11 / 22
第一章 胎動
第十一話 決行(中)
しおりを挟む
寅次郎と重輔を乗せた小舟は、静かに、ミシシッピー号に向かって、進んでいく。重輔が漕ぐ櫓のきしむ音が、際立って、聞こえる。
「さて、と」
寅次郎は、振り向いた。
「重輔。そろそろ、代わりましょう」
重輔は、手を振った。
「そんな、滅相(めっそう)もない!先生に、櫓を漕がすなんて・・・怒られますよ」
寅次郎は、かまわず、舟の艫(とも)に、寄って来る。その顔には、微笑が、広がっている。
重輔は、ため息をついて、舟の前方に、移動した。
「先生は、舟を操ったことがあるんですか?」
「ないです」
重輔は、艫の方を向いて、座っている。
「変わる必要、ありました?」
「やってみたかったんです。では、行きましょう」
バキッ!!
重輔が、顔を、突き出した。
「なんです?今の音は」
寅次郎は、頭を、掻いた。
重輔が、舟の艫に、飛んで来た。
「あああ〰!櫓杭(ろぐい)が、壊れてるぅ〰!」
そそくさと、舟の前方に移動した、寅次郎に、重輔は、嚙みついた。
「どうするんですか!?櫓杭がなけりゃ、舟が漕げないですよ!」
寅次郎は、ミシシッピー号の方に、目をやった。
それから、立ち上がって、帯をほどき始めた。
重輔は、きょとんとした顔で、そんな寅次郎を、眺めている。
帯をほどき終わると、今度は、ふんどしも、ほどき始めた。
「先生っ?!」
動揺する重輔に向かって、寅次郎は、静かに言った。
「何をしているんです?重輔も、早く。
これで、櫓を固定しましょう」
重輔も、慌てて、帯とふんどしを、ほどき始めた。
「先生は、相変わらず、無茶苦茶ですね」
そう言いながら、重輔は、帯とふんどしで、櫓を船端に、くくりつけた。
「力がいりますけど、なんとか、いけます」
重輔が、悪戦苦闘しながら、何とか、ミシシッピー号の、そばに、たどり着いた時、すでに、ミシシッピー号の水兵たちは、寅次郎たちの舟を、発見していた。
甲板では、聞きなれない言葉が、飛び交っていたが、やがて、ランタンが、スルスルと、下ろされてきた。
寅次郎は、立ち上がり、大声で、叫んだ。
「私は、長州藩の、吉田寅次郎と言います!艦長に、お願いがあって参りました!どうか、お取次ぎください!」
甲板は、再び、騒がしくなった。しきりと、何かを、相談している様子だ。
しばらくすると、寅次郎の目の前にあった、ランタンが、引き上げられ始めた。
寅次郎と重輔が、甲板を見上げると、水兵たちが、そろって、ポーハタン号の方を、指さしている。
「どうやら、ポーハタン号に行けという事みたいですね」
そうつぶやくと、寅次郎は、深々とおじぎをして、舟に、腰を下ろした。
「さて、と」
寅次郎は、振り向いた。
「重輔。そろそろ、代わりましょう」
重輔は、手を振った。
「そんな、滅相(めっそう)もない!先生に、櫓を漕がすなんて・・・怒られますよ」
寅次郎は、かまわず、舟の艫(とも)に、寄って来る。その顔には、微笑が、広がっている。
重輔は、ため息をついて、舟の前方に、移動した。
「先生は、舟を操ったことがあるんですか?」
「ないです」
重輔は、艫の方を向いて、座っている。
「変わる必要、ありました?」
「やってみたかったんです。では、行きましょう」
バキッ!!
重輔が、顔を、突き出した。
「なんです?今の音は」
寅次郎は、頭を、掻いた。
重輔が、舟の艫に、飛んで来た。
「あああ〰!櫓杭(ろぐい)が、壊れてるぅ〰!」
そそくさと、舟の前方に移動した、寅次郎に、重輔は、嚙みついた。
「どうするんですか!?櫓杭がなけりゃ、舟が漕げないですよ!」
寅次郎は、ミシシッピー号の方に、目をやった。
それから、立ち上がって、帯をほどき始めた。
重輔は、きょとんとした顔で、そんな寅次郎を、眺めている。
帯をほどき終わると、今度は、ふんどしも、ほどき始めた。
「先生っ?!」
動揺する重輔に向かって、寅次郎は、静かに言った。
「何をしているんです?重輔も、早く。
これで、櫓を固定しましょう」
重輔も、慌てて、帯とふんどしを、ほどき始めた。
「先生は、相変わらず、無茶苦茶ですね」
そう言いながら、重輔は、帯とふんどしで、櫓を船端に、くくりつけた。
「力がいりますけど、なんとか、いけます」
重輔が、悪戦苦闘しながら、何とか、ミシシッピー号の、そばに、たどり着いた時、すでに、ミシシッピー号の水兵たちは、寅次郎たちの舟を、発見していた。
甲板では、聞きなれない言葉が、飛び交っていたが、やがて、ランタンが、スルスルと、下ろされてきた。
寅次郎は、立ち上がり、大声で、叫んだ。
「私は、長州藩の、吉田寅次郎と言います!艦長に、お願いがあって参りました!どうか、お取次ぎください!」
甲板は、再び、騒がしくなった。しきりと、何かを、相談している様子だ。
しばらくすると、寅次郎の目の前にあった、ランタンが、引き上げられ始めた。
寅次郎と重輔が、甲板を見上げると、水兵たちが、そろって、ポーハタン号の方を、指さしている。
「どうやら、ポーハタン号に行けという事みたいですね」
そうつぶやくと、寅次郎は、深々とおじぎをして、舟に、腰を下ろした。
1
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる