不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

文字の大きさ
28 / 89
第一章

28

しおりを挟む
「友達だとか、ずっと一緒にいるのとか、無し?
クガヤ…なんで…」シャプナは薄緑の目を大きく見開いていた。

「さっき、ほんのさっきだよね?…ずっと一緒だって。

シャプナ、クガヤの幸せ願ったらクガヤ笑ってくれた。」

クガヤは、妖魔の近くにいるという恐ろしさで身震いしながらも、シャプナの話が耳に入り、その時のことを思い返した。

シャプナは話しながらもっと近くに来ようとしたが、クガヤが飛ぶように下がって距離をおいたので、ショックを受けたような顔をした。繊細な顔立ちが引き歪んでいた。

「二人で家族の話とか将来の夢の話した、たくさん楽しく笑った…

シャプナそれからクガヤの近くにいる毒ヘビ殺した。クガヤの命救った。」

シャプナは、クガヤに歩みよろうとしてはそれをやめるのを、繰り返していた。

まるで近づいてはっきり気持ちを確かめたくても、実は嫌われているとわかってしまうことが怖いとでもいうように。

「クガヤにきちんとお礼できた。シャプナ良かった思った。

でも気づいたらクガヤ、シャプナのこと好きじゃなくなってた。」
シャプナは胸がさかれるような声で叫んだ。「なんで!クガヤ!」

シャプナは綺麗な瞳から涙をポロポロこぼし始めた。「シャプナ何か悪いことしたの…?一体、何が悪かったの?
シャプナ、何が悪かったのか、わからないよう…」

「別に悪くないよ」

クガヤは恐怖でもう会話できないと思っていたが、それまでのシャプナと普通に話していた感じが蘇ったのか、するりと言葉が出てきた。

「俺、シャプナが妖魔だって気づいてなかったんだ。人間の女の子だと思ってたから。

妖魔だと怖いから友達とか一緒にいるとか考えられない。」

シャプナは黙って下を見た。少しして上を見上げてこう言った。
「あれはお礼じゃない。借りを返した。」

シャプナは視線を合わせずに向こうを向きながら言った。

「蛇殺したのお礼じゃない。

飢えた時に肉をもらった借りを返しただけ。

今、貸し借りなくなった。もう行く。さよなら。」

シャプナは走って去ってしまった。

クガヤはしばらくうなだれて立っていた。

ジャリ、という土を踏む音が背後から聞こえてきて振り返ると、ヤトルが気まずそうな顔で立っていた。

「あ、あれ、ヤトル…いつからそこに?」

横を見るとサタヴァも立っていたが、青ざめており表情は固く強張っていた。

ヤトルは言った。

「蛇を倒したあたりから。まだ少しここより遠くにいて、ここへ来ようとしてたけど、何があったかは見えてた。」

クガヤは裏口を探してたらさっきの娘を見つけ、肉をあげて会話した、妖魔だと判明して別れた、と話した。

これでサタヴァが気にしていた気配が近いものはすべていなくなったはずだ、今、ここで宿泊するのが一番安全のはずだということになり、すでに夕方近いため宿泊の準備を皆でした。

屋根や壁の崩れていないましな部屋が広間だったので、そこに三人集った。

簡単な食事を終えた後、サタヴァが珍しく背中を向けて無言で早々と休んでしまったので、クガヤはヤトルと話をした。

クガヤが建物が突然ボロになったと不思議がっていたので、ヤトルはクガヤと離れた後、

幻術を使う獣をサタヴァが倒したから術が破れて本来の光景が見えるようになったと話した。

「サタヴァさんが言うには、あまりボロだと人が寄ってこない、休める場所がほしいと思っていた人の念を拾って幻術をかけられたんだろうと。」

「サタヴァが倒してくれて良かったよ。それにしてもこいつは術にかからないんだな。

何があったか本人の口から説明聞きたかったんだけど、いきなり寝てるし」

クガヤは背中を向けてごろ寝しているサタヴァをさして言った。

ヤトルがサタヴァさんはこの手のことに慣れてるらしい、今日はきっと色々あって疲れて先に寝てしまったんだろうと話した。

その獣が術にかかった人を食べる予定だったとヤトルが話すと、クガヤは「やっぱり!怪しい術を使う連中は信用したらいけない!俺は正しかったんだ!そうだよな!」

と先程シャプナに冷たい言葉をあびせてしまった件について言い出した。

クガヤは自分の口から出てしまったきつい言葉は、仕方なかったんだとなぜかヤトル相手に必死にいい始めた。

「でも、先程の女の子は害意はないってサタヴァさん言ってましたよ、気配で害意がなかったって。

僕が見てても、そんな感じでしたもん。友達だって嬉しそうに言ってましたから。」

「相手は妖魔だよ?普通仲良くできないだろ!」

「でも話だと、途中まで仲良くしてましたよね」

ヤトルが指摘するとクガヤは考えこんだ。

「それはそうかもしれないけど、いずれにしろ先までずっと仲良くはできないだろ?

人間じゃないんだから。

今はっきり言って別れた方がいいじゃんか。
ぱっとけりがついて、向こうも引きずらないだろう。」

「だとしても、言い方がもっとあったのでは。

クガヤ、昔、付き合ってた女の子に別れを告げられたとき、面と向かってはっきり言われてて、結構傷ついてましたよね。

今回はそれを言う方の側になったんだと僕は思いますよ。

付け加えていうなら、その女の子にはっきり言われたせいで、
クガヤかなり引きずってますよね。
はっきりいうのがいいとか言ってますけど、どう考えても逆効果ですよね。」

「じゃ俺はどう言えば良かったんだろう。」

ヤトルは話が堂々巡りになりそうな気配を察してため息をついた。

「それ、もう終わった話になりそうですよね。どこに行けば会えるか知らないし。あの子ももうこちらに来ないだろうし。僕らも移動しますし。

あれは仕方なかったってクガヤが思うなら、もうこのままそう思っていくしかないですよ。

もしまた会うことがあれば、その時に謝る感じなんじゃないですかね。」望み薄ですけどね、とヤトルは付け加えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...