不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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第一章

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討伐隊本隊は、ダムス砦への補充の人員と物資が届いたため、ダムス砦をたち、行軍を再開していた。

現在はエスルデ砦に到着したところだった。

 エスルデ砦は、平地で行軍可能な場所はここで終わるとされる、

また、地図では、帝国領土内とされるギリギリ端に位置する場所だった。

本隊はここに来るまでの間にも、魔獣と思われるものを多数討伐して来た。

鳥魔物はあれ以来遭遇しておらず、討伐したのは四足の魔獣などが多かった。

それらは、鳥魔物と違い空から襲ってきたりはしないが、
魔獣は魔法を使う恐れがあるとされているため、

必ず遠距離攻撃が主体となっている。

結果、鳥魔物と戦い方が似てくることとなった。

ボウガンと網の組合せで敵の動きを封じる作戦でほぼ倒すことができた。

網で動きを封じることが可能であったため、倒す効率も、良くなっていた。

ただ網に関しては、魔物の方が網より遥かに数が多く出てきた場合を想定すると、

全ての魔物に対して使うことができない。

その場合、網で動きを封じることができるのは、一部だけになるだろうと予想される。

他の方法も考慮しておかないと消耗戦になりそうなのだが、

作戦を実行する場所で用意できるものを使うようにするなど、

実情に合わせたものでないと実際の利用が難しいため、そのあたりは保留になっていた。

その他、現在使用している作戦のうち、

特筆すべきと思われるひとつの特徴は、いずれかのタイミングで必ず火を使って仕留めるか、

又は、仕留めたあと清めと称して火を使うことであった。

これは水辺から魔物があらわれるという伝説から来ており、

火が水を打ち消すからということで、

魔物には火で対抗するという考えから来ている。

実際は、火は魔物に直接の効果があるというわけではなく、魔物は物理攻撃で倒されているため、

わざわざ火を使うのは迷信の類と言ってもいいのだが、

周辺の町村などの人々が、魔獣が出た後の土地でも火を使った後だと言うと忌避せず通れるからという理由だった。

兵士達の中にも、火で浄化されるため魔獣と遭遇した後でも、無事に行軍できると思っている者も多かった。

ともあれ、本隊が到着したエスルデ砦は、逗留予定地とされていた。

この砦の壁上から、目的地とされる周辺が見渡せる場所であるとされたためだ。

 砦の壁の向こう側は、土地の起伏が少ない土地がひろがっており

そこには沼地、湿地、草原、砂地、などが点在しているが、

この砦はその平野に対し長く高い壁を築いていた。

そのため、砦の壁の上からであれば、遠方まで見通せたのだ。

壁を長く高く築いたのは、
沼地や湿地の魔物を防ぐ目的、

あるいは相次いでおこる怪異を避けるためらしかった。

平野部に出るには、城壁の一部の開閉可能な門から行くことになる。

またその方面から攻撃があれば、門を閉鎖し守備しながら戦うことが可能である。

砦内部には生活用の井戸や、家畜などもいる。長期戦になってもある程度持ちこたえそうな構えである。

本隊はここを拠点とするつもりでいた。

ただ問題があった。

ここは、帝国がいわゆる自称領土とした場所であり、

実態は自治領のため、帝国側には非協力的な場所であったのだ。

にもかかわらず、今回、砦の責任者はすぐ内部へ入ることを許可した。

ギズモンド達は入るには一悶着あるかもしれないと思っていたため、妙なことだと思った。

しかも、今回は武装勢力を引き連れている。
普段より警戒してもおかしくなかった。

だが、内部へ入る許可がすぐ出たのは、逆にこちらが武装していたからではないか、という意見がでた。

先方から見ると、すでに帝国側はここを自国の領土としているので、
自国であるここを、あえて侵略する必要は無い。

事を荒立てなければ、何事も無くすむだろうとしてのことだろうという意見と、

魔物や魔王軍が出没して困っており帝国側に助けを求めているからだという意見も出た。

ともあれ、行軍で疲れた兵士が多いときに、入る許可が出たので、
本隊はようやく一息つこうと砦の内部へ入っていった。
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