不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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第一章

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シャプナが自分のすみかに帰ったのはクガヤたちと別れてすぐだった。

山間部の廃屋をそのまますみかにしており、その中に倒れこむように入った。

シャプナはひどく疲れてしまっており、早く休みたかった。
今日はもう何もしたくなかった。

「お帰り、シャプナ」
「アーシイア!」シャプナはぱっと明るい顔になった。

来客は、クガヤとの会話に出てきた帝都で働いている姉だった。

アーシイアはシャプナと同じく、白黒メッシュの髪をしていたが、シャプナと違って腰のあたりまで長く伸ばしていた。

目の色はシャプナ同様、薄緑色で、鼻筋も通っている。顔立ちは整っており、こちらも相当な美形だった。

ただ顔はシャプナが可愛らしさとあだっぽさのミックスのような感じなのに対し、アーシイアの方は、細面な正統派美人だった。

細長い黒いズボンをはいており、肩の上から白いケープを流している。白黒の長髪がそのケープの上から流れるように腰あたりに落ちている。

普段は鼻メガネをかけているのだが、使わず額のあたりに押しやってその分前髪が膨らんでいた。

「シャプナ」アーシイアの表情は曇った。「久しぶりにどうしてるかと思って来てみたのよ。どうしたの?ひどく疲れた顔をして。」

アーシイアはそのままシャプナの顔をまじまじと見つめている。「あなた泣いてるの?ねえ、何があったの。」

シャプナはクガヤとのことを話した。アーシイアは次第に険しくなる顔でその話を聞いていた。

「それ、どのへんで会ってたの?」

シャプナは場所を説明したあと、不思議に思って聞いた。

「アーシイア?場所関係ある?」

「まあちょっとね。できたら一言言ってやろうかと思って」

「それダメ!これはクガヤとシャプナとのやりとりだから。」シャプナは急いで言った。

「アーシイア、まさか、クガヤに何かしようとしてないよね?」

「そもそも、女神様に見放された愚かな人間の分際で、

この私の妹に酷いこというなんて、腹の虫がおさまらない。」

「シャプナそれ望んでない」シャプナは必死に言った。

「クガヤ、シャプナのこと助けてくれた。アーシイアがクガヤに何かするのダメ!クガヤに何もしないって約束して!」

アーシイアは、別にクガヤに怪我させたりするつもりはないと話し、シャプナはホッとした顔になった。

その後、アーシイアが帝都から持ってきた土産物を食べて、シャプナはホッとしたのと疲れたのでテーブルで寝てしまい、アーシイアはベッドにシャプナを寝かせた。

「何もしないわ、それは確かね。」アーシイアはシャプナの頬の涙をぬぐいながらつぶやいた。
「でも、シャプナの心を傷つけた落とし前は、つけさせていただくわ」

サタヴァはクガヤとヤトルが寝入った後、広間から出て、夜もふける中、建物の外に出ていた。

サタヴァは二人より先に寝たように見せていたが、実際には寝ていなかったのだ。

獣とのやりとりや、クガヤとシャプナとのやりとりを目の当たりにしてからというもの、以前からのある悩みが表に出てきてしまい、

しかもそれが残り二人に話せない類の悩みだったため、眠れなくなっていたのだった。

夜の闇が濃く更けて来たのを感じたので、さすがに明日に差し支えるだろうと、サタヴァが広間に戻ろうとしたとき、

闇をぬって誰かがこちらへ歩を進めてきたのが見えた。

雲の合間から月の光がさしてきて、その人物を照らし始めた。

こちらに来るにしたがって、月光は次第に白と黒の長い髪、白いケープなどをあらわにした。

若い美しい女だった。月の光のせいで白々と全身が輝いて見えた。女は口を開いた。

「どうも、初めまして。私はアーシイアと申します。」

女は近づいてくる。

「帝都で聖女やってます。この度は」

女の目は釣り上がっており口元に牙が見えた。美しい顔が怒りを含んでいたため恐ろしげな様となっていた。

「妹が大変こちらで世話になったようで。」
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