愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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アースライト・ホーリースライム編

スレイン月下聖光教会の闇

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「報告に聞いています…というか、イザベラに再会しました。あの奇跡は人類史上最高峰の奇跡と言えるでしょう…長年宗主教として女神スレインに祈り、その僅かな繋がりに縋り、己を律して戒律を重んじ、我が身の欲望を捨て去り、心身削って祈りこれまで生きて来ました…それでも尚且つあの域を生きてこの目で拝める光栄に拝するなど…」

 アラベル・サンクラウン…執務室に入った瞬間一気に語られて少々戸惑う…
 しかし、地方主教の歪んだ信仰心を見てしまった後だと、素直にその言葉を受け取る事は出来ない。
 このアラベルという宗主教は、スレイン月下聖光教会のトップではあるが、恐らくスレインとの邂逅は無い。

 懸命に起きた奇跡に関して語っているが…いまこうして、雫の前に立って初めて自分の信仰する『神』が目の前にいることにどう思っているのか…

 しかしまあ、派手でゴチャ付いたその外套はなんだろ…ロボットアニメの何とか形態みたいなゴツさがあって権威なんだろうけどギャグみたいに見えなくはない。

「お会いできて光栄です宗主教様…既に聞き及んでいるかもしれませんが、我々が扱う術は様々な要素が噛み合って構成されています…が、根本は貴方がたが掲げる教義の女神崇拝の始祖である、スレイン…月下の雫である彼女の本体こそがその根源なのです…がそれは理解いただいていますかね?」

「つまり、シェル様の隣りに立つ雫様こそが、女神そのものであるということです…か」
「そうだね…まあ、実態がある時点で女神という偶像的概念から外れているとは思うけど」
「私たちが信者たちに対して日頃から行う癒しの技術、治癒系の魔法技術は太古から受け継がれてきたものです。研究され精度を上げ、シスターが使えるようになるよう技術体系を整え継承してきました。始祖たる女神さまはこれまで我らの前に現れず、最初に授けられたその魔法だけが我らの唯一の依り代なのです…ですから、その長として、突然目の前に現れて…『はい、わかりました』という受け取りは確かに難しいでしょう…」

 ですが…と言いつつ外套を外すアラベル。というか外套の中から出てきたというべきか…なんか、外れてもその形を維持してるから最早ギャグにしか見えない…まあ、平安の十二単も一枚づつ脱がずに一気に型として外せたって言うからな…やっぱ権威を笠に着るって形骸化するとそうなるんだな…

「その軌跡を実際に示して新たな道を指し示されたとなれば、話は別です…」
 外套を脱いだ、つまりアラベルは一人の使途として話をするということか…そんなところまで形式的なのか…と呆れなくもないが、彼女にとっては大切なことなのだろう…

「シスターアンブレラ…下がりなさい」
 先ほどその名も知らずに暗殺者みたいな動きをしていたシスターはアンブレラという名前なのか…彼女はふらふらと立ち上がり、オレの顔を見る。そう、彼女は既に俺の支配下にある訳だが、頷いてやるとそのまま執務室から退場した。
「驚きました…アンブレラは私の直下の護衛暗殺者なのですが…既に支配下なのですね」
 とそんなに驚いて無さそうな顔でアラベルは語る。動揺を噛殺しているのか…関心がないのか…
「人払いをしましたので改めてお願い申し上げます」
 今度は雫に対して膝まづいて懇願する…「どうか私めにも…若返りの秘術を!」

 やっぱりそれになるのか…
 北西教主のセラフィナは、慈悲深い聖母としての献身の女性だったがテオドールの前で若返らせて抱いた。
 北東教主のイザベラは病魔に侵されていたのを治癒して若返らせて同じく抱いた。

 教会の様な市民を導き、救い拠り所にして支配するのはそれ相応のストレスがあるのだろう。
 最初は献身でも最後は欲望に支配されるというのは、どこにでもある話なのか…オレ自身は、座して滅びることを良しとしない考えでスタートさせたこの国の支配浸透だが、抱いた女たちを支配…しているのか…自分ではよく分かっていない。無自覚無責任という感じなのかもしれない。

 ただ、何でも言うことを聞かせることが支配ではないことだけは理解しているつもりだ。
 肉体的なつながりと精神的なつながり、能力の供給などメリットもあるが感情や記憶を背負うつもりはないので、個性を亡くして人形にもしていないしその必要も感じない。
 役割を捨てさせることも無いが、単純に裏切って欲しくないという所が落としどころと考える。

「汝が我の力を崇めてその力に縋るのであれば、シェルに仕えよ…我の意志はシェルと共にある」
 雫の容赦ない、オレに対する服従と肉体の支配を受け入れろという言葉はこれまでも何度も示された儀式だ。

「スレイン様の意志であるなら従います」
 ゆっくりとオレの方を見ると、スルリと軽装になった法衣を脱ぎ捨てる。自分が何を受け入れればいいのかを分かっている様だ。美しく均整の取れた肢体をオレの前に晒す。

「40代には見えないな…」「恐縮です」そういうアラベルの顔は若干の嫌悪を隠しきれていない。男に頭を下げることを良しとしない感情があるが、この際無視して両手で顔を押さえると、強引に唇を奪う。

 堕液を混ぜてオレのフェロモンを彼女の中に流し込む。舌で蹂躙し快楽の扉を開く。
 最早慣れてしまったこの行為であるが、この最初に浸透していくための儀式でオレなりに対象によってその受け取り方の傾向があることが何となくわかって来た。

 アラベルはこれまで男を必要として生きてきていない…先ほどのアンブレラというシスターは心身共にアラベルに奉仕するために仕えていることが判る。これまでも幾多の乙女を彼女の癒しの力を使いつつも歯牙にかけてきたのだろう…どうやら、アストリッドが憑りつかれていたネクロノミコンに近い儀式も行っていたことが判る。

 見た目が年齢以上に若く見えるのは多少なりともその辺りが影響している様だ。

 豊満な美しい形を保っている胸部にも触って分かる…コレは…
 口づけを放して聞く「おまえ…体を自分で弄っているな?」
「ほほほ…何のことでしょうか?」

 彼女の躰は、その多くを他人の組織で構成されていることが判る…他人のことを言えないが、この体は幾人もの別人の身体を繋いで治癒魔法で繋ぎとめているキメラであることが判る…余りの違和感、異物感にこれまでに感じたことが無い悪寒が走る…

 これが、権力にしがみ付く力を持ったものの末路なのだろうか…激しい吐き気に襲われる。
「雫…」
 横で控えていた雫が前に進み出る。オレが言葉にしなくとも彼女には真意が伝わっている。
「汝の願いを叶えよう…」

 アラベルは体を震わせて雫の女神の顔崇める様にして抱きつこうとするがそこから進めずに立ち止まる。
 雫の差し出した手が彼女の胸部の見た目美しくも中身の淀んだ脂肪の塊を貫通している。
「…は?」信じられないという顔でそれを見下ろすアラベル

 その誰かから奪い取った胸部の膨らみが溶けて彼女の躰から剥がれ落ちる。
 顔、身体から溶ける様に組織が剥がれ落ちる。悪臭が周囲に立ち込める。死者の身体を繋ぎとめてそれを彼女は身に付けつつ治癒魔法で蘇生し続けていたのだ…何という無茶苦茶なことを…
 改めてネクロノミコンで死者蘇生の再構成を行い、彼女の肉体の時間退行で対組織を作り上げる。
 他人の肉体をはぎ取られ己が若いころの組織を再構成する無茶な術式に恐らくは耐え難い激痛を伴うのだろう…のたうち回る彼女をオレが抑え込む。

 雫が手を放した時、オレが想定した時よりだいぶ若い肉体に再構成されているアラベルがオレの抱えた腕の中に失神して体を預けている。

 どうやら彼女はうら若き宗主教就任時時からの自信の体形に対するコンプレックスを抱き、日夜立場を利用しての肉体改造に勤しんで来ていた様だ…その体は、細身で女性としての肉体としてはややふくよかさが足りない体ではあるが…卑下するほどのモノでは無いとオレは思う…

「あ…が…あぁ…こ、コレは…わ、私の若い頃の…は、ははは…」
「気が付いたか?アラベル宗主教…お前の趣味の悪い改造肉体は改造前に戻ったということだ…いったい何人の他の女性を犠牲にしてつなぎ合わせてきたんだ…」
「う、うるさい…女神さまに近づき、理想の身体を手に入れたいと望む私の気持ちが分かるものか…」

「まあ、分からないけど…きれいな体になったんだ…改めてオレを受け入れてもらうよ…」
「ははは…若き肉体を手に入れたのだ!何で男の身体を受け入れなければならないのか?」
「ま、そう言うと思ったけど…」
 オレが指を鳴らすと、雫が時間を戻す。アラベルの身体はそのまま一気に現時点での経年劣化を受け入れた身体に戻る。もちろん肉体改造など施してないままの身体だ。
「ああああああああ…そ、そんな…私の躰がぁ!」

「お前は少し反省した方が良いな…」
 オレはエラリア女王が『奴らは手強いぞ…』と言っていたのをジワジワと思い出しながら彼女をどうするか考えていた。
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