創造した芸術品だという認識がある一般的だ。
現代にも装飾師のように物に運を込める力を持つ人達はいる。
その事実を知っている人間もまた少ない。力を持つ本人ですら気づいていない。
「お上手ですね。お会いしたかったですわ。これほど見事な筆遣いをなされる方なら…」
「そうだろうね。生きていれば時代に名を残す画家になっていただろう」
優しく微笑むストーク氏に胸が苦しくなる。
けれど、それ以上の感想は見つからない。
「ではお預かりいたします。ストーク氏の大切な聖装飾物ですから」
「ありがとう。これでゆっくり眠れそうだ。私を気にせず他の聖装飾物も持ち出してくれ」
「分かりました」
「一ついいかね?」
「なんでしょう?」
「大切な人達に会う覚悟はないと言ったね」
「ええ~」
「その覚悟とは具体的には何を指すのかね」
シアは正直迷った。どう答えていいものか思案を巡らせる。
「悪かった。余計な事を聞いてしまったね」
ホッとした。
すでに時を終えようとしているストーク氏に話す内容ではない。
「おやすみなさい」
シアは小さく会釈して、彼の眠りを待ちつつ、仕事にとりかかろうとした。
その時、背中越しに風が通り抜けていく。
扉が開かれたと気づき、振り返ると不運鬼が飛び込んできた。
だが、その小さな体がシアの顔面を直撃する前に粉々に吹き飛ぶ。
すぐ後ろには赤い目を覗かせるヴァノンが立っていた。
「ちょっと、ストーク氏は眠られているのよ。静かに処理してよ」
「悪いな。すばしっこいから。何より俺の力はお前みたいに融通効かないんだよ」
「言い訳しないでよ。一応、私の師匠でしょう?弱気発言やめて」
「師匠だからって弟子よりなんでも優位だと思うな」
肩をすくめるヴァノンの瞳は再びいつものように細くなり、光が消える。
「倉庫のコレクションは大体、回収できた」
「この部屋の聖装飾物達も持って行って欲しいそうよ」
「じゃあ、手早く済ませよう」
「あっ!この絵画は私が個人的に預かるわ」
「ふ~ん」
「ストーク氏と話が弾んだのか?」
「どうかしらね。ただ家族の話をしただけよ」
シアは忍び足で部屋内を行きかう。
『エル!』
頭の中でかつての自分を呼ぶ大切な人達の声をかき消すように。
もう、会う事は叶わない私の家族。
覚悟というのは大げさね。この命は一度失われている。
それでも舞い戻ってきたのはすべてを奪い取った者へ復讐するため。
だから、名前も地位も何もかもを葬り去ったのだ。
運?
以前の私にはそんな物、不要でしかなかった。誰も私達を助けてはくれなかった。
だが、すべてを恨んだ末に調整師なんて言う真逆の肩書を手に入れるなんて…。
とんだ皮肉ね。
けれど、この力を手にしたから今ここにいる。
私は立っていられる。
『エル!』
再び呪いのように全身を駆け巡っていくその音に浸る。
この髪がまだ美しい金の輝きを放っていた頃。大きな屋敷の中で大好きだけれど、肉らたしくもあった歳の近い妹と幼さの残る弟。そして、歴史だけは長い家門存続という重圧のすべてを引き受けている父とそれを支える母。多少の問題はあったけれど、私の周りには穏やかな日常が流れていた。それが一瞬のうちに崩壊するなんて。あの時は微塵も思ってはいなかったのだ。
「下の息子だ。もうずいぶん前だがね」
聖装飾物とは古代に生きた装飾師たちが創造した芸術品だという認識がある一般的だ。
現代にも装飾師のように物に運を込める力を持つ人達はいる。
その事実を知っている人間もまた少ない。力を持つ本人ですら気づいていない。
「お上手ですね。お会いしたかったですわ。これほど見事な筆遣いをなされる方なら…」
「そうだろうね。生きていれば時代に名を残す画家になっていただろう」
優しく微笑むストーク氏に胸が苦しくなる。
けれど、それ以上の感想は見つからない。
「ではお預かりいたします。ストーク氏の大切な聖装飾物ですから」
「ありがとう。これでゆっくり眠れそうだ。私を気にせず他の聖装飾物も持ち出してくれ」
「分かりました」
「一ついいかね?」
「なんでしょう?」
「大切な人達に会う覚悟はないと言ったね」
「ええ~」
「その覚悟とは具体的には何を指すのかね」
シアは正直迷った。どう答えていいものか思案を巡らせる。
「悪かった。余計な事を聞いてしまったね」
ホッとした。
すでに時を終えようとしているストーク氏に話す内容ではない。
「おやすみなさい」
シアは小さく会釈して、彼の眠りを待ちつつ、仕事にとりかかろうとした。
その時、背中越しに風が通り抜けていく。
扉が開かれたと気づき、振り返ると不運鬼が飛び込んできた。
だが、その小さな体がシアの顔面を直撃する前に粉々に吹き飛ぶ。
すぐ後ろには赤い目を覗かせるヴァノンが立っていた。
「ちょっと、ストーク氏は眠られているのよ。静かに処理してよ」
「悪いな。すばしっこいから。何より俺の力はお前みたいに融通効かないんだよ」
「言い訳しないでよ。一応、私の師匠でしょう?弱気発言やめて」
「師匠だからって弟子よりなんでも優位だと思うな」
肩をすくめるヴァノンの瞳は再びいつものように細くなり、光が消える。
「倉庫のコレクションは大体、回収できた」
「この部屋の聖装飾物達も持って行って欲しいそうよ」
「じゃあ、手早く済ませよう」
「あっ!この絵画は私が個人的に預かるわ」
「ふ~ん」
「ストーク氏と話が弾んだのか?」
「どうかしらね。ただ家族の話をしただけよ」
シアは忍び足で部屋内を行きかう。
『エル!』
頭の中でかつての自分を呼ぶ大切な人達の声をかき消すように。
もう、会う事は叶わない私の家族。
覚悟というのは大げさね。この命は一度失われている。
それでも舞い戻ってきたのはすべてを奪い取った者へ復讐するため。
だから、名前も地位も何もかもを葬り去ったのだ。
運?
以前の私にはそんな物、不要でしかなかった。誰も私達を助けてはくれなかった。
だが、すべてを恨んだ末に調整師なんて言う真逆の肩書を手に入れるなんて…。
とんだ皮肉ね。
けれど、この力を手にしたから今ここにいる。
私は立っていられる。
『エル!』
再び呪いのように全身を駆け巡っていくその音に浸る。
この髪がまだ美しい金の輝きを放っていた頃。大きな屋敷の中で大好きだけれど、肉らたしくもあった歳の近い妹と幼さの残る弟。そして、歴史だけは長い家門存続という重圧のすべてを引き受けている父とそれを支える母。多少の問題はあったけれど、私の周りには穏やかな日常が流れていた。それが一瞬のうちに崩壊するなんて。あの時は微塵も思ってはいなかったのだ。
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