孤独な私は転生して娘たちが出来たので、溺愛して絶対に守ります。

愛と知恵と勇気で! 愛娘たちを守ります!

詩人少女で歌い手少女

執務室のデスクにてセルフィーネが書類の山にサインしていると、バタバタと足音がしてノックもなしにドアが開けられた。部屋に入ってきたのは使用人の一人の女だった。
セルフィーネは言った。
「どうしたの?」
「外で『募兵反対·反戦デモ行進』が行われています!」
二人は屋敷の外へ出た。屋敷があるのは街の小高い丘。街中を見下ろすとそこには大勢の人の群れ。人々が大声で歌っている。
『たくさんの血が流れた。たくさんの人が死んだ。たくさんの戦争が起きた。たくさんの悲劇からなにを学んだのか。だから私たちがたくさんの声をあげる』


デモ隊の真ん中にいるのはふんわりとウェーブのかかった10代後半の少女──ミラン。彼女はハーモニカを吹きながらアコースティックギターをひいている。彼女が歌詞と曲を作って活動を始めた。
数日前。
とある飲食店。
薄暗い店内。奥にはカウンター。真ん中にはイスと天井から下がってるライト。
演奏を終えたミランはカウンターへ座る。
店主は微笑みながらコップを布でふく。
店主は言った。
「今日も演奏ありがとう」
ミランは「えへへ」と笑って続ける。「私、まだまだなんですよ。もっと色んなところを見て、色んな感情を色んな人を知りたい……だからたくさんのお店で演奏してるんです」
「で、なにを飲むんだ? いつものコーヒーか?」
「ミルクでお願いします。本を買うのにお金を使いすぎてしまって……。本を読むのが好きなので……あははは……」
彼女はここ数日、詩集と哲学書を大量に購入した。
店主は溜め息をつき、コップにミルクを注いで出した。
「金がないのに反戦活動を継続できるのか?」
「そのためのお金はもちろん別に用意してあります! ……私のお母さんは戦争で死んだんです。悲劇は繰り返してはいけません」