愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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ジパング編

修羅の国の入り口

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「海賊だ!」
「迎撃!!」
 慌ただしく戦闘態勢に入るブリギッタの指示の元、船員たちが戦闘配備にはいる。

 海獣の後は海賊の襲撃である…いやまて、お前ら…確かに旗艦は味方じゃないけどよく見ろ…従えているのはジパングの船だぞ…正直、戦闘が起きることをここまでの頻度では想定していなかった。

「左舷!」
 旗艦のバラクーダ号はかなりの大きさがあり、帆船と蒸気機関の併用する木造と鋼鉄の混合設計で、さながら日本に開国を求めてきたペリーみたいなものかもしれない。
 その船の横壁にロープ付きの銛がドカドカ撃ち込まれている。

「おい、側面の大砲は使えないのか?」
「敵が小型で的が絞り切れないし、クラーケンとかいう海獣にかなりの弾薬を消費している!」ブリギッタが指示を飛ばしながらも無理言うなという顔をする。

 良く見れば小舟の様な小さな船から打ち込んだ銛のロープを伝ってこちらに向かってきているではないか…
「まずい!白兵戦になるぞ!甲板に兵士は集結!」

 次々と乗り込んで来る武者崩れの無法者が粗末な装備で刀一本で飛び込んで来る。

 ラカスタメイドの三人衆は大活躍!
 ……とは行かず、揺れる足場に慣れない狭い場所で大苦戦する。

 それでも、元々の戦闘力の高さで圧倒的とは言わずとも善戦している。

 そこにひと際目立つふんどしにサラシを胸に巻いた派手な着流しを羽織った女海賊が登場する。
 日に焼けた肌肉感的に鍛え上げられた体。サラシを巻いても隠しきれないボリュームの巨峰。ブリギッタが西洋の戦乙女バルキリーなら、彼女は東洋の女仁王という似た様な風格がある。
 黒髪を後ろにポニーにまとめ、精悍な眉メイクなどしなくても濃いまつげ。厚手の唇。
 背中には長大な大太刀を背負っている。
 海の女…という感じが目立つオーラを持った女性…

「おうらぁ~この海を他所モンが通行量も払わずに通ろうなんざいい度胸じゃねぇか…この村上水軍のお銀の目の黒い内はぁ~好き勝手はさせねぇぞ?」

「村上…水軍?ジパングの海軍か?お銀さん、オレはシェル・ヴォス。オレ達はエルダリア王国の者だ…通行料のことなんか知らないが、どうしたら通してくれるんだ?すでに犠牲者も出てるんだけど…」

「犠牲者ぁ? 笑わせるねぇ、ここは戦場だぜ! 運が悪けりゃ死ぬ、力がなけりゃ奪われる……至極真っ当な理屈じゃねぇか。通して欲しけりゃ、言葉じゃなく『誠意』を見せな。金目のもんを全部差し出すか、アタイの刀をへし折ってみせるか……好きな方を選びな!」

「生憎金はない。積荷は全て君の国人間だ。誠意はオレが相手をするから、ソレで勘弁してくれるかな?」
「シェル様、か様な蛮族など私が…」
 ブリギッタが前に出ようとするが、オレは咄嗟に止める。

「まぁ、どの道帰りも通らなければならない道だ、になって貰わないと」
「成る程…」ブリギッタは合点が行ったのか一歩下がる。

「ほう…優男やさおとこがアタイと、やり合うってか?」
其方そちらが勝ったら好きにすればいい…オレが勝ったら『お前の身体を貰う』」
 お銀は少し驚いた顔をしてからニヤリと笑う。
「お前は跪つかせて飼育してやるヨ」

「その言葉そのまま返すよ」
 オレは水晶鉄の双剣を抜く。
 マナを通して構える。刃筋がそれに応えて薄く光る。

「面妖な剣を使うな」
 お銀は背負っていた大太刀を抜く。
 刃渡だけでオレの身長くらい有りそうで、どうやってこんな長さを振り回すのか?という驚異がある。
 フンドシ姿の褐色の下半身隠さない健康美が目の保養…みしりとその下半身を支える筋肉が収縮する。

 ドン!……という衝撃音と共に一気に遠間からその長大な刃筋のリーチを生かして切りかかってくる。
 海の上の子船の中で鍛えられた下半身が生み出す驚異の脚力、思いっきりの良い唐突のトップスピードとその斬撃は考える間もなく相手を斬り伏せる必殺の太刀なのだろう。

 武技の極み…オレはアルヴァの太刀を見た。受けた。あの域の太刀筋を経験している身としては、それに劣る剣に後れを取るわけにはいかない。

 踏み込みに対して引いてはならない。
 オレは飛んでくる長大な白刃に一歩踏み込み、左手に持ったショートソードをその軌道を受け逸らす。
 まともに受け止めたら船外に飛ばされるので、刃筋斜めにして受けた衝撃が上に逃げるようにしてその軌道の内側に滑り込む。

 長刀弱点は懐に入ってしまうのがその利点を殺す最大の防御策だからだ。
 ショートでいなし、ミドルソードで彼女の小手を斬りつけようとする。

 この「殺さない判断」手加減が失敗した。

「うごぉえ!!」お銀の膝蹴りがオレの腹にめり込む。
 心臓が止まる。呼吸が止まる。意識が飛びそうになる。

 船の甲板の反対側まで飛ばされる。手すりにあたって止まる。

「ふははは…ハラワタが悲鳴を上げちゃるじゃろう…アタイのことを見誤ったか?」
 うずくまって動けないオレに向かって余裕をかますお銀。
 勿論油断はしていない。

「……がはぁ」何かをしゃべろうとして口を開けると逆流してきた胃液が出てきた。血も混じっている…
 クソ…一回くらいアルヴァの太刀を受けたからなんだ…二の手三の手が続くことに対する読みが甘すぎる…
 マナを活性化させて腹の中の傷を修復する。

「まだまだ…」双剣を着いて何とか立ち上がる。
 フェロモンをばらまいても洋上でこんな広い空間で効き目など期待できない。いやぁ…まいったね。

「はぁ……っ」
 足元に風魔法、そこに爆炎魔法重ね掛け…顔面の皮膚が剥がれそうな勢いで一気に加速その速度は音速を越えて後ろで爆発音が鳴った時にはお銀の後ろにまわり、ショートソードを彼女の首元に突き付けていた。

「んな?!」
「その首いつでも落とせるぞ…ぐふぐほ…」脅しているのに治しきれていない口元に血が逆流してくる。
 加速はよかった別に。ただ、止まる方法が思いつかずに躊躇してしまった…結局ショートソードを咥えて、ミドルソードを加速後、床に突き刺しブレーキかけて止まることにしたのだ。県がその衝撃に耐えて折れずに済んだので、おれは急加速急停止で何とかお銀の背後を取れた。だが、内臓が治りきってない中よじれてえらいことになっとる。

「オレの勝ちを認めるか?」首元のショートソードをさらに寄せると「分かった、アタイの負けだ…好きにしな」とオレの勝利で終わった…全く大変だ…

「先ずは、物騒に殺気立っている君の部下たちを下がらせてくれないかな?」
「ちっ…おい、三郎丸!お前たちは港に戻りな!!アタイは後から行く」

「え?…お頭…それで大丈夫なんですかい?」三郎太と呼ばれたここまで乗り込んで来ていた海賊は、そもそも自分の歌詞らが負けたことが理解しかねる顔をしていた。
「うるさい、アタイにこれ以上恥をかかせるな」
「へ、へい…頭…次郎丸、太郎丸にも伝えておきやす」というと、ひらりと船外に跳ぶと、直ぐに小舟に乗り移り海賊たちは強襲してきたときと同じように素晴らしい速度で撤退していった。

「さて、約束は覚えているな?」
「え?は?…おい、まさかこの衆人環視の中始めないよな…?」
「何言ってんの…そこ容赦するわけないだろ…」我ながら鬼畜発言している自覚はあるが…この女は堕としておいた方が良いと改めて思った。
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